黒炎の魔女とその後の国々
前世の事を思い出したアシュリーは、死後どのように世界は変わっていったのかとても気になった。
そばには必ず侍女がいるために一人になることができない。書庫に行きたいって言ってもメイドがダメだという。代わりにと絵本を持ってきてくれるが違うそういうのじゃない。
アシュリーは考えた。
そして今、歴史を知るために寝静まった屋敷の中を一人、月明りを頼りに書庫へ向かっている。
(どうよ!この私の完璧な作戦。私が書庫に忍び込もうだなんて誰も考えつかないでしょう!!)
アシュリーは遂に書庫にたどり着いた。子供の身には大きすぎる扉を開き中へ入る…。ドアが開く音が廊下に響いていることを忘れて。
黒と赤で交互に装飾された本を手に取る。
(これだわ)
丁寧に装飾された本は探していた歴史の…レジーナについて書かれている本だ。
「その本が読みたかったのか?」
「・・・」
すっと、肩に手を置かれたことで私は背後の人に気付く…と同時に飛び上がった。
「ぅひぁう!?」
「ぷっくくく、驚きすぎだ。悪いことをしていた自覚はあったんだな?」
「お、お父様?」
レジーナについて書かれている本に夢中になっていた私は、お父様の接近に全く気付けなかったのである。書庫のドアは開いており、外からはわずかな光が見える…これ、怒られるやつ?厳しめの?ぇ、ヤダ
「ぇ、ええとですね。これはその…」
「そうだな。とりあえずお茶でも飲もうかアシュリー?」
お父様に連れられて向かった先にはお母さまがいた。
「さて、アシュリー、どうして、こんな夜中に、書庫に、いたのかな?」
区切り区切り、聞き逃さないようにと配慮されて質問をされる。コワイ
「き、きになったことがあって・・・その、魔女の…」
「魔女ですって?どうしてそんなものを…」
魔女と聞いてお母様がまぁっと口に手を当て驚く。
「魔女か…どうして魔女が気になったのかな?」
「だ、だって魔女はいくつもの国を滅ぼしたのでしょう?なんでかなぁって思って、その…歴史書でもみれば分かるかなって、おもっ、、て?」
「なるほどな。ならどうして私に一言いわなかった?…よりによってこんな夜更けに盗み入る様な真似を?」
「書庫に行きたいって言っても駄目だって。代わりに絵本持ってくるから…」
「なるほどな。そうか分かった。魔女のことを知りたいんだよな?書庫で本読んでもいいから、こんな夜更けにこそこそしちゃだめだよ?分ったかい?」
「うんっ!」
なーんだ、入っていいんじゃないかっ♪最初からお父様に言えばよかったわ。こんなにこわ、怒られることもなかったのに。
ルンルン♪と部屋に戻るアシュリーにメイドが付き添う。部屋から出ていくのを見送った2人は椅子に座り直しお茶のお代わりをする。
「子供はとても不思議だ。何を考えているのかわかりやすいかと思えば突飛な行動をする。今夜だってドアの開く音がしたから何事かと思えばアシュリーだったわけで。」
「本当ですね。それでも私、すこし嬉しいのですよ?生まれたばかりの頃はあまり泣くこともなく、本当に将来が心配になっておりましたの。夜更けではありますが、一人でこんな事ができるのだと。」
「あぁ、アシュリーは元気に育っている。しかし、魔女か…。どうして魔女が気になったのか。普通怖がる話だろうに…。」
「私も小さい頃は怖かったものです。早く寝ないと魔女が来るわよってお母様に言われて。」
「俺もそうだった。怖がらないどころか興味を示すなんてな…。本当、子供というのは不思議だな。」
「そうですね。ふふ」
その後も二人のお茶会は続いた。控えていたメイド達は、だんだん2人の世界に入っていくのだが、夜更けに起こされたこともありそばに控えていたメイドから、続きは明日にしてくださいと言われしぶしぶ真夜中のお茶会は終わった。
翌日以降、お父様の許可をもらった私は1日の大半を書庫の中で過ごしている。私による被害やその経緯の推察など、いろいろな意見が書かれていたりしてとても新鮮であったために様々なレジーナに関する書物をあさるようになったからだ。当時の記憶…黒炎を出した日のことは鮮明に覚えている。様々な推察があるが答えは簡単。”愛する人を失ったことによる絶望”
しかしそういった手篝になるものは燃やし尽くして灰にしていたために、実は魔術実験の実験体だっただの。悪魔と契約しただのといった推察やそれに似たような推察が多くみられた。
レジーナが討伐された後のことだが、レジーナによって滅ぼされた国々の大地は一面焼け野原で草1つも生えていない状態だったらしい。そこへ冒険者らが1つ1つ数は少ないものの、何年もかけて苗木を植えていったことで200年経つ頃には大森林と呼ばれているらしい。
神聖歴1200年を迎えた年には、大森林で魔物大量発生と呼ばれるものが起きた。これを沈めたのは冒険者たちであった。その中でも他の追随を許さない勢いでモンスターを討伐したパーティーに周囲の国々は大森林の半分の土地を与え、そこに国を新しく作ることを許可したという。その国の名は“ラタル”という。
実質、スタンピードが再び起きないよう、管理の意味を込めた丸投げである。勿論、冒険者から一国の王となった初代国王たちはそのようなことは知らない。
起国当時は、新たな土地にできた新しい国というのもあり国とは言えど、大森林の半分でありながらパーティーメンバー以外、国民は存在していなかった。
それでもかの国は、難民を受け入れることにより国を存続させることになる。
また、レジーナは炎系統しか魔法を使えないことから、世界の中でも群を抜く魔力の持ち主でながら、序列は1桁もなかったということから、この序列には大きな間違いがあるとされ、魔力量を含めた序列に変わったとか。
(ふふ、暴走した序列77位の私に序列1桁の魔導士さえ灰にされたものね。実際、私はどれくらい強かったのかしら?もしかすると頂点だったり?うふふふふ)
序列が見直されたことが書かれた書物を見つけ私は一人で笑う。そばにいたメイドたちがついにお嬢様が壊れた!と即お父様に報告してくれちゃったおかげで、たまには外でも遊ぶようにと言われてしまい、書庫には1日3刻までになった。ナンテコッタ
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