ご褒美としてなでなでしてもらえる
今日も勉強をよく頑張った。ラファエル先生の授業は変わらず丁寧で、読み書きが出来るようになったら今度は算数を教えてくれた。足し算や引き算は、なんとなくは理解した。それでもあんまり暗算とやらは得意ではなく、しかしそんな僕にラファエル先生は根気強く教えてくれている。
「ふむ。これだけの短期間で良くここまで出来るようになった。まずは褒めてやろう」
「ありがとうございます!」
「しかし、この足し算や引き算。実はまだ序の口だ。本番は掛け算や割り算。頭がこんがらがること間違いない」
「が、頑張ります!」
「まあだが、そもそも。算数の本番に入る前に、ある程度読み書き計算が出来るようになったら礼儀作法、マナー、その他諸々覚えることが山のようにあるからな。貴族の家紋とか目が回るぞ」
先生の脅し文句にはやくも目が回る。
「わあ…」
しかしここで諦めるわけにいかない。エリアーヌのために、成長するって決めたんだ。絶対、どんな苦労にだって食らいついてやる。俺は、自分に負けない。
「…頑張ります!そのためにもさっさと暗算を身につけます!」
「よし、その意気だ。さあ頑張れ」
先生に付きっ切りで教えてもらって、足し算と引き算を覚える。大丈夫。俺なら覚えられる。暗算だって、きっと出来る。全てはエリアーヌのために。
エリアーヌの顔を思い浮かべたら、それこそ本当になんでも出来る気がして勉強にさらに力が入った。
「…計算のスピードが上がってきたな。良い傾向だ。今日はここまでにしておいてやる。エリアーヌ様のところへ行ってやれ」
「はい、ありがとうございました!」
今日もラファエル先生のおかげで、とても楽しく頑張れた。エリアーヌのところへ行けば、エリアーヌが笑顔で迎えてくれる。
「アナトール、お疲れ様ですわ」
「うん、ありがとう。お疲れ様、エリアーヌ」
「ええ、ありがとう。今日はどうでしたの?」
エリアーヌに、暗算のスピードが速くなったらしいと告げればすごく喜ばれる。
「さすがはアナトールですわ!すごいですわ!」
そんなエリアーヌに、少しくすぐったい気持ちになった。これが幸せ、ということなんだろうか?
「そうそう。アナトールにご褒美があるんですのよ」
「え?ご褒美?」
「そう。頭を触っても良いですの?」
頷けば、頭を撫でられた。
「よしよし。よく頑張りました」
そのエリアーヌからのご褒美に、胸が温かくなる。
「エリアーヌ…ありがとう、最高のご褒美だ」
俺がそう言えば、エリアーヌは満面の笑みを返してくれる。
「ふふ、実はね、私もこれをしていると嬉しくなってしまいますの!一石二鳥ですわね!」
そんなエリアーヌに、笑い返す。なんでもないこの日常が、俺にとってはとても大切な時間になった。




