ep.11
そのあと夜通しでパーティをすることになったが……まぁ色々あった……
初日にしては随分と濃すぎたが、俺は一旦ログアウトすることに。
最初にVSWの話を聞いた時は、たかがゲームだろうと高を括っていた。
だけど、どこまでもリアルで、それでいてNPC……あっちの住民にもそれぞれ過去があって、みんな前を向いている。
空を自由に泳ぐ鳥に昔は憧れていた。
憧れは夢になり、いつからか、自由に旅をすることを夢に見ていた。
大人になってから自由がなくなって、結果として潰れたが。
「……まっ、言ってても仕方ねぇか」
1つ伸びをすると、軽く身の回りを整えてから、再びフリヘイトの世界へ飛び込んだ。
『おかえり、リベット。異界人は意識が無くなるように眠るって本当なんだね』
「ただいま、ミウロゥ。そう、らしいな。俺も他の異界人と会ったことがないからわからねぇけど」
「待っていたぞ。森を抜けた先にリニダーという街がある。そこならお前と同じヒト族が多く集まっているし、少しは情報も集めやすいだろう。森を抜けるまでは俺たちがお前を守るから安心しろ」
「助かるよ、セトル」
家の外にでると、他の3人が準備を終え待っていた。
「あそこに森が見えるでしょ? あの森が今では迷いの森って言われてるんだ」
「俺とチミっ子がいりゃ、モンスターは問題ない。道もセトルがいるから迷うことは無い。つまり、安心してリニダーの街に行けるって訳だ!」
確かに村の外には木々が生い茂っている森が見える。
というかチュートリアルでこんな所に迷い込むってどうなってるんだ?
「時々あなたみたいに初めてここに来られる方もいらっしゃいますよ? と言っても両手で数える程度でしかありませんが……」
「ん? ヘクサは俺みたいなのは初めてって」
「それはそうですよ。何しろ彼女がいない時に来るのですから。ですので、私が丁重に街まで送り届けていましたよ」
知らなかった、みたいな顔をしてるチミっ子はまぁさておき。
「で、あの迷いの森の奥に異界人が入り込むのか」
「あの森の奥には何も無かったと思うんだがなぁ……まぁ機会がありゃ行くこともあるだろうよ」
ポリポリと頭を掻きながらミルリが呟く。
面白そうであればそのうち行ってみるか?
「それじゃ行くか」
セトルを先頭に森へ入っていく。
迷いの森とは言ったものの、特に薄暗い訳でも無く、霧がたちこめている訳でもない。
陽が木々の間から射し込んでいて、むしろ森林浴として最適なのでは?
「この森は認めた者以外を迷わせる性質がある。俺とミウロゥはこの森に認められているから決して迷うことは無いし、他の3人も認められるまではいかないが、俺たちの仲間ということで特別にお目こぼしをもらっているんだ」
「……まるで森が生きているみたいだな……」
「……まぁ、ちょっとした秘密があるんだ。もしも奥に興味があるならいつかミウロゥと共に行ってみるといい。あそこは中々いいぞ」
『まぁあるのって花畑くらいなんだけどね』
花畑か。
いつか強くなったら行ってみるのもいいかもしれないな。
「もうすぐ出口だ。別に迷わされなければ一本道だし、モンスターも早々でることはない。たまには出るかもしれないが、その程度だ」
「ようはピクニック感覚で行けるって訳だ! まぁ普通にチミっ子の魔法で跳んだ方が速いんだがな」
「歩くのって面倒だからねぇ。その点、私に感謝しなさいよね」
「へーへー」
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
実は片手で数える程度にはいきなりここに飛ばされてるとかなんとか。
迷いの森もそのうち……そのうち、ね……




