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プロローグ1  作者: マグciel
1/1

新しい賢者

1.

セントラル諸島に浮かぶ島、ザフトユーク。そこにある白狐族の村ルナールの東に広がる大森林リエースには然精族エルフと呼ばれる種族が住む、レース・アルカーナと言う集落があった。南側には豪邸があること以外、外から見る分には普通の集落だ。

「そなたに賢者の紋章が現れたという事は、暗黒神の復活が近いという事。今こそ集落の中心にある祠に入り、試練をこなすのだ。」

とエルフの女王、カルミアが言った。そして女王の正面で跪いている金髪碧眼の少年がいた。

「承知しました。必ずや試練を成功させて参ります。」

「頼んだぞ、アルス」

そう言われるとアルスは女王の間を後にした。自宅に戻ったアルスは、疲れたように準備をしながら愚痴を零していた。

「ん〜っはぁ〜…あの空気重いんだよなぁ。いつになってもなれないわアレ。はぁ。」

しばらくして祠に行く準備が出来ると、アルスは自宅の裏にある墓石に祈りを捧げ、祠へ向かった。祠の周りは厳重に囲われており、兵士が2人入口に居た。

「あなたがアルスさんですね。女王から話は伺っております。」

「どうやら賢者の紋章が現れたとか。まだ子供の君が、試練なんて出来るんですか?」

兵士が煽るように言った。年齢が15歳のアルスは、冷静に返した。

「そうですね。頑張ってきます。」

そして祠の入口に立った。すると右眼にある賢者の紋章が光り、祠内に転移した。祠内に入ったアルスはどこまでも広がっているように見える空間を進んだ。すると突然声が聞こえて来た。

『私はこの試練を創造したストレリチア・レーヴ。まずは今から与える試練を突破してみせよ。』

「初代女王様!?」

その声と名前に驚いたが、続いて現れたドラゴンにも少し驚いた。

「へー、オーロドラゴンね。本の中だけの存在だと思ってた。」

金色の羽が特徴的なドラゴンだ。アルスはまず手始めに魔法を唱えた。

「アイシクルランス」

オーロドラゴンに氷の槍が放たれたが、その体にたどり着く前に魔法が掻き消されてしまった。

「初級魔法じゃ駄目か…じゃあこれならどうかな。」

そう言うとアルスは2つの魔法を使った、別の魔法を放った。

「アイシクルインパルス」

氷柱に電気が纏った魔法は、オーロドラゴンの翼を貫通し、ダメージを与えた。オーロドラゴンは悲鳴をあげたが、同時に怒り電気ブレスを放ってきた。

「ライトプロテクト、エクスプロードスノー」

電気ブレスを光の盾で守り、爆発する雪をオーロドラゴンに降らした。オーロドラゴンの体に触れた雪が次々に爆発していき、とうとうオーロドラゴンは力尽きてしまった。

「ふぅ、やっと倒せたか。…ん?これは…」

そう言うとオーロドラゴンがいた場所に落ちていた鍵を手に入れると扉をあけ、奥の部屋にはいった。すると光る宝玉と本、何か記された石版が置いてあった。そこには、

『この試練を越えしものよ。この宝玉と魔導書を手にし、暗黒神を討伐せよ。』

と書いてあった。

「この宝玉と…魔導書ってこれか。なんか普通の本みたいだけどな」

と言いつつ、宝玉と魔導書を持ち祠を出ていった。そしてアルスは女王の間へ向かった。

アルスは女王へ宝玉と魔導書を入手した事を伝えると、自宅へと戻った。

「お、兄さんおかえり〜」

アルスと同じく金髪碧眼の少年が料理を作りながらいった。

「ユミト帰ってきてたのか。ただいま〜」

軽くそう言うと、荷物を置き椅子に座った。

「そうそう、試練終わって母さんに会ってきたんだろ、なんて言われたんだ?」

ユミトアルスに尋ねた。

「女王様だろ、まだ全然なれないけどさ。まぁ精霊の泉に行けってさ、そうすればこの本の事も、宝玉の事も分かるってさ。」

兄弟揃ってやれやれというような感じの表情をした。

「アルス兄はよく行くからもう慣れたと思ってたよ。僕は女王としての母さんとはあまり合わないからね。」

ユミトが料理を作り終え、話しながら食べ進めていった。そして夜、アルスは翌日の準備をし寝ようと自室で横になっていると、と大声で叫びながら女性が部屋に入ってきて、アルスに抱きついた。

「アルス〜!!!」

「母さん!?珍しいね、帰ってくるなんて」

「だって明日には遠く行っちゃうじゃん。今度いつ会えるか分からないし、今の内にこうしておかないとね。どう?今日はお母さんと寝る?」

母親であるカルミアがアルスに頬ずりしながら言うと、アルスはは少し照れくさそうにしながらも、ユミトを気にかけた。

「いや、遠慮しとくよ。まぁでもそうだね、明日の朝には出るし、家で会えて良かったよ。ユミトにも声かけに行ってあげなよ。」

「そう、残念ね。明日から頑張ってね!無事に帰ってくるのよ。ユミトと待ってるわ〜」

と言うとカルミアはアルスの部屋から出ていった。アルスはその後すぐに眠りにつき、翌日の朝アルスは家を後にし、泉に向かった。アルスはレースアルカーナから南にある泉へ着いた。そこには神天像と泉、小屋があり、その小屋へと入っていった。

「おじいちゃん久しぶり〜」

と挨拶した先には白髪の老人が居た。その老人は挨拶されたことに気づくと、

「おぉアルスか、久々じゃな。して、何か用があって来たのじゃな。」

とアルスに言った。

「この本と宝玉について知りたいんだけど、おじいちゃんなら何か知ってるかなって。僕もレースアルカーナにある書物はあらかた読んだんだけど、分からなかったんだよね。」

そう言うと本と宝玉を取りだし祖父に見せた。祖父はその本と宝玉を持ち泉へと寄って行くと、

「この本は多分ここの精霊様の物だろう。」

と言って、本を泉へと投げ入れた。すると泉の中から茶髪でエメラルドグリーンの瞳の精霊と思わしき者がでてきた。

「この本はあなたの?何か用があるの?」

「実はレースアルカーナにある祠でこの本を見つけたんだけど、何か知りませんか?」

とアルスが聞くと精霊は、

「これは私が昔創った本で、実はある仕掛けがしてあるの・・・ってあなた賢者!?」

と賢者の紋章を見た精霊は驚いていた。精霊は本を返し、

「私はレータ・ツヴィエート。かつて賢者達と共に生きた光の精霊です。あなたがその紋章を持ってるなら、暗黒神と闘う使命を与えられた者。それなら私はあなたについてかせてもらうね。」

と言った。アルスもアルスの祖父も驚いていたが、やがて冷静さを取り戻した。アルスはその本には剣が入っている事、自分と同じ紋章を持つ者が他にもいることをレータから聞いた。

「なるほどね。じゃあ仲間の皆さん一緒に暗黒神を討にいこう。」

アルスが仲間と共に暗黒神を討つ旅に出る為に気合いを入れた。

「……そうか、気をつけるのだぞ。」

祖父が心配そうに言った。アルスは腰辺りに本を掛けると、レータはその中に入っていった。アルスは祖父に別れを告げると、北西にあるプライリーへと向かった。


2.

北東には吸血鬼が治め、常に夜である大陸、ミッドナイトがある。そこには吸血鬼の城があり、この大陸の中央には巨大な穴、ナイトホールがある。そしてこの城の王であるブラスク・スピネルの子であり王女であるエリス・スピネルが今、この巨大な穴へ入ろうとしていた。

〜数日前〜

「父様がこの間言っていた事なんだけど」

そう切り出したのは赤眼金髪の少女、エリスだ。

「あぁ、"暗黒神が再び蘇りし時、導かれし者たちがその闇を打ち消す”という、昔からの言い伝えの事か。あれがどうかしたのか?」

王であり父であるブラスクが言った。

「ナイトホールにある祠と関係があるとかどうとか言ってたし、この間は私の事も言ってたよね?」

どうやらエリスは自分が導かれし者である事、この瞳にある紋章がその証拠である事、そして祠が関係しているという事まで、ブラスクから聞いていたようだ。

「そうだな。紋章に選ばれた者があの祠に行き賢者の言葉を聞いたとき、その者に更なる力が宿ると石碑には刻まれていた。」

城にはいくつもの石碑が建ち並んでいたが、それはどれも先祖によって代々大切に守られていたものらしい。

「そ、だからあの祠に行こうと思うんだ。世界も見てみたいしね」

と笑顔で言ったエリスに対し、ブラスクは少し驚いたような顔をした。

「なっ女の子1人で大丈夫か?いや、護衛をつけようか…」

「大丈夫だって1人でいけるから!」

ブラスクは己が娘の成長を喜ぶべきなのだろうが、"娘1人で大丈夫だろうか。”という不安もあった。エリスはそんな心配を他所に、祠に行くことにした。翌日、ミッドナイトにある森の中を進んでいた。ナイトホールにある祠に行く途中のようだ。

「飛んでければ楽なんだけどな〜上から行くとモンスターに狙われやすいし、しょうがないか。」

そう言いながら歩いていると、やがて祠が見えた。上からは巨大な穴が空いているようにしか見えないが近づくと、祠の入口が見えた。

「えっと…ここに立てばいいのかな?」

入口にあるぼんやりとした光の筋が入った紋様の上に立つと、その瞬間エリス入り口から別の場所に飛ばされた。すると突如頭の中に声が聞こえてきた。

『ここは“スペル・シュライン”導かれし者の力を試す場。奥に眠る者にその力を示せ。』

それを聞き、エリスは奥に進んだ。この場所自体はただ広く、いくつかの支柱が建っているだけのシンプルな所だった。奥に3つの台座があり、その真ん中には宝玉がうまっていた。エリスが近くによると両端の2つの台座に炎が灯った。次の瞬間、真っ黒で黒い鎌を持ち、宙に浮いた影のような者が現れた。

「ふ〜ん、あなたがこの試練のボスなのかな?」

そう言うとエリスは先手必勝というように魔法を唱えた。

「ダークブラスト」

そう言うとエリスが影に向けた手から魔法陣が発動し、黒球が影に向かって放たれ、爆発した。だが、影は何事も無かったかのようにそこに佇んでいた。

「まぁこんなもんじゃ殺れないよね♪じゃあこれならどうかな?トラジディー」

その言葉を紡ぐと、先程よりも巨大な魔法陣が影の下に現れると、"ドクンッ”っと魔法陣内の空間が揺れ、黒い霧に覆われた。しかしこれも影には通じず、少し疲れた様子で

「う〜ん、これどうすればいいんだろ」

とエリスが言った後、影が突如エリスに迫ってきて、鎌を一振した。エリスは防御魔法を唱えようとしたが、その前にエリスの右肩から左腰あたりまで斬られてしまった。

「グッ、かはっ…」

エリスは膝を着いて血を吐いてしまった。だが影は攻撃を辞めなかった。影はエリスへ手を向けダークブラストを放った。それはさっきエリスが放ったダークブラストよりも威力が強かった。エリスは吹き飛ばされ、ボロボロになっていた。

「はぁ、はぁ…。な…んで、はぁ。(なんで私の魔法が効かないの?……とりあえず色々試してみないと。)」

影は鎌を少し離れた位置からエリスに向かって振り下ろすと、黒い斬撃が飛んできた。エリスはそれを避けると、

「ダークフレア」

と魔法を放つと影を中心に黒い炎が周りに広がった。だがこれも効いているようには見えなかった。(やっぱこれもダメ。どうすれば……っ!そうだ!これなら…)エリスは自分の左眼にある賢者の紋章を思い出すと、眼に魔力を集中させた。すると紋章が光り、影の右腕にコアがある事に気づいた。

「なるほど。試練ってこういう事だったのか。」

そう言うとエリスは影に迫ると、影はエリス目掛けて鎌を振り下ろした。

「メランゼーデル」

エリスはその攻撃を避けると、魔法を放った。闇属性の大きな斬撃は影の右腕を切り刻んだ。すると影は液体のようにその場で消えてしまった。しかしエリスもその場に倒れこんでしまった。薄れゆく意識の中、あの声がまた聞こえてきた。

『私の名はラミア。その紋章の力を解放せし賢者の末裔よ、その力の名は真実の眼(ファクトアイン)。真実を見抜く力である。導かれし者たちと暗黒神を倒す役目がそなたにはある。その力を使いその役目を果たしてくれ。頼んだぞ…』

エリスは這いながらも試練の証に埋め込まれている宝玉をなんとか入手し、意識を失った。その後意識を取り戻した時には既に城に戻っていた。後から聞いた話によると、3日程帰ってこなかった為様子を見に来た兵士が祠の入り口で倒れているエリスを発見し、城に連れ帰ったとの事だった。エリスは父に祠での事を話すと、父から

「そうか。実はお前の母ラミアは5賢者の1人だったのだ。しかし暗黒神を封印した後、殲誓天の一体と交戦し力を使いきり、命を落としてしまったのだ。」

あの声が母親の声である事を知り、エリスは驚愕していたが、

「…父様、私が暗黒神も殲誓天も倒してくるよ!絶対にっ……」

エリスはそう父に誓った。すると父は少し悲しそうにしながらもどこか嬉しそうにエリスに言った。

「お前も成長したのだな。ではセカンドパーロンの先にあるセントラルに向かうといいだろう。そこにお前達の仲間が集まる。"賢者が集いし時、新たな扉が開かれる”我が先祖から伝えられてきた最後の言い伝えだ。頼んだぞ」

「ありがとう父様。行ってくるね!」

エリスは父に成長して認められて嬉しくなった。そしてエリスは父に挨拶すると、ナイトフォールと城の周りを覆う広大な森ダークフォレスト(Dark Forest)の南西にあるセカンドパーロンに行くためダークフォレストを進んでいた。影に付けられた傷はすっかり回復しており、吸血鬼族(ディアグレ)の驚異的な能力の片鱗を見せていた。

「ん〜この辺の魔物は全然襲ってこないなぁ」

とフラグを立てた瞬間どこからか攻撃が来たが、エリスはサッと身を捻り回避した。そこには1つ目の熊が居た。

「アルクトス。この辺りじゃあ割と強かった気がする♪」

余裕そうな表情を見せているエリスにアルクトスが爪で切り裂こうとした。しかしエリスは軽く避けると、後ろの岩が豆腐のように切り裂かれた。

「当たったらそこそこ痛いだろうけど、当たらなきゃどうということは無い(キリッ」

そう言うとエリスはファクトアインを使い、アルクトスに向け魔法を放った。

「ダークペネトレイション」

エリスが魔法を放つと、黒い光がアルクトスの心臓を貫きアルクトスは力尽きた。

「へぇ、下級呪文でもここまでできるんだぁ。やっぱこの眼、自分の眼だけどすごいなぁ」

と改めて感心したようだった。少し進み、橋が見て来た時だった。突如その辺にあった岩が積み合わさり、ゴーレムへと変わった。

「グォォォォ」

エリスに殴りかかってきたが、エリスはファクトアインを発動させ魔法を唱えた。

「ダークブラスト」

その眼で見えていたコアを魔法で撃ち抜くとゴーレムは音を立てその場に崩れ、起き上がることはなかった。

「ま、ゴーレムくらいならこの眼を使う事もなかった気がするけど、練習にはなるでしょ。長時間使うと結構疲れるし。」

と苦笑いしながらゴーレムを形成していた岩に付いていた光る石を採ると、セカンドパーロンを渡ってセントラルへと向かった。




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