攻略対象その二を懐柔
「魔女の万能薬が欲しいわ」
「…急にどうしました?お嬢様」
「欲しくなったの。お小遣いから買って良い?」
「良いとは思いますが…」
「じゃあ商人に持ってくるよう伝えてちょうだい」
オードリックと仲良くなって、婚約は辞退したが友人という枠に収まった。
オードリックの問題…呪いも解除してあるし、出だしは好調。
今度は攻略対象その二の問題解決だ。
と言っても、魔女の万能薬を手に入れてカジミールに差し出すだけだが。
「お待たせしました、お嬢様」
「例の品は?」
「こちらに」
商人が魔女の万能薬を持ってきてくれた。
「では、お代はこちらですわ」
「ありがとうございます。…はい、たしかにいただきました」
「こちらこそありがとう」
これで準備は整った。
「お母様、私王立騎士団の騎士団長様の息子さんに会ってみたいんですの」
「あら、急にどうしたの?」
「きっととても面白いお話を聞けそうなんですもの」
「うーん、そうね…じゃあ、会わせてもらえるか聞いてみるわ」
「ありがとう、お母様!」
エリアーヌが元々わがままな子だからか、怒られることもなくアポイントメントを取ってくれる母。ありがたや。
そして今日、カジミールがうちに来てくれる。カジミールは私との対面を快く受け入れてくれたらしい。
「馬車、まだかしら」
「あ、お嬢様。馬車が見えましたよ」
「よかった!来てくれたのね!」
カジミールを乗せた馬車が到着した。カジミールが降りてくる。
「お初にお目にかかります。カジミール・ブノワ・バスチアンと申します」
「お初にお目にかかります。エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌですわ」
バッチリ挨拶をして、その後屋敷の中庭に案内する。お茶とお茶菓子を用意させ、カジミールをもてなす。
「この紅茶は、うちの領地でとれる茶葉ですの。よろしければ」
「これはご丁寧に…さて、面白い話を聞きたいとのことですが…何からお話しましょうか」
「その前に、こちらを受け取ってくださいませんか?」
「これは?」
「魔女の万能薬ですわ」
それを聞いた瞬間、カジミールが目を見張る。
「なっ…!?」
「カジミール様が、魔物に襲われたお友達を守るため果敢に魔物に立ち向かい結果顔に傷を負ったと聞きましたの。そんな勇敢なカジミール様に、何か出来ることはないかと考えて…私からのささやかな気持ちですわ。どうかしら?」
私がそう言えば、カジミールは泣いた。
「え、え、どうしたんですの!?」
「顔に傷を負ってから、両親以外からは避けられることが多くて…勇敢、だなんて過分なお言葉までいただいて、感動してしまって…」
私はカジミールに魔女の万能薬と、涙を拭くためハンカチを渡す。
カジミールは私のハンカチで涙を拭ったあと、魔女の万能薬を飲んだ。
「…どうでしょうか?」
「あ、すごい」
「え?」
徐々に顔の傷が癒されていく。語彙力が足りないが、なんかすごい。逆に怖い。
「…あ、治りましたわ。手鏡をどうぞ」
「あ、ありがとう…本当に治ってる!?」
治る過程がちょっと逆にグロかったけど、完璧に顔の傷が治った。
「ほ、本当にありがとうございます、エリアーヌ嬢!なんとお礼を言っていいか…」
「そんな、お礼なんて。でも、喜んでいただけて嬉しいですわ」
「本当にありがとうございます!僕に何か出来ることがあるでしょうか…」
「では、なにか面白いお話を聞かせてくださる?」
「ああ、そうでしたね!では、父から聞いた話なのですが…」
その後はカジミールの話を聞いて和気藹々と楽しく過ごした。カジミールは本当に良い男だと思う。