攻略対象その一の婚約
日々を勉強やアナトールとの時間を大切にして過ごしていて、ふと気がついた。
最近、みんなと会っていない。
まあ、元々毎日会っていたわけではないからそんなもんかなとも思うが…。
「そういえば、ちゃんと婚約の報告もしてなかったや」
我ながら薄情なものだ。アナトールに夢中になってすっかりと忘れてしまっていた。
「むーん」
まあ、お互いの親を通して結局知ってはいるとは思うが。
「手紙を出すべきか、直接会って教えておくべきか」
これからも彼らと仲良くしたいなら、アナトールのことも紹介しておきたいところだ。
「…会って伝えるべきかな」
そう思っていたところに、ちょうどお母様が来た。
「エリアーヌ、今いいかしら」
「はい、お母様」
「第一王子殿下が、エリアーヌに会って伝えたいことがあるそうよ」
「え?なんでしょうか」
首を傾げる。
「急だけど、明日いらっしゃるそうだから。大丈夫かしら?」
「あ、はい。大丈夫です」
なんだろう、伝えたいことって。気になる…。とりあえず、アナトールにも伝えておかないと。
「アナトール、ちょっといいかしら」
「なに?エリアーヌ」
「明日私のお友達の、第一王子殿下がいらっしゃるんですの。私の婚約者として、ご挨拶できまして?」
私がそう聞けば、アナトールは頷いた。
「もちろんだ。挨拶の仕方は、ラファエル先生に習ったから大丈夫…だと思う」
「ふふ。緊張しなくても、私のお友達ですから大丈夫ですわ」
私がそう言えば、アナトールは少し考えて口を開いた。
「そう…だな。王子様が相手だとどうしても緊張するが、エリアーヌの友達だということは忘れないようにする」
そっか。私は感覚が麻痺してるけど、普通王子様相手なら緊張するよね。
「私も付いていますわ!心配要りませんわ!」
私がそう励ませば、アナトールはやっと笑った。
「お久しぶりです、オードリック様」
「久しぶり、エリアーヌ」
オードリックは、初めて会った時からは考えられないほど元気な様子。
「そうだ。聞いたぞ、運命の番を見つけて婚約したんだってな。よかったじゃないか」
「ありがとうございます、オードリック様」
やっぱり人伝に聞いていたらしい。
「君がエリアーヌの運命の番か?」
オードリックに話しかけられて、アナトールは挨拶をする。
「お初にお目にかかります。アナトールと申します」
うん、挨拶はとっても上手!さすがラファエル先生、教え上手だわ。
「これは丁寧にありがとう。エリアーヌの友達の、オードリック・バジル・アルヴィアだ。この国の第一王子でもある。…運命の番と出会えたこと、おめでとう。エリアーヌと末永くお幸せにな」
オードリックの言葉に、アナトールは頭を下げた。
「ありがとうございます」
「はは、そう畏まらなくていい。…二人とも、本当におめでとう」
「ありがとうございます、オードリック様」
私も頭を下げた。お友達に祝福されるのは、やはり嬉しい。
「そうだ、俺からも伝えたいことがあるんだが」
「はい、なんでしょう?」
「婚約者が決まった」
「まあ!おめでとうございます、オードリック様!」
「おめでとうございます」
どうやらこちらも、婚約者が決まったらしい。
「ありがとう。本当は今日会わせたかったんだが、都合が合わなかった。今度連れてくるから、仲良くしてくれたら嬉しい」
その後は三人でお茶会にした。アナトールはオードリックに失礼のないよう振舞っていたが、そんなアナトールをオードリックはどこか微笑ましそうに見ていた。
一気に距離が詰まることはなかったが、仲良くなれそうな雰囲気にほっと胸を撫で下ろした。




