デートという名の下見…それは前世からの野望!?
先週と比べ一気に冷え込みましたね。朝が早いのもあって寒さに震えながら通勤する毎日です。
それはさておき、年末にむけて忙しくなるため、2020年最後の投稿となります。
次回は年明けになりますことをご報告いたします。
「お嬢様、ノワール様とのデートの日ですよ!起きてください!!」
「うぅ、ノワールは少し待たせておけばいいからもう少し…。」
「もう!いつまで拗ねてるんですか!私たちはうれしいのです。お嬢様もちゃんと女の子だったんだって知れて。それはそれは安心しました。ほら、今日はいつもよりうんと可愛く致しますので起きてください。」
そう言って私をたたき起こすのはレティーナ。ノワールと婚約したことにより正式に私の専属メイドとなった。レティーナはルナーラ魔法学園に通う際に連れていく使用人枠としてお父様が探してきた。正式に使えたのは婚約が決まってからだが、元々は6歳の誕生日の日にする予定だったらしい。
レティーナはとても明るく接してくれるのだが、会って数日だというのに私のことになると妙に張り切る。今日だって私はいつも通りでいいのにデートだからと朝からお風呂に入れられ、髪もいつもは結わないのに対して、今日は前髪編み込みと三つ編みを組み合わせたハーフアップ型だ。後ろでまとめているのは青いリボだ。私の少し赤みがかった金髪を際立たせて可愛いらしい。
そうして解放された私は、なにもここまでしなくてもという程に磨き上げられていた。これでノワールが無反応だったならば殴る。ついでに蹴る。私の苦労を理解しやがれ。
ふんすっ!と意気込む私を見て満更でもないと思ったのかレティーナは大変満足した顔だ。
「それで、レティーナはどうして私をここまで仕立て上げたのかしら?」
「それはもちろんお嬢様だからです!」
「…ぇ、それだけ?」
「はい…?そうですけど」
「ごめんなさい、確か私は理由を聞いたと思うのだけど…」
「はい、理由を聞かれました。」
「……。」
「………。」
か、会話が成り立たない…。それよりもこの子私のためなら私の気持ちも考えずに実行するんじゃ…。どうしようちょっと怖い。
「あ、でも流石に嫌がることまではしませんよ?お嬢様が大好きな婚約者様とのデートなんです。何としてでも可愛くするのはメイドとして当たり前ですから。」
フフンと胸を張るレティーナに疑いの目を向ける。
しばらくして、ノワールが迎えに来たとの連絡を受け外に出る。
「やぁ、アシュリー。今日は一段とかわいいね。」
「そうでしょう?専属メイドのレティーナが特に張り切ってね?どうかしら?」
「そうなんだ。とてもよく似合っているよ。青いリボンもアシュリーの髪にマッチしてていつもより可愛く見えるよ。」
「そ、そうでしょう?そういうノワールも今日はいつもよりかっこいいわよ。なにかしら?ちょっと大人ぶってコートを羽織っているからかしらね?」
「ふふ、ありがとう。さぁ行こうか」
そしてたどり着いた場所は、ルチアーニ公爵家の領地であるルワンド。アシュリーとノワールのデートは庶民的な場所が多い。前世からレジーナ(アシュリー)は庶民が食べるものや着るものなど、庶民の暮らしが好きだった。レジーナの親も最初はやめるようにと何度も注意していたのだが、ある日家を抜けだした。ノエルが見つけ出すまでの数日間を庶民の服装をして、庶民の家を借り、庶民そのものであるかのように1人暮らしをしていた。飲食店で仕事をしながらお金も稼ぎつつだ…。使用人が探しても見つからないのは当然であった。貴族令嬢であるレジーナが庶民そのものの暮らしができるわけがないと思っていたために、庶民の中でも裕福な暮らしをしている人たちの場所ばかりを探していたからだ。それに対しノエルはレジーナのことをよく知っていたし、ノエル自身も庶民の暮らしにあこがれを持っていた。それゆえにレジーナの場所の検討もすぐ着いたのだが、しばらく思うとおりにしてあげようとあえてレジーナがいそうな場所を避けた。それでもレジーナが庶民の暮らしをしたのは5日であった。レジーナが家を抜け出して3日目のことである。レジーナのことをうらやましく思ったノエルが、レジーナを探している最中に使用人たちの目を盗みレジーナと合流したからである。ノエルまでもが姿を消したことで、ノエルの両親はきっと下町にいると予測をつけ使用人たちを送り込んだ。それでも見つけられなかったことから痺れを切らした両家の両親が町へ繰り出す。流石は親といったところだろうか。使用人では見分けられない2人をものの見事に見つけ出した。
そんな二人は密かに計画していることがある。今度は1か月は絶対庶民の暮らしをする…と。
そう、今日は町で暮らす2人の住居の下見を兼ねている。
「見てノワール、この立地はいいと思わない?」
「確かにいい場所だな。人通りも多いとは言えないが少なくもない。こういう場所はなかなか探さないよね。前回もお母さまさえ来なければもっと行けたんだけどな。」
「本当にね。しかしどうして簡単にばれたのかしら…。」
「まぁ、そこはちゃんと親だったってことなんだろうね。行動を読まれていたとしか思えないからね。」
二人は空き家を見つけては、良し悪しを話していた。そうしてふと二人の目に留まったのは、少し古ぼけた孤児院だった。
「孤児院ですね。」
「孤児院だな。」
「…覗いていくわよね?」
「行きたいのなら付き合うよ。」
そうして私たちは孤児院へと歩みを進める。町はずれにあるせいか、ところどころに立派な木もあり、動物でも出てきそうな雰囲気がある。
「あの、こちらに何か御用ですか?」
孤児院に近づくと、20代後半くらいの女性が声をかけてきた。
5,6歳くらいの子供が2人女性のスカートの後ろに隠れ体半分出している。
「突然すいません。孤児院を見つけたものですから少し興味が。もしご迷惑でしたら去りますのでご心配なさらず…」
「あぁいえ。そうだったのですね。本当に何もないところですがごゆっくり。えぇと、後ろの方たちは少しこちらへ」
そうして私たちは中に入れてもらい、子供たちが遊んでいる広場に案内してもらった。
私たちは彼らと一緒にボール遊びをしたり、追いかけっこをしたりとそれは楽しいひと時を過ごしたのだった。
一方、護衛としてついてきた使用人は、応接間へと通されていた。
「皆さんは彼女たちの…ええとそういったご関係で?」
「使用人兼護衛です。」
「…シヨウニン、デスカ?」
「はい。」
女性はどういうこと?と空を仰いだ。
そして思い出したのかガバッと顔を上げ
「大変申し訳ありません!自己紹介がまだでしたね!私はこの孤児院を管理しています。マリアと申します。」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は、ルチアーニ家で執事をやっております、シャルルと申します。」
「私はロンド家で執事をしているリオンと申します。」
「えぇと…もしかしなくても貴族様…ですか?」
「はい。ノワール様は侯爵家、アシュリー様は伯爵家のご子息ご令嬢であらせられます。」
どうしてお貴族様がここへ……と顔を青ざめるマリア。
しばらくして、彼女たちをどこへ案内したのかを思い出す。
「あああ、あの!ノワール様方を子供たちのいる広場へと案内したのですが、問題はなかったのでしょうか?」
「はい、問題はありません。お坊ちゃま方は何故かこういう場所が好きみたいで、今日も街並みを眺めながらデートをしておられましたので」
大変失礼なことをしてしまった。もしかして貴族にたてついたとして罰せられると思い、更に顔を青くしたマリアだったが、シャルルの言葉を聞いて、貴族が平民の位を眺めながらデート?と頭にハテナを浮かべた。
良い貴族もいれば悪い貴族もいる。悪いほうが目立ちやすいだけで、ルチアーニ家やロンド家は領民たちのことをしっかりと考えているとシャルルは説明をした。
すっかり孤児院の子供たちと打ち解けあったアシュリー達は、大変満足そうな顔でシャルルと合流した。
「ノワール君またねー!」
「アシュリーちゃんもまた遊ぼうねー!」
「あぁ、また来るよ。」
「えぇ、また来ますね。」
子供たちの会話を聞きながら、マリアは貴族令息令嬢になんて言葉遣いをとあわあわしていたが、シャルルたちは彼女を放置してノワールたちに近づく。
「そろそろ日が暮れてきますので、本日はこのあたりで帰りますよ。」
「あぁ、問題ない。とても楽しい時間だった。アシュリーはどうだった?」
「えぇ、私もとても楽しい時間でしたわ。次はいつここに来ましょうか?」
そうして二人は帰路へつく。帰りの馬車では明日も孤児院に行こうなどとはしゃぐアシュリーをノワールがさすがにそれは無理だと諭す。
前世から活発なアシュリーは、孤児院の子供たちと遊ぶことがとても楽しい時間だったのか、明日が無理なら明後日!とはしゃいでいた。
孤児院の子供たちと遊んだ。とノワールとアシュリーは思っているが、それは彼らが前世の記憶があるからであり、実際には年の近い子供たちが一緒に遊んでいた。という事実があった。
まだまだ寒い日が続きますが体調にはくれぐれもご注意ください。こんな状況ですから、手洗いうがいはしっかりとしましょう。去年までの私なら手洗いうがいなどしていなかったのに、この1年で常識というかいろいろと大きく変わりましたよね。
では、皆様よいお年を!
ちなみに、やる気にもつながるので、面白いと思っていただけましたら評価・感想のほどお願いいたします。