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ただ愛してるだけ  作者: レオナル℃
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第二回「招かねざる女」

さゆりが助っ人としてはじめて遅番に入ったとき、正直面食らった。

田島さんから私のことを快く思っていない子がいると聞いていたので、あまり目立つようなことはせず、言われたことをしっかりこなしていけばいいと思っていた。

遅番には早番にも入っている人もいて、何人かは知っていたが、半分以上、特に学生はシフトチェンジの際に挨拶を交わす程度の面識しかなく、ほとんど知らないといっても過言ではなかった。しかし、さゆりと挨拶程度の面識しかない人も皆、普通に「澤田さん」呼んでくれて安心したが、一人だけ「おばさん」と呼ぶ女子高生がいた。

その女子高生は姫宮裕美という名前で、同性のさゆりから見てもハッとするほど可愛い娘だった。姫宮さんはその外見も含めてみんなから「姫」と呼ばれていた。

そんな姫とはじめて合ったとき、姫の方からさゆりに話しかけてきた。

「澤田さん、ひかるのお母さんなんでしょ」

「え!?」←この「え」が素人作家だな

「私、ひかると同級生なんだ。だから、澤田さんのこと、おばさんって呼んでいいよね」

「ええ、かまわないわ。でも、驚いたわ。ひかるの同級生がここでバイトしているなんて」

「狭い町だもん。そりゃ、バイトするところなんて限られるわ」

「それもそうね」

それから、姫はさゆりに要があるときは「おばさん」と呼んだが、さゆりは姫が私のことを「おばさん」と呼ぶアクセントの中に鬱陶しさや敵意がこもっていることを感じていた。

それでも、さゆりは意に介せず、さりげなく姫の敵意を相手にせず、やり過ごすつもりだったが、さゆりが姫に野菜コーナーの補充を頼まれ、減っているキュウリなどを補充し、次の仕事にかかろうとすると、姫が「おばさん!」とさゆりを呼びつけ、折れたキュウリをさゆりの目の前に突き付けて、「こんなの並べないでよ!何考えてるの!」と露骨にみんなに聞こえるように怒鳴ってきた。さゆりは折れたキュウリを並べてはいないのだが、その場をおさめるつもりで「ごめんなさい」と謝るもそれだけでは治まらず、今度はさゆりがお菓子コーナーでお菓子の整理をすると、決まってその後に姫が踏みつぶされたお菓子袋を持って「詰め込みすぎるから落ちて、踏まれるのよ」と露骨に注意してくる。さゆりはこれは明らかに私へのいやがらせだわと思うもその場は姫や店長にあやまり、なんとかはじめての遅番をやり通した。

帰るときに田島さんが、「どうだった?」と聞いてきたので「なんか、少し疲れたわ。手に負えない娘が一人出来たみたいで」といって二人は笑った。

「でも、びっくりしたわ。あんな可愛い子なのに、外見に似合わず、気が強いって言うか?なんか末恐ろしいわ。初対面なのにどうしてこんなに嫌われてるのかしら」

「それは時機わかるわ」

「田島さんは知ってるの?」

「まぁ、噂だけどね」

「なにその噂?教えてよ?」

「澤田さん直々に、時機にわかるわ」

「なにそれ、おばさんジョーク」

二人は笑った。

この田島さんという人は年齢はさゆりより上だが、離婚して実家で両親と暮らしているらしい。このスーパーでは早番も遅番もこなしてくれる店長にとっては重要な戦力の一人である。

そして、それから数日が経ち、高校生が中間テストに入る頃、助っ人としてさゆりが遅番に入った。

姫も中間テストで遅番にはいなかったので、気が楽だった。

その日は何事もなく、時間の進むのも早く感じ、そろそろ閉店の準備にかかろうとしていたころ、今夜、はじめて合ったバイトの青年がさゆりに声をかけて来た。その青年の名は岩井安史、二十二才の大学三年生。童顔で背が高く、半袖から出ている腕は筋肉質で体も引き締まって見える。

岩井は、さゆりに「澤田さん、姫からいやがらせ受けたでしょ」

「ええ、まぁ、いやがらせというか、あの子、私のことが嫌いなのかな」

さゆりは微笑んで見せる。

「すいません。あれ、全部、俺が悪いんです」

「別にあなたがあやまらなくても」

岩井は周りに人がいないのを確認してから「この後、バイト終わったら近所の公園で、少し話しませんか?その方が色々事の成り行きがわかります」

さゆりは岩井を見上げる。


            


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