アシュリー5歳
いつもはポケモンやったりあつ森やったりスプラしたりと何かとゲームで休日つぶしているのですが今日はゲームをする気分ではなかったので、小説書いていました。
2作同日更新となりますが、どうぞお楽しみください
書庫は1日3刻まで!という決まりが作られてから2年が過ぎた。
2年もあればあらかた読めるもので、書庫にある前世に関する書物は全て読んだといっても過言ではない。そんな私が今何をしているかと言えば…そう魔法!
7歳から王都にあるルナーラ魔法学園初等部に通うことになる。魔法は学園に入ってから習うものなのだが、前世の記憶がある私はこっそり魔法の練習をしていた。しかし、前みたいに扱えるわけもなく、少し加減を間違えて爆炎…。見事全員にばれてしまいお説教。このまま放置しておくのは危険だからと魔法の勉強も追加された。
魔法の知識はあっても、この体で同じように使えないことはやらかしていたので理解済み。家庭教師の立会いの下で日々練習の毎日となったが…正直言って講師のレベルは低いと言わざるを得ない。まず、無詠唱魔法、つまり自分の意志のみで魔法を発動させる技術が失われていた。ごく少数だが使える者はいるようだが、そのすべては宮廷魔導士だけだという。昔(レジーナの頃)は無詠唱なんて魔術師になるには必須だったのにどうして衰退したのだろうか…。
という事情もあり魔法の勉強に関しては、講師より私のほうが遥かに知識があったために、座学の時はつまらない。一応真面目に受けている風を装ってはいる。この年で講師より魔法に詳しいとかありえないからね。
その分、実技の時は暴走したとしても止めてくれるから安心してバンバン魔法を放っている。講師には『天才だ…』と言われ、両親からは『将来は歴史に残る魔導士になりそうだな』と言われた。すでに歴史に残ってるけど…。
そうそう、私にも弟ができました!名前はアルベルト。現在1歳と半年くらい。第一子は私、つまり女の子だったから後継者という点で少し焦っていたのか、弟が生まれてお父様は大喜び。生まれたばかりだというのに、これからどうやって教育していくのかという計画はすでに5年分みっちり組み上げている。それを実行したら絶対アルベルト逃げ出すなと思い、こっそり抜け出して遊べるように今から抜け道調査と抜け道制作をしておかないと。と考えている私はなんて弟思いのお姉さんなんでしょう!!
実はこの計画、私とお父様見事にお母様バレてお説教をいただきました。半日ほど……
そして今日は私の5歳の誕生日。
去年までは親族だけを呼んで身内でのパーティだったが、今年はお父様の知り合いも呼ぶとのことで、私のドレスも気合を入れたものになっていた。
デビュタントはまだまだ先だけど、私の魔法が天才級だという噂が流れていて是非にと押し切られたそうだ。つまり私のお披露目会でもある。
そして、アルベルトはまだ1歳なのでお母さまと一緒に欠席です。
「お嬢様、そろそろご支度いたしませんと間に合いませんよ?」
「あら、もうそんな時間なのね。はぁ、どうして私の誕生日なのにこんなに憂鬱なのかしら…」
「お嬢様の魔法の才は素晴らしいからですね。私共も数名お近くにおりますので、お疲れになられたら際は遠慮なくお申し付けくださいね?」
「はーい。」
そして着替え終わり鏡を見ると、そこにはなんともかわいい少女の姿が……あ、私でした。
少し赤みがかった金髪にピンクのドレスがとても似合っていて、自分で見惚れていた。しばらく鏡から離れない私を見て、『お気に魅されたようで何よりです。』とメイドが言うが自分に見惚れている私にそんな言葉は耳に入ってこない。
いつまでもこのままだと進まないということで、足から根が生えたかの様に動かない私を見かねて手鏡をもって来て『そろそろお時間ですのでこちらでご自分を見てくださいね』と渡された。
素直に従い、手鏡で再度私に見惚れている。もちろん前など見ていない。メイドに誘導されるがままに会場に向かった。
会場に入るとすでに人は集まっていてパチパチと拍手で迎え入れられた。そしてすぐに皆”え?”という顔になる。何故なら《手鏡で自分に見惚れているから》
でもすぐに”まぁ、可愛らしいこと”という言葉でほんわかとした空気になった。
それから順にお祝いの言葉を貰ったが手鏡を手放すことはなく、微妙な雰囲気になった。流石にいつまで見惚れているんだとお父様に手鏡を取り上げられ、改めて誕生日を祝いに来てありがとういうお礼と同時に、どのくらいの魔法が使えるのかというお披露目会が始まった。この時代にこの年の子供が無詠唱だとあまりにも不自然なので、きちんと習った呪文で、いつものようにかなり力を抑えて魔法を発動させる。
すると、”この年でここまで”とか”天才という噂は本当だった”などとにかく凄いすごいと皆が口にする。本当は前世、黒炎の魔女なんですとは言えず、少し罪悪感を覚え中庭へと抜け出す。
書庫に通うことがなくなった私は、抜け道捜索&創作のために屋敷内を練り歩いているが、この中庭はお気に入りの場所となっていた。隠れてお昼寝などしていることがバレた時はまた怒られると思ったが、そういうことはなく、私が眠ってもいいようにと少し長めの椅子が用意された。それでも固い椅子より柔らかい地面ということでそれ以降もこっそりお昼寝を堪能していたりする。
一番のお気に入りの場所である、この屋敷の中で一番大きな木へ向かうと男の子がいた。一緒に連れられてきた子だろう。見知らぬ家の中庭でどうして一人でいるのだろう?と不思議に思った私は声をかける。
「ここ、私の一番のお気に入りの場所なのよ?」
「そうでしたか。それは申し訳ありません。」
「別に責めている訳ではありませんの。」
どうして素直に”どうしたの?”って声を駆けれないのよ私は!!
えー、どうしようなんか微妙な空気になってしまった。
ええい、今からでも遅くはないはず
「それで、どうしてここに一人で?」
「・・・」
「言いたくなら別にいいのよ。私は疲れたから隣失礼するわね」
理由はどうやら言いたくないらしい。まぁ別にどうでもいいことだったので、隣に座る。本当は寝転がりたい。
「僕と同い年の女の子が魔法の才能があるからお近づきになっておけって親に言われてきたんだ。」
「そう。」
言いたくなかったのではないのだろうか?隣に座ってからお互い無言でいると少年が話し始めた。
「正直僕は、過大評価だ。僕だってすぐに出来るようになるにきまっているって思ってたんだ。今日君の魔法を見るまでは。」
「へぇ~」
「あんなに上手に魔法は操れない自分は凡人なのだと理解したんだ。でもだからってどうやって君と仲良くなればいいのか分からなくて逃げてきたんだ。」
前世の記憶があるから、上手に魔法が使えるだなんてとても言えなくて、私は黙って彼の話を聞く。
「・・・。」
「・・・・・・・え?それで終わり?」
急に喋らなくなったのでたまらず聞いてしまった。しかし少年からの返答は無い。
どうしたものかと思ったが、私も沈黙を貫くことにした。
どのくらい時間がたったのだろうか?メイドが私を呼びに来た。パーティーもそろそろお開きだという。
私は立ち上がり、隣にいた少年に声をかける。
「パーティー終わりですって。あなたも帰らないといけないのではなくて?一緒に戻りませんか?」
「あ、あぁ。そうさせてもらいます。」
会場に戻る間も私と少年は会話をすることはなかった。
ご拝読ありがとうございました。
やる気にもつながるので、面白いと思っていただけましたら評価・感想のほどお願いいたします。