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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

震える神

作者: 深見胡堂

**前書き**


箱神様――それは、誰もが口にすることを恐れる、家系に伝わる禁忌の存在。その箱に触れることなく一生を終えることができれば幸運だと、私の祖母も常々言っていた。しかし、幼い私はその不気味な箱に引かれ、好奇心に負けてしまった。


「ふるふるとただふるふると震えるものあり」。それは一族の暗い歴史の象徴であり、誰もが触れてはならぬものとされていた。箱は、常に何かを待っているかのように揺れ、何かを訴えているかのように音を立てる。それでも、それが何であるのか、なぜそんなに震えるのか、誰も語らなかったし、知りたいとも思わなかった。少なくとも、私は箱を開けるその瞬間までは。


幼い私が箱を開けたことで、私の人生は一変した。箱から現れたのは、形容しがたい何かだった。そして、その瞬間から私の身体は、何か見えない力に取り込まれた。お腹が膨らみ、震えだした。まるで箱そのものが私の中に入ったかのように。


今、あの時の記憶が私を襲い、そして未来へと引きずっていく。私は、逃れられない宿命を背負った者として、箱神様に向き合わなければならない。この物語は、私と箱神様との戦いであり、箱に閉じ込められた運命に抗うための記録である。


この物語が、いつか同じ宿命を背負った者への警告となることを祈りつつ。

第1章


ふるふるとただふるふると

悲しくて、寂しくて

ふるふると震えるものあり。

暗闇を嫌がり。

一目に付くところへ置いて欲しい。

その代わり、願いを一つ叶えよう

その箱は、いつもカサカサ音がする。

ふるへふるふるとふるへ

そう呼び掛けると

箱の中から、カラカラと嬉しそうに音がなる。


祖母が見ていないときに

その震える箱の中身を

何が、何でも見たいと思っていたいた私は

とっさに、震える箱を手に取り

結ばれていた、赤い紐をほどき

蓋を開けた。

「ぎゃぁぁぁ」と箱が叫び

私は、気を失ってしまった。


私は、病院で目覚めたが

すぐに、異変に気付いたのだ

お腹が、まるで妊娠したみたいに

大玉のスイカが入っているかのように

パンパンに膨らんでいる。


違和感は、他にもあった。

あの箱のように、膨らんだおなかが

震えているのだ。


何故か、私は理解した

あの、箱の中身が私の中に入ったのだ。


そして、私は強い思いに駆られた

見たい、中身が見たい

そう思うやいなや

服をまくり上げ

いざ、爪を立てようとしたとき、

お中には、赤い色で何やら

書いてある、まるでお札のようだ。

それを、見たとたん、

あの強く見たいと思う気持ちがぴたりと止まった。


私は、どうしてしまったのか。

そして、私が目が覚めたのがわかったのか

同じ病室の椅子で寝ていた、

母と祖母が起き、家に帰る準備を始めた。

祖母は、「仕方がない、箱神様に魅入られてしまったからには

この子を箱収めするしかないだろう。」

「いつか、誰かが成ることはわかっていたれど、七海、

あんたは、大丈夫だからね、ともかく家に帰ろうね。」

祖母は、そう言って私の帰り支度をはじめた。


家に戻ったのは、すでに深夜12時を周っていた。

私は、歩くのも無理で、車で迎えに来ていた父に抱かれて戻り

すぐさま、箱が祀ってあった、祭壇のある部屋の真ん中に寝かされた。


そして、気になって祭壇を見ると

見慣れた、あの白い、縦、横10㎝の四角い箱の姿はなく、

代わりに30㎝ぐらいのの黒い箱が置いてあった。


その前には、何やら大きな札と、白木の供物台の上には

豪華な飾りのついた鞘に納められた短刀が置いてあったが

当時の私には、わからなかったが、

今思えばあの短刀で何をしたのか、怖くて創造もしたくない。


仰向けで、寝ている私に、祖母が行った。


箱神様は、普段のお供えに満足できなくなったとき

箱から出ようとする、そのとき、この家の者を

操り、箱を開けさせる。

必ず女性が選ばれる。


もし、この家の女性が、箱神様に魅入られてしまったときは

新しいよりも大きな箱と、大好物の柘榴をたんまりと用意して

それと引き換えに、新しい次の箱に引っ越ししてもらう、

その引っ越しの準備を今からするから、七海は寝てしまい。

ばぁちゃんがうまい事して、おなかを引っ込めてあげるから。」


祖母は、わたしの、頭を撫でながら、優しい口調で語り、うんうんとうなずいた。

いつもの、祖母に安心した、私は、ちらりと母を見た。

母は、いつもの母ではなかった、まるで汚いものを見るような目で遠巻きに私を見ていた。

それに、気づいた祖母が、「和美さん、あんたは、供えものの準備しておいで、

さぁ、おやすみ七海。」

私は、油汗をかいていて、本当は目を開けるのも辛かったため、このあとすぐに眠りに落ちた。


目が覚めた私は、音に驚いて、

「ひぃぃぃっ」と我ながら奇妙な声をあげた。

すべての照明を消して寝る習慣があるので

祭壇の蝋燭の明かりが照らされて

ここにいるよと、伝えるように

真っ黒で赤い紐に縛られた、あの箱が

カタカタ、震えている。

いつもの光景、私の血筋だけが見ることができる

箱神様の生きてる証。


箱を開ける前には、感じなかった

居も言われぬ、怖いという感情が

私を包み、ただ箱を睨み続けていた。


何分、何秒、何時間そのままでいたのだろう

いつまにか、夜が明け、鳥の鳴き声とともに

朝日の光が、障子越しに入り始めたころ。


足音が聞こえて我に返った。

そのとき、箱から声がした。


「いいもの、貰った、ありがとう」

私は、上半身だけを起こして

寝間着を捲り、お腹を見た。

お腹は見事に、引っ込んでいた。

けど、私のお腹には、胸の下から

まっすぐ縦に、傷跡があった

どこまで続くのか気になり

下着も降ろして、確かめた

自分から、見えるところまで

その傷跡があったのを確認して

私は、色んな感情が湧きあがり

泣いていた。


障子が開いて、祖母が入ってきた。

「おはよう、七海、無事でよかったよ」

そういって、私を抱きしめ。


「大丈夫、もう、大丈夫、うまく箱神様は、引っ越ししたから

何にも、心配いらんよ、七海。」

そう言って、私が泣き止むまで、背中をさすり

声を掛けてくれた。


落ち着いた私は、「まず、この傷は、何。」と聞いた。

「おお、すまないねぇ、箱神様を取り出すために

箱収めをする儀式をした、その時についてしまった。

この家に、箱収めを経験したものがおらんかったから

まさか、こんな傷が残るとは、誰も知らんかったから。」

「悪かったねぇ、傷は残るかもしれんが、命あってのものだがら

赦してねぇ。」

祖母は、泣いて顔を皺だらけにしていた。


また障子が開いて、母が入ってきた。

「あんたが、大変悪い事して、命がある代わりに

罰として、その傷は仕方がないの、

七海が、言いつけを守らないからこうなったのよ。」


母は、このあともこうも続けた。

「悪いけど、あんたをこの家に置いてはいけない決まりに

なってるから、覚悟しなさい。」

母は、なぜか終始怒っていた。


祖母は、「悪かったねぇ、ごめんねぇ、私がしっかり七海を見てたら

良かったのに、けど、この家に住めなくなっただけだから、離れても家族だから。」


その時の私は、普段の母ではないぐらい態度が変わったことが

気に入らなかったことと、

ともかく、悪いことをしたことが

気になって、家に住めなくなったことは

あまり、気にしていなかった。


その次の日、隣の県の、鳥取の親戚の家に預けられたが

毎週の日曜日、祖母と、父と母が会いに来てくれて

電話も自由にかけられる事もあり

次第に慣れていった。


どうして、それを受け入れることができたのか

当時、9歳だった私が、家族と一緒に居られない

普通は、嫌がるはずなに、寂しいはずであるにのもかかわらず

騒ぐことも、泣くこともなく、受け入れ家を出た本当の理由。


怖かったのだ、ただ、怖かった

あの、黒い箱が、あの家が、大好きだった箱は

もう、いない、あるのは何かを欲しがる怪物に感じて

あの家から、出て行くと解ったとき

私は、助かったと思えたから。


私は、家から、いいえ、箱から離れたことに安心し

実は、あの家の者が、一般の家族とは違うことを

痛感したのだった。


そして、私が、二十歳の誕生日を迎える年に

何故か、実家に戻るよう、手紙が来た。

それは、亡くなった祖母、父、母

私の知ってる家族の字ではなかった、

差出先の住所も、名前もなかった

誕生日7月7日の月初めには帰って来るようにと

あったが、気味悪さを感じ

電話も、ぎりぎりまで掛けなかったが

ついに我慢が出来なくなり、7月に入ってから

実家に、電話を掛けた、

「父は、入院している、早く帰っておいでと。」

母はか細い声で言った。

私は、もしかして、父が今年の初めから体調を崩していて

呼ばれたのではないかと、もう一つのことを

考えないようにして、実家に戻ることになる。


これが、私の本当の姿を知る事になり

そして、箱神様に、呪われた血筋の運命を果たすことになる。


ふるふるとふるえるものあり、その箱は今でも

山陰の山奥で、寂しいからとふるえるものあり。


終章


実家に、戻ると

確かに、古い家もう古民家と呼ばれても

おかしくない。

それにしても、庭は荒れ果て

雑草は、延び放題で、つたは屋根まで延びて

お化け屋敷のようだ。

もう日が傾いて、夕闇にたたずむ姿が

本当に、これが私の家なのかと思わせる。


十数年振りに、横開きの玄関の戸を開けようとしたが

迷わす、先に、呼び鈴を鳴らした。

帰ってくるよう言われたが、

私は、罪を犯して一度、家を出された身だ。

何もなかったように帰るわけにはいかない。

「お母さん、帰ったよ。」

声をかけるが、何かおかしい。

周りは、薄暗いのに、明かりはなく

何一つ、物音がない。


出かけているのだろうか。

「良く帰ってきたね、嬉しいよ、」

「さぁ、お入り。」

裏手の鶏小屋から戻ってきたのが

嫌でも、解った。

頭の無い、鶏の足を鷲掴みにして

その首からまだ、血が滴り落ちていた。

「取り合えず、話があるから

箱神様の所で待ってておくれと。」と言って

母は、自分の部屋に戻って行った。


私があの部屋に入ると

すでに蝋燭に明かりがついていて

箱神様には、黒い布が被せてあった。


あの時の事を

思い出すかと思っていたが

あまり、覚えていなかった。

10分か、15分かした頃

後ろから、声がした

いつ、入って来ていたのか

喪服に着替えた母が立っていて。

「この家の、本当の話をしましょう

まず、あの箱神様は守り神で無い

そのことを、あのババァは隠しつづけていやがった!」

急に母は怒りの形相で語りはじめた。


「あの箱は、キモイこの家系を呪うもので

その呪いから、逃れるために

崇め奉り、毎日のように肉の供物が必要だったのさ。」


「この箱守は、あんたで終わりするからと言われていたけと、

あのババァ、私には一切箱には

関わらせなかった。」

「関わると良く無いから、任せておけと。」


「そして、あんだが生まれてからさ

ババァとあの人(父)の様子が変わった。」

「だから、二人で夜中にこそこそ話し合いしているのを、こっそり聞いた時は、驚いたけど、まだ実感がなかった。」


「その話の内容が

まったく赤の他人の嫁いで来た、私より

あんたの方が、可愛かったみたいで

あのババァは、私で、終わりするって言いやがった。」


「本当に、恐ろしいのは、あのババァだった。」

「私を、箱収めの儀式で使うつもりだったのよ

あの人も、私を裏切って、

私を、犠牲にして終わらせようと

二人で企んでいたのさ。」


「でも、あんだが、あの箱を開けたとき、こんな説明を受けた。」

「あんたの箱納めの儀式で、命を奪われるのは、

あんたの、生まれてきていない赤子を奪う、妊娠していない場合は、子宮を奪って、納めあんたは無事だった。」

「あんたは助かったけど、あんな気味の悪いことが行われて

私は、あの話は本当で、次は、殺されるのは私だと確信した後

私はこの家に嫌気が差し、ある計画を実行した。」


「今年のはじめに、私は、箱の紐を解いてから

大きめのガラスの花瓶で頭を後ろから殴り

気を失ったババァを、箱の隣に寝かせたのさ。」


「すると、箱の蓋が勝手に横にずれ

黒い煙のようなものが出て

天井でUの字をかいて

ババァの上に覆いかぶさると

どんっ!!と大きく家が揺れ

ババァの体の厚みが

ぺったんこになり、

目、鼻、口、耳から盛大に血を吹いて

息絶えた。」

「けど、やっぱり素人の考えでは上手くいかなった

このとき、あの人(父)も血を吹いて会社で倒れたけど

一命をとりとめて、入院した。


「私は、ババァの遺体を裏山に捨て

その日の夜から、箱の声がするんだよ。」


「喰いたい、もっと欲しい

明日も、用意しなけれ

近いものからもらい受ける。」

「こういって毎日、夢に出る。」

「さぁ、困ったねぇ

そこであんたに手紙を送ったんだよ。」


「来なければ、どうしようか迷ったけど

幸い、昔から

供物の生贄用の鶏はたくさんいるから待てばいい。」


「ババァを殺してから

どうすれば良いのか考えた結果。」


「ババァとあの人の話の内容は

この呪いは、本家と分家に掛かっていて

管理とお供えの問題で

分家のこの家に当番が来て預かることになったが

しかし、いつまでも管理できないと

ある条件で、本家に返しても良いと連絡があった。」

「人一人生贄することでしばらく封じることができる。

その後なら、返すことができると。」

「それを聞いたあのババァが、私に目を付けたけど

残念でした。」


「みんな殺して、本家に戻せばいい

そこで、私は本家に電話して

やり方を聞いたのさ

どうして、失敗したのか?」


「笑える話だったよ、

妊娠中か、子供を産む前でしか効果がないそうだよ。」

「干からびたババァでは、最初からだめだった。」

「使えないよ、でもお前だったら

大丈夫、きもい血を引き継いで

更には、子供を産む前だから、今度は失敗しない。」

「まさか、嫌がったりしないよね。」


どす黒い顔、ギラギラした瞳、そしておぞましい笑顔で言った。

「お母さんを、助けるために死んどくれ。

私の、可愛いななみん。」


私、泣きながら、頭の中は考えていた。

祖母を殺さなければ、母が死んで

母が死ななければ、私が死ぬ

つまり、このままでは終わらないし

終わらせることができるのは、私だけ、だったら


「解りました、私は母さんの事嫌いじゃないから

大好きだから、私が、箱神様の生贄になればいいのね。」


「おぉ、良い子だねぇ、ななみんは、だったらいい子いい子してあげるよ。」

母は私に、近づくと抱きしめて頭を撫でたが

私は、母から出る、強烈な匂いにむせ込んだ。

魚が腐ったような匂い。

「せっかく、最後だと思って優しくすれば、お前もやっぱり

この家の人間だなぁ、これで終わりだぁ!!!」

むせ込んだだけなのに、母は隠し持っていた金槌で

私の頭を殴った。

一瞬ぐらりときて、生暖かいものが顔を覆う感覚と

視界が徐々に暗くなるなかで、母の声が聞こえたように思えた。


「おっと、つい加減を忘れて、殴ってしまった、でも大丈夫

そのために、小さめにしたからね。」


私は、鳥取の親戚の家に

預けられて、しばらくして

そこの曾ばあさんに、呼ばれた

「あんたは、なんでこんなもんに縁があるのか

でも、安心してええんよ

うちの守り神さまは、あんたも迎えてくれる

優しい神さんよ。」

そういわれて奥の座敷に連れていかれて

大きな祭壇に

大きな鏡餅の向こうに瓶が置いてあって

そこで、私は、ある儀式をして、それからと言うところで


私は、頭の痛みで目がさめて、周りを確認すると

暗闇の部屋で、祭壇の蝋燭の明かりが見える。

まるで、あの時と同じ光景だと思って

箱を見る、箱は変形して、何やら分からないものに見えたが

あの時見た、黒い箱だと感じる。


あの時と違うのは、

私の周り、箱の周りも合わせて一周するように縄が囲み

御幣が所々に見えた。


母は、箱の横に立ち、

「この喪服はあんたを死に哀悼を捧げるため

きもくても、一応我が子だからねって思うかよ、綺麗さっぱりしたい

私の気分で着ただけさ。」


「望みの餌の時間だよ、さっさと喰らいな。」

箱を、私の方に向けようとした時。


黒い煙みたいなものが、箱から吹き出て

天井でUターンしようとしたとき


私は、絶対に大丈夫、近くに感じると思った時。


天井のすぐ下あたりから

大量のひるが箱をめがけて落ちてきた

ぼた、ぼた、ドバァー、見ている間中降り注いでいる

しかし、その全てが箱に入っていく

そして、「ぐちゃぐちゃ、ごくごくっと」

箱から、蛭を食べ、飲み干す音がする。

「ひぃい、何だいこれは、何が起きてるんだいっ。」

母は、後ずさりをはじめ、障子に手を掛けようとしたき

「人の肉、肉肉肉肉をよこせー!!」

箱から、黒い煙が、噴き出して

母を覆ったとき、地震が如く、部屋が大きく揺れ

大きく「バチン!!」と弾ける音がして

母は、縦に縮んで肉塊になり果てた。

すぐさま、箱の方を見たが

そこには、ぐしゃぐしゃの箱があっただけで

あの大量の蛭の姿はなかった。


恐る恐る、箱の中を覗くと

一瞬、蛭に見え、

更に顔を近づけると

そこには、干からびた、人間の指が数本転がっていた。

私が、見ている間に、その指が黒くなり

崩れて粉々になった。


私は、これで終わったと立ち尽くしていたとき

電話が鳴り、私は、本家からだと勝手に思って

すぐさま、家を出た。

ここには、居られない。


鳥取の親戚と言っても

育ての親である、もう一つの憑き物筋の家に私は帰るつもりだった。


そこの家にも、守り神がいて

それは、蛭の姿をしていて

祀りあげることで、その家に福をもたらすと言われていて

大事にされている。

曾ばあさまが話してくれた。

「いいかな、七海、良くお聞き

蛭神様のご利益は相当なもんさ、けどね

蛭神様は、おとなしく、静かでただ近くに感じるだけ

他の、神や憑き物ののように、怪しいお供えなんて必要ない

お餅を供えるだけ、お告げや、お叱りもしない

一つだけ、約束があるよ、絶対に蛭持ちとばれたら終わりだからね。」

「あんたの、おばあさんは、なんとなく気づいていたけど

何かは、教えていない、けど逆に

向こうからは、何が祀ってあるか、聞いてしまったよ。」

「そう、コトリバコとか言っていたよ、あんたも狙われてるって

だけどね、安心しなさい、蛭神様はあんたも受け入れてくれるから。」


そういって、祭壇の奥の大きめの祠みたいな扉を開けて

カビ臭い塊から、一つまみ取り出した、

「これは、蛭神様に備えた餅だよ、これを食べなさい」


よく見ると、青黒く、恐らくカビの塊のように見える

全部じゃなくていいからね、ほんの少し

と言って、一つまみを私の口に入れてきた。

「50年ほど前のものだから、蛭神さまが宿ってる。」

「うう、苦いよ、うえぇ」

絶対、吐いたらダメ、吐いても飲み込みなさい。

それから、私が吐きそうになると

全力で口を押えられ、三日三晩下痢に苦しんだ。


「よく耐えたね、これで家族だよ、」

「これも言っておくよ

ご利益を望めば、必ず叶う

でもこの家は、山奥で普通の暮らしをしている。」

「それはね、人間の方が欲に飲まれて

どんどん欲しがるのさ、すると何故か

周りにばれるのさ、するとバチなんか当たらないよ

蛭神様は、静かに消えてしまうのさ。」

「何軒もそれで、失敗しているのを見て

この家は、家族をいかなる災難から守ってもらえるよう

に願いを一つだけに決めた、おかげで、何があってもご加護がある。」

「だからね、七海この家で、暮らすには決まりを絶対に破ることは

ないよう胆に銘じておきなさい。」


私は、もう震える箱と別れたけど

静かな蛭神様と暮らしている。


何故だが、私は憑き物とは

離れられない気がする。


ふるふるとふるえるものあり

寂しいと、ひもじいと

呪い果たすために

震えている。


コトリバコをネットで検索すると

全然、違う気がするけど。

他にも、似たようなものがあるって書いてあったから

私は、それを探すようになった。


なぜなら、生きている箱の中身をどうしても見たい思いが止まなかったから。


私には、まだあの家の血が残っていて

まだ、魅入られている。


でも、大丈夫私には、強力な守り神がいるのだから。


あの日、父もすでに死んでいた事を後から知って

一人の生き残った私は特別だと思うようになり。

我を忘れて、呪いを探すために旅立った。


この物語を執筆するにあたり、家族という絆の恐ろしさを改めて感じさせられました。「家」という場所は、本来安心と愛情に満ちたもののはずですが、それが時に異形の存在や呪いを抱え込んでしまうことで、逆に恐怖の象徴となってしまうことがあります。主人公の七海は、幼い頃からその「家」に囚われ、逃れることができない運命を背負っています。それは彼女自身の血であり、家族の歴史、そして呪われた箱神様の存在です。


七海が辿る運命は、母や祖母、そして父といった家族との関係を通じて形作られました。家族が自らを守るために犠牲を強いることで、七海は自分の存在意義や運命に悩み、そして最終的にその運命を受け入れていく。その過程で、彼女が抱える内なる葛藤や恐怖は、私自身も執筆中に強く共感した部分です。


この作品を書いているうちに、私はしばしば「私たちは何から逃れられないのか?」と自問することがありました。人は家族から受け継ぐものを避けることはできないのでしょうか。血の繋がり、家系の運命、そして隠された歴史。それらが絡み合い、時には人を狂わせ、時には人を救います。七海の物語は、そんな人間の根底にある「運命」を象徴しているのかもしれません。


また、本作に登場する「箱神様」や「蛭神様」といった存在も、ただのホラーの怪物として描いたわけではありません。彼らは古い日本の民間信仰や伝承に根ざした、複雑で神秘的な存在です。彼らは恐ろしい存在でありながらも、何かしらの「約束」によって人間との関係を保っている。そこには人と異界の存在との微妙なバランスが存在しており、そのバランスが崩れるとき、恐怖が現れるのです。


この作品を通して、皆さんに「家族」や「伝承」が抱える恐ろしさと、それが生み出す人間の深い心理を感じ取っていただけたら幸いです。


最後に、この物語を通じて「呪い」や「恐怖」というテーマに触れることで、読者の皆様が日常生活の中で見逃しがちな不思議なもの、もしかしたら見えない何かに気づく瞬間があればと願っています。


ありがとうございました。


深見 胡堂


この作品は、notoに投稿した作品を前半、後半に分かれていたものを一つにして掲載しています。

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