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ただ愛してるだけ  作者: レオナル℃
7/8

第七回「決心」

あの日以来、さゆりは岩井と逢瀬を重ねるようになった。そして、スーパーのバイトでは姫宮が全く来なくなり、そのままフェードアウトする形でシフトから消えた。そのことをさゆりと岩井の間で話すことはなかったし、さゆりもおそらく岩井が言って、姫宮さんが怒ってやめていったのだろうとなんとなく察しがついていた。ただ1つ気がかりな点があった。それは姫宮さんを通して同級生の娘のひかるに私たち二人のことが伝わるのではないかということ。しかし、ひかるは家にいるときは何一つ変わったところはなく、私にも普通に接していた。

さゆりは岩井との関係は、はじめはあの日だけのことだと思っていたし、あの後、家に帰ってからもそうけじめをつけていたが、岩井の強引な誘いについ身をゆだねていってしまい、そんな中で家庭を振り返ると夫との関係はなく、家に帰っても二言三言話すぐらいだし、娘のひかるは姉の佳織のところに入りみだり、佳織に鍛えられているのか精神的にも大人になってきているように見えたが、それは只単に子供が背伸びをしたがっているだけなのかも知れないが、私の元で変わっていくのではなく佳織の影響を受けて成長していくひかるを見るとなんだかもう私の役目はこの家庭では終わったのかも知れないと思えてならなかった。いや、そう思いたかったのかも知れない。そう思うことで岩井との関係を正当化し継続していこうと思っていたのかも知れない。しかし、いつまでも夫や娘に隠し通せるわけはないことも分かっていた。必ずばれると。でも、その方がいいのかも知れないとさえ思っていた。さゆりの中でさゆりは確実に昔の世間体や体面を気にするさゆりではなくなっていた。今は岩井と合っていることに至福の喜びを感じ、出来ることなら岩井とどこか遠くへ、人目を忍ぶことなく堂々と二人で歩むことが出来る場所へ行きたかった。


そんなある日、さゆりは制服姿の姫宮に「おばさん」と声をかけられた。姫宮はスカートを極限までミニにして、胸のリボンをゆるく結び、一見だらしなく見えるも可愛くも見えた。女子高生だから当たり前だが初々しかった。

「どう、彼とは良い調子なの」

さゆりは、なんと答えて良いの即答出来ず沈黙した。

姫宮はさゆりを上から下へと眺めて「全く、どうしてこんなおばさんがいいんだろう」とつぶやき、「ほんとに岩井さんは本気なのかな?おばさんは本気なの?」

さゆりは黙っていた。

姫宮はさゆりを冷ややかな目で見ながら

「もしかしたら、私と岩井さんと二人でおばさんのことをからかっているだけ。とか思ったりしないの」

さゆりはただ黙っている。

「黙り決め込むんだ。それって、自信?」

「・・・」

「でも凄いよね、岩井さんも。夫や娘がいる人とつきあえるなんて。普通、不倫っていったら妻子ある男性に若い女性がつきあうものかとばっかり思っていたわ。まぁ、がんばってね」

そういって、姫宮はさゆりの肩を軽く叩いて行く。


そして、さゆりは岩井に電話をかけた。それは、はじめてさゆりの方から岩井にかけた電話だった。そして、二人は落ち合い、ラブホで愛し合ってから、さゆりはそれとなく姫宮にあったことを話した。そして、さゆりはさりげなく岩井に「二人でこの町を出ない。私、あなたとなら何処へでも行くわ」

そして、さゆりは岩井の目を見て、「あなたとならどこまでも行ける。ねぇ、どこか遠くへ行きましょ。人目を気にして出会うのなんてイヤだわ。もう人目を気にせず、自由にあなたといたい。だから」

さゆりの眼差しがいつになく真剣だった。目を逸らすことなくまっすぐに、まるで岩井を射抜くかのように岩井を見ていた。

岩井はたばこを一服しながら、目を逸らして「うん」と軽く相づちを打って、たばこの火を灰皿で揉み消した。

「いつか、ばれてしまうんだったら、その前に二人でどこか違う場所へ行きましょ。私、その決心は出来てるの。家庭での私の役目は終わったし、それにどんなことになっても耐えられるし大丈夫だから。だから二人で、ね」

さゆりの岩井を見る眼差しは熱かった。岩井もそれは感じていた。岩井は微笑みながら

「そうだね。俺もそう思ってたんだ。このままじゃ、どの道いけないし、さゆりからそういってくれるのを待っていたのかな」

さゆりは岩井の言葉に嬉しくなって岩井の胸に顔を沈める。



      

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