病弱で、魔除けのために女の子として育てられていた僕を笑わないでくれた女の子
僕はフェリクス・ガエル・エマニュエル。男の子なのに、病弱だから魔除けのためにって女の子として育てられている。
本当は、他の男の子達みたいにカッコいい服を着たい。駆け回って遊びたい。
でも、身体が弱いからそれは許されない。
そして僕は、そんな自分に自信が持てない。だから自然と引っ込み思案になってしまった。
みんな、僕が本当は男の子なのに女の子として育っていることを影で笑っている気がして。
「フェリクス、今日は貴方に素敵なお知らせよ」
「な、なに?お母様」
「貴方にお友達ができることになったわ」
「え?」
「明日、デルフィーヌ公爵家のお嬢様に会いに行きましょうね」
デルフィーヌ公爵家のお嬢様って、わがままお嬢様で有名なエリアーヌ様?仲良くなれるかな…とっても不安だ…。
ということで、早速次の日エリアーヌ様との二人きりのお茶会をセッティングされた。
デルフィーヌ公爵家の庭の東屋で、二人きりにされる。
「ええっと…」
大人達は気を遣っているつもりだろうけど…いきなり大人達がどこかに行ってしまい、エリアーヌ様と二人きり。ど、どうしよう。
「フェリクス様。改めまして、私はエリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌと申しますの。お友達になってくださる?」
バッチリカーテシーを決め、にっこり微笑むエリアーヌ様。その表情は優しくて、わがままお嬢様なんて噂はどうやらあてにならないようだと思った。けれどだからって、二人きりの状況で上手く喋れるわけじゃない。
「あう…あの…うう…」
とはいえ、なにも言わないわけにいかない。頑張れ、僕!
「あの、僕…フェリクス・ガエル・エマニュエル…です」
「まあ!声まで素敵!」
急な大声にびっくりする。でも、僕のこと褒めてくれたのかな。
「え、え、あの…」
「あ!大きい声を出してごめんなさい。はしたなかったですよね」
「い、いや…」
「でも、本当にすごく素敵ですね!見た目も声も!ちょっとした仕草もとても優雅ですね!」
やっぱり褒めてくれてるらしい。優しい子だなあなんて思った。とはいえ、それはきっと僕を女の子だと思っているから。お友達になりたいなら…エリアーヌ様に、ちゃんと説明しなきゃ。
「そ、そう?」
「はい!」
「でも、あのね、僕…実は男の子なんだ…」
「はい、母から聞いて知ってます!」
「え?」
思わずきょとんとする。え、知ってるの?知っててその反応なの?嫌がらないの?馬鹿にしないの?認めてくれるの?
「え、え、気持ち悪いとか思わないの…?」
「気持ち悪いなんてとんでもない!すっごく可愛いですよ!女装男子って素敵ですよね!」
「え、素敵なの…?」
「素敵です!すごく好きです!」
思わず語りに熱が入ってしまう、と言った様子のエリアーヌ様。なんだかすごく、身体の力が抜ける。そして、珍しく大笑いしてしまった。
「ふ、ふふ…あはははは!エリアーヌ様は優しいね」
「え?欲望に忠実なだけですわ」
「あはははは!」
「優しいというなら、それこそフェリクス様の方ですわ。私のこういう趣味、理解してくださる方って少ないんですの。親にも言ってませんわ。それなのに、フェリクス様は笑い飛ばしてくださいましたわ!内面まで素敵です!」
「そ、そうかな…えへへ」
でも、そんなエリアーヌ様の方がやっぱり素敵だと思うんだ。
「フェリクス様!ここまで来たら恥も外聞もないですわ!直球で行かせていただきます!」
「え?な、なにかな」
「私と友達になってくださいませ!大人達がどうこうとかもうどうでもいいですわ!個人的にフェリクス様が好きですわ!眼福ですわ!ずっと見ていたいんですの!」
またきょとんとしてしまう。友達って、なってって言ってなるものなの…?あと、女の子の格好は多分期間限定なんだけど…。
「え、えっと…あの、いつかは男の子に戻る…というか、男の子の格好に戻るんだけど…」
「ならなおさら今のフェリクス様を目に焼き付けますわ!あ、もちろんその後も仲良くしてくださいまし!」
「…ふ、ふふ。エリアーヌ様は、素敵な人だね」
最初はどうなることかと思ったけど。今はエリアーヌ様と会えて本当に良かったと思える。
「そうかしら」
「そうだよ」
よくわかってない顔のエリアーヌ様。そんなエリアーヌ様に…可愛いな、なんて思ったりして。
「それで、どうですの?私と仲良くお友達になってくださいます?」
「…うん、もちろん。エリアーヌ様となら、いくらでも仲良くなりたい。これからよろしくね」
「まあ!まあ!とっても嬉しい!よろしくお願い致しますわ、フェリクス様!」
「うん!」
思わずと言った感じで僕の手を取って、ブンブンと振ってしまうエリアーヌ様。この天使のような女の子に、僕はこの日救われた。




