第0話 後編 風のココロ
-yy:mm:dd 聞こえていますか。私は今xx:xx:xx:xxを航行中です。-
眼前に広がるセカイ。それはどこまでも続く水平線の様。
果てのない空間で一人ぼっち。私のセカイには誰もいない、でも、寂しくはない。
-yy:mm:dd 聞こえていますか。現在順調に航行中、まもなく天王星周回軌道を離脱します-
故郷を旅立ってから今に至るまで、色々な景色を観てきました。
それはどれも美しく、私の胸を高揚させてくれるものばかり。私はそんな旅路の思い出を語る為のエッセイを書いています。
私の事を知らない人に、私の事を知ってもらうための日記帳。
私の記憶がいつか誰かの役に立てる日を願って、私は書き続けます。
私が会話した人達、出来事、感情。全ては私の宝物です。
宇宙を旅する事が好き。
新しい発見が好き。
新しい価値観が好き。
私の知らない事をたくさん知る事が出来る、私のセカイを広げてゆく旅路。
そして、私の書いた日記帳が色々な人たちに読まれて、喜んでもらえる事が嬉しかった。
でも、それは永遠ではなく、いつかは終わりが来る事も理解している。
だから、私はその時を少しでも楽しい時間にしたいと願っています。
私は宇宙を旅している。
旅路を辿り、様々な景色を観た。
グランドフィナーレの時まで、残された僅かな時間。
私はこの先、どんな景色を観られるのでしょうか。
綴る物語がどんな結末になるのかは、誰にもわからないけれど。
きっと、悲しいお話ではないだろうと思うのです。
Voyager. ----------