お嬢様ピンチ!野獣と化した病弱猫耳メイド!
「フーッ! どうするんですか、お嬢様! フーッ!」
ルナは怒ったつもりで、精一杯アレアを威嚇する。
「あちゃー。やっちゃった。 テヘッ♪」
「てへっ! じゃにゃいですにぁ! これはもう……じょ、冗談じゃ!」
「うるさいわね。やっちまったモンはしょうがないでしょ? それに、慌てたって状況が変わるわけじゃないわ」
大切な壺を完全に割ってしまったというのに、驚くほどアレアは冷静だ。たじろぎつつも、ルナも彼女に合わせて冷静になろうとした。
「ッ! それは……そうですが……」
「アンタが可愛くなかったら、全部責任なすりつけて終わりなんだけど」
「お……お嬢様は最低にぁ! 鬼! 悪魔!」
「まっ、帰りましょうか」
「あっ! 待ってくださいにぁ!」
「ゴメンゴメン♪」
馬車にルナを乗せ忘れるあたり、アレアもやはり動揺しているのか、それともわざとなのか。ルナにはわからなかった。
ただ。完璧だと思われていたアレアも、ミスはするのだ。これだけは言える。
彼女のお世話をして、立派なご令嬢に育てる。それがメイドである自分の勤めだ。
貴族の面子の為にも、なんとかフォローしなくては。馬車に揺られながら、ルナは壺を壊してしまった責任を自らが取ることを考えた。
「ゴメンね。ルナ」
「お嬢様……!」
アレアは反省している。揺れ動いていた覚悟が、今、決まった。