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転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?  作者: 下菊みこと


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たった一日で変わる人生

そこに院長が来た。


「この騒ぎは一体、なんでしょうか?貴方方はどなたです?」


「院長!この方はアルヴィア王国筆頭公爵家の、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌお嬢様です!」


「エミリーさん、何故そのような方が孤児院に?何故彼はそのお嬢様に抱きついているのです?」


「えっと、それにはまずウチで起きた事件を話さないといけなくて…」


エミリーとやらが院長に説明する。


「私の家に強盗が来て、気まぐれ日帰り旅行に来ていてたまたま通りかかったエリアーヌ様が助けてくれて!」


「すごい偶然ですね」


そんなことがあったのか。


「私が観光案内をしていたら甘い匂いをエリアーヌ様が嗅ぎ取って」


「え?」


「彼がエリアーヌ様の運命の番だと判明しました!」


院長はそれで全てを理解したらしい。


「ああ、それでこんなことになっているのですね」


「院長様」


「はい、お嬢様」


「彼は孤児ですのよね?」


「ええ」


エリアーヌは院長を真っ直ぐに見つめてお願いする。


「私、彼と結婚しますわ。引き取らせてくださいまし」


「…人一人の人生が掛かっています。そう簡単には決められません」


「院長」


俺はまだ止まらない涙を溢れさせながら、院長を見つめた。


「俺、この人を信じたい。この人についていく」


「…はぁ。本人の意思を尊重しないわけにいきませんね」


院長は、言った。


「必ず彼を幸せにしてください」


「もちろんですわ」


「院長、俺の名前はアナトール」


「…良い名前を貰いましたね。幸せにおなりなさい」


「はい」


こうして俺は、デルフィーヌ公爵家に引き取られた。


そしてエリアーヌの両親と初対面。エリアーヌの両親は侍女から話を聞いて、まずエリアーヌに説教を始めた。危ないことをしたなら、怒られるのも仕方がないな。俺もエリアーヌに危ないことはして欲しくないし。


そして、その話が終わると俺の話になった。


「まさか、エリアーヌに運命の番が見つかるとは。めでたいことだ」


「ふふ、今夜は家族でお祝いをしなければね」


「お父様、お母様…!」


まさかここまですんなりと認めてもらえるとは思わなかった。


「エリアーヌ。運命の番とはなかなか出会えないものだ。この出会いは大切にしなさい」


「はい、お父様!」


「婚約を後日正式に、教会に申し入れるわ。とはいえ、平民と公爵家の娘の婚約なんてなかなか無いわ。もちろん運命の番ですもの。尊重はされるけれども、いつかやっかみを買うこともあるでしょう。彼をちゃんと守るのよ」


「はい、お母様!」


俺は、さすがに自分から挨拶すべきだと前に出る。


「あ、あの…俺、アナトールと言います!エリアーヌから名前を貰って…えっと、それで、エリアーヌとのことを認めてもらえて嬉しいです。あの…これからよろしくお願いします!」


「アナトールか。良い名前だね。こちらこそ娘をよろしく頼むよ」


「娘はちょっとわがままな子だけれど、私達の宝なの。どうか、側で支えてあげてちょうだいね」


「はい!」


こうして俺は、エリアーヌの両親に認められた。


その後エリアーヌは急に変なことを言い出した。


「ということで、私が責任を持ってアナトールをプロデュースしますわ!」


「なにがということ、なのでしょうかお嬢様…」


「さあ、エミールの両親を呼んできてくださいまし!部屋の家具の候補となるもの、新しい衣服、その辺りを持ってくるようお願いしてくださいな!」


「まずは衣食住からの確保優先ですからね」


「ええ、ええ!私の趣味をごり押しさせていただきますわ!絶対絶対、アナトールはすごく素敵になりますわ!」


プロデュースって結局なんなんだろう。そう思っていたらエリアーヌがこちらを伺ってきた。


「あの、アナトール。今更ですが、私勝手に決めてしまいましたけれど大丈夫ですの?他の商人がいいとかありまして?」


「いや、俺はエリアーヌの好きなようにして欲しい。それが一番良いと思う」


「まあ!とっても嬉しいですわ。けれどね、アナトール」


エリアーヌは俺を見つめる。


「もし、私の決めたことでも嫌なことがあったらその場で言ってくれなくては嫌ですわよ?私、貴方を世界一幸せにしたいんですの。それが私の幸せですわ」


「…エリアーヌ」


「私は心から、アナトールを愛していますの。わかってくださるでしょう?」


エリアーヌがそう言うなら、そうなんだろう。


「うん。エリアーヌがそう言うなら、嫌な時はその場でちゃんと言う。…でも、エリアーヌが決めることで俺が嫌なことなんてそうそう無いと思うけど」


何故か抱きしめられた。


「アナトール、大好きですわ!」


「俺もエリアーヌが好き」


エリアーヌは、俺を選んでくれたから。


その後、エリアーヌの部屋の隣に部屋を貰った。そして、エリアーヌが呼んだ商人が持ってきた家具の中で好きなものをエリアーヌが選んでくれた。


部屋は、エリアーヌの好みになった。俺も、この部屋はちょっと可愛すぎるけど色味は落ち着くし好きになった。


そして、エリアーヌが呼んだ商人が持ってきた服やら靴やらの中で好きなものをエリアーヌが選んでくれた。


服もエリアーヌの好みになった。俺はエリアーヌの好みに染まった。それが嬉しい。


「あ、そうだ。アナトール、髪を切ることに抵抗とかあるかしら?」


「いや、ない。なんで?」


「髪が伸ばしっぱなしだから、さくっと切っちゃいましょう」


「うん、わかった」


「希望の髪型は?」


希望と言われても。


「ない」


「じゃあ、髪も傷んでるみたいだしすっきり短髪にしてみましょう?後でまた綺麗にお手入れして、綺麗に伸びてきたら色々な髪を試すのもいいですわよね」


「それでいい。エリアーヌの理想になりたい」


「…もう!可愛い!」


可愛いのが好きなエリアーヌだから、これは褒め言葉だろう。嬉しい。


そしてエリアーヌは美容師を呼んだ。美容師は俺を自慢するエリアーヌに合わせて俺を褒める。いわゆるお世辞だ。


そしてカットが始まる。俺は、自分の髪型が変わるのを無表情で見つめていた。そして頭に浮かんだ疑問を、聞こうかどうしようか迷ったけど聞くことにした。


「…髪って、染められるの?」


「ええ、染料を使えば」


「…赤に茶髪って、似合う?他の色に変えた方が隣に立って不自然じゃない?」


色の組み合わせとか、俺はよくわからないからプロに聞いた方が早い。


「そうでしょうか?茶色には赤が良く合いますよ。その逆で、赤にも茶色はよく似合います」


「そう…?なら、よかった。プロが言うなら、間違いないな」


心底ホッとした。似合わないなら、染めなきゃいけないところだった。


「よし、切り終わりましたよ。すごくすっきりとされましたね」


「…うん、なんか、ちゃんと自分の顔を見たのは初めてかもしれない。長い髪が邪魔だったから…」


「どうですか?お肉をつけたら、すごく美男子になると思いませんか?」


「…それはわからないけど、貧相。お肉をつけたらエリアーヌに似合うようになるかな」


「絶対なります!」


美容師がぐわんぐわんと首を縦に振る。


「なら、エリアーヌの迷惑にならない程度にたくさん食べよう…」


「迷惑だなんて!たくさん食べて良いんですのよ!」


エリアーヌは優しい。そこがとても好き。


「…うん、たくさん食べる」


エリアーヌは俺をまた抱きしめる。エリアーヌに愛されてるって感じるから、ハグは好きだ。


髪を切り終わって美容師が帰ると、ちょうど良い具合に三時のお茶の時間になった。


「アナトール、一緒にお茶の時間にしましょう」


「俺も食べて良いの?」


「もちろんですわ!」


そう言うエリアーヌに連れてこられたのは、庭の東屋。


「ここでのお茶の時間が最高の至福なんですの」


「へえ…」


「茶葉は何が良いかしら」


「エリアーヌのお気に入りがいい」


「わかったわ。お願い」


お願い、といえばすぐに侍女が紅茶を淹れた。


「どうぞ、アナトール」


一口飲んで驚いた。すごく美味しい。


「孤児院で飲んだのとは全然違う」


「えっと…良い意味かしら?」


「すごく美味しい。あっちは紅茶というより紅茶水だった」


これと比べたら月とスッポンだ。


「お茶菓子も食べて。今日はチーズケーキですわ」


「ん、いただきます」


一口パクリと食べる。甘くて蕩けるような美味しさだ。


「…こっちも美味しいな。贅沢な気分だ」


「これからたくさん、贅沢させてあげますわ」


「ありがとう、エリアーヌ。俺はエリアーヌに何を返せるだろう」


「あら、お返しなんていいんですのよ?でもそうね…」


「ん…」


エリアーヌから返ってきたのは、すごく優しい言葉。


「貴方の幸せが、私の幸せ。だから、貴方が幸せになってくれることが最大級のお返しですわ」


思わぬ言葉に、ちょっときょとんとしてしまう。でも、わかったと頷いた。


エリアーヌがそう言うのなら、俺はたくさん幸せになる。エリアーヌが幸せなら、俺はさらに幸せになれるから好循環だな。

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