伸ばしっぱなしの髪も整える
「アナトールのために美容師を呼んで」
「かしこまりました」
呼んでとお願いすれば、急なことでも呼べてしまうから公爵家の娘でよかったと思う。
早速来てくれた美容師は、アナトールを見るとワクワクした顔になった。
「ふふ、アナトールは素敵でしょう?私の婚約者になる人ですわ」
私がそう言えば、美容師は運命の番なのだと察したらしく拍手して祝福してくれた。
「おめでとうございます」
「ふふ、ありがとう」
「では、傷んでしまった髪は切ってしまって綺麗な髪を目指しましょう!きっと髪がまた伸びる頃にはすごい美少年になっているでしょうね」
「やっぱりそう思います?そうですわよね!アナトールは世界一かっこ可愛くなりますわ!」
話のわかる美容師でよかった。
そして、アナトールの髪を切ってもらう。
シャカシャカとハサミの音が響く。髪が短くなっていくアナトールを見守る。アナトールは、自分の髪型が変わるのを無表情で見つめていた。
「…髪って、染められるの?」
そこでアナトールが口を開いた。
「ええ、染料を使えば」
美容師が答える。
「…赤に茶髪って、似合う?他の色に変えた方が隣に立って不自然じゃない?」
はてなんのことかと思って気付く。
赤って私の髪と目の色か!!!
アナトールが可愛すぎて苦しい。どうしよう、可愛い。
「そうでしょうか?茶色には赤が良く合いますよ。その逆で、赤にも茶色はよく似合います」
よく言ってくれた、美容師!!!
「そう…?なら、よかった。プロが言うなら、間違いないな」
心底ホッとした顔のアナトール。なんて良い子なの!好き!
「よし、切り終わりましたよ。すごくすっきりとされましたね」
「…うん、なんか、ちゃんと自分の顔を見たのは初めてかもしれない。長い髪が邪魔だったから…」
「どうですか?お肉をつけたら、すごく美男子になると思いませんか?」
「…それはわからないけど、貧相。お肉をつけたらエリアーヌに似合うようになるかな」
「絶対なります!」
美容師がぐわんぐわんと首を縦に振る。それを見てアナトールは言った。
「なら、エリアーヌの迷惑にならない程度にたくさん食べよう…」
「迷惑だなんて!たくさん食べて良いんですのよ!」
健気なアナトールが可愛すぎて、良い子すぎて、本気で感動する。いっぱい食べて幸せになって欲しい。それだけで私は目一杯幸せになれる。
「…うん、たくさん食べる」
そんなアナトールを抱きしめる。細すぎるこの身体が、いつか程よく筋肉のついた普通体型になりますように。




