ep.3
目を開けるとそこは
「……草原」
だだっ広い草原のど真ん中にポツリと1人で立っていた。
多分この先に最初の街があるんだろうけど、辺りを見渡しても誰もいない。
とりあえず歩くか。
歩いてもモンスターはいないし、これがチュートリアルなのだとしたら、とんでもないゲームだと思う。
けど、これはVSWで自分だけのメインストーリーを組み立てるゲーム。
既にストーリーは始まっている……のか?
ウィンドウを出して確認をする。
ヘッドギアが届くまでに調べたところ、VSWでウィンドウを出す時は空中で横に線を1本引くだけでいい。
すると、その線を境にして上下にウィンドウが展開される。
「ほー、ここらは向こうと変わらないんだな」
ウィンドウのソレはいつも見ているものと変わりなく、違うのは
【リベット】 【ジョブ:】
【武器:なし】
【持ち物一覧】
【パートナー:なし】
【所持金:500セーリ】
【システム】
という表記になっているということ。
ジョブは確か始まりの街を出た時に決まるんだったか?
武器は様々な種類があるらしくて、この世界、フリヘイトにおける金銭の単位がセーリになっている。
アイツからあとで送られてきた初心者向けガイドページを読んでいてよかったな……
1年とはいえ先達からの情報に助かった。
「おや、この先になにかようかな? 異界のヒトよ」
ウィンドウを眺めてぼっ立ちしている俺に話しかけてきたのは
「異界の人……俺か?」
「そうだとも。お前さん以外に誰がおる? ワシとお前さん以外に誰かおるとしたらそりゃゴーストの類だろうて」
小さな女の子だった。
黒いローブを着て頭にはとんがりハット、想像する魔女の格好をした小さな女の子、なのにしゃべり方は随分と年寄りっぽい。
「すまんな、ここに来たのはついさっきでな」
「それはそれは。こんな僻地に異界のヒトがくるのはさほど珍しくはないが……迷い込んできたのはお前さんが初めてじゃな」
異界の人、がくるということは、恐らくここにはプレイヤーが訪れる何かがあるのだろう。
クエストか、素材か。
「どうじゃ? 村に寄っては行かんか? と言ってももうとうの昔に寂れて今はワシと仲間達しかおらんがな」
「仲間?」
「そうじゃ。ワシ達は昔旅をした仲でな。脳筋バカとシスターと本の虫と可愛くて勇気のあるワシの愛おしいヒトで随分と長い旅をしたものじゃ」
「ほー……随分と濃いメンバーだな?」
「ホッホッホッ、元の始まりを辿ればワシとシスターとバカは後から参加したんじゃがな。まぁ、その話はさておき、もうすぐ見えるぞ」
遂にただのバカになったな?
とか思っているとたしかに村が見えてきた。
木造の一戸建て住宅? って言うんだっけか。
それがあちらこちらにポツンポツンと建ってはいるが……
「随分と……ボロボロだな?」
「……かつて悲惨な出来事があったそうじゃ。伝え聞いただけじゃから当時のことは何も分からなんだがな」
「そう、なのか……」
家の近くを通ると今にも崩れ落ちそうな感じがしてそれがどことなくリアリティに溢れているような感じがして
「着いたぞ。ここにワシの仲間がおる」
ふと見上げるとそこには他の家より少しだけ大きな家が建っていた。
村ということは村長とかの家だったのかもしれない。
今回もお読み頂きましてありがとうございます。
長編物は初めてなので、切るタイミングが難しいっすね……




