27芸術
「「楽しいー!!」」
一通り道具の説明をするとシツタさんとラツタさんの目が輝き、分身しているかのような動きになっています。つい、私からも感嘆の声が!
「おおー。おじょり!」
三人の歓声のみが上がっています。クイマラーア料理長は苦笑しつつ、ケリーに話しかけています。一応、聞こえては来ていますが、二人の動きに目が釘付けです。乗って来たのか、ばっちり、同じ動きで作業してくれていて、何かの振り付けに見えてきます。
「かなりの効率化が見込めるみたいだよ」
「それは良かったです」
「あれだけ楽しそうに動いているからね。細かい点で改良の要望はあると思うけど、かなり良さそうだね。味も大丈夫だろうさ」
「あじゅみ!」
「スウ様、試食会で食べ過ぎたばかりですから・・・」
「そうさね。今回は私達だけでやらせて貰うよ」
「・・・あい」
「次の試食会を楽しみに待っていて下さい」
料理長が微笑むと、ケリーがさっと退室します。多少味が落ちた状態で作ってくれと無理を言ってしまいましたからね。味が落ちたものを出す訳にはいかないとのことでしょう。残念ですが、あの動きを見れただけでも、収穫です。
「ケリー。おじょり!!」
「スウ様も踊りを学ばれたいのですか?」
「みりゅの。いりょいりょおじょり」
「踊りも色々な種類をご存じなのですか?」
「あい」
温泉施設があるんです。舞台を作って歌や踊りや劇ですよ。ライ様に相談だ!
「ライしゃまー! おじょり!」
ライ様とトマスラルさんが揃って首を傾げます。ケリー、お願いします。
「スウ様が長く逗留して下さる方に、芸術でも楽しんで頂きたいとのことです」
「芸術とは?」
「確かに、暇ですもんね。ほとんどの人が仕事をしていますけど・・・」
「踊り、歌、演劇等どうかとおっしゃっています」
魔道具ができたので、妊娠期間中全て滞在される方は少なくなったのですが、温泉で一週間程滞在してくれる方や、美容や体質改善といった長期滞在型のお客様もいます。
「芸術は南が盛んなんだが・・・」
「?」
ライ様が言い淀みます。今度は私の方が首を傾げる番でした。こんな時はトマスラルさん、ぽろっと言っちゃっていいですよ。
「ああ~。スウ様の功績を盗られたっていう、被害妄想があったりするんですよねー」
「ちょう。あっ」
ああ。そういうことですか。それは流石に、違うでしょう。
トマスラルさん。ありがとう。期待を裏切らないですね。あっ、ライ様とケリーに両脇を抱えられて・・・。速やかにフロロウクさんに渡されました。瞬きの間すらないような出来事でした。あなたの言葉は忘れません。




