6掴まる
はいはい、お手の物ですよ。なかなかの高速です。
「きゃきゃきゃー」
どんどん楽しくなってきちゃうと、危険です。頭を壁等にぶつけますので、落ち着いて。
「はーい。スウ様。落ち着いて」
今日はトマスラルさんが見守ってくれています。どうもー。やっぱり、落ち着いた方がいいですよね。
「あい」
「全然、落ち着いていないですよ。楽しそうでしたね」
「あい」
相変わらず、小さな子のか弱さが心配になるようで、トマスラルさんには窓際で抱き上げられて、くるりと回転してまた下されました。見守るのは大丈夫だそうです。
存分に見守って貰いましょう。今日こそ、掴まり立ちをものにしますよ。
「え? スウ様。勘弁して下さい。ケリーがいない時になんてことを!!」
まあ、偶には良いじゃないですか。
「う?」
「聞く気ありませんね。あっ!」
窓際は丁度良く、角を丸めた背の低い本棚が置いてあるのです。勿論、丁度手を置ける高さです。
「ちょ」
全身が、ぷるぷるします。ううう。無理。
「わー!!!」
トマスラルさんが叫びとは裏腹に、手を伸ばして優しく受け止めてくれました。危ない。べちょっとつぶれるか、お尻で着地でした。ぷりんぷりんのお尻なので、痛くは無かったとは思うのですが・・・。受け止めてくれた手は即座に引っ込んでいます。
「おお」
「あ、危なっ。怖い。スウ様が・・・反抗期に・・・」
しくしくと泣きまねをしながら、私を横目にせっせと緩衝材になる物を集めています。いや、こんなにやわやわな所では力をこめられませんよ。ふむ。今日はこのやわやわの海で遊びますか。そおれ。
「ひぇー。飛び込まないでー」
片手をぴっと上げて見せただけで、すぐさま止められました。なかなか、勘が良いですね。折角の海です。遊ばいことには勿体無い。
今度は慌てて片付ける、トマスラルさん。なかなかの動きですね。ふふふ。だが、甘い。
「うちょ」
棚板をしっかり掴む。せーの。
「うっわー」
また、悲鳴をあげつつ素早く受け止めて、放されます。
ふー。今日は、ここまでにしてやるか。ううう。明日こそは掴まり立ちを達成しますよ。泣いてなんかいませんよ。