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今日から学校と仕事、始まります。②莞

選手もまた使いよう

作者: 孤独

フルスイングが遅すぎる。

目で追えず、身体がついてこれない球だった。


「ストライク!バッターアウト!!」


かつて、最高球速158キロをマークした独立リーグの投手がいた。

若き日の彼の球を打ち返す打者はそういなかった。

そう、いろんな意味で。


「ボール、フォアボール」


北田弘きただひろし

右投オーバースロー、速球派の投手。

平均球速は145キロ以上を維持でき、ボールの回転数も桁違いに多く、綺麗。それがノビのある球を投げる秘訣となっている。

ストレートに関しては、恐るべき才能を持つ男。

だが、


コントロールはノーコンと言っていいレベルであり、変化球は縦スライダーと、独立リーグで学んだ、力みを取るためのスローカーブ。

先発としては100球以上は投げても平気であり、中継ぎとしても、連投や回跨ぎもなんなくやる。スタミナと精神力はかなりのものだが、調子にムラがある。その調子はコントロールを占める。

強豪校で野球をしていたわけではなく、ほとんど無名の学校からの入団であり、試合経験不足と時折ルールを忘れる、牽制やクイックも下手と知識や技術も乏しい。


守備面もかなり酷いと……。よく言えば、素材型の投手だった。

苦手をある程度克服すれば、大化けする器があった事には違いなく、今から10年後以上先ではそんな彼が、セーブ王を獲得するという信じられない記録も出す。


そんな北田が独立を経て、プロへと入団。そこから3年後ほどのお話。


◇        ◇


選手に色々あるように、彼らエゴが集ったチームにも色々とある。


「じゃあ、来年は北田をあのチームにだけ、登板させましょう」


昨シーズンから一軍デビューと一軍帯同となった北田。

独立では便利屋枠での活躍が評価され、プロでも中継ぎメインで登板していた。そんな彼が今シーズン、先発を任される話になった。

回跨ぎに加え、速球を活かした高い奪三振能力。

ビハインドや敗戦処理としての能力はこの時から優秀であるが、できる事なら先発で使いたい。ただ、いかんせん。北田の投球は極端過ぎる。良い時と悪い時の差を無くせれば先発一本と絞り込みたい。


「年間戦うチームにとって、イニングを喰うってのは大事ですから」


2年前、二軍戦で3完投をマーク。昨シーズンの序盤でも、二軍で1完封と。先発能力の高さが伺える結果を出していた。先発と中継ぎ、両面に適正があるのはチーム事情としてありがたい。

だが、リズムを崩すと試合を崩壊しかねない投球を持つのも事実。今シーズン、北田の3敗の全てが1回3失点以上の大乱調によるもの。ピンチを軽々乗り切れば、どーでもいいところで四球を出し、長打を浴びての失点と……。試合中では制御の難しい選手。

ストレートのコントロールができていない時は、はいお手上げ~って、キャッチャーが万歳するほど。


このような癖を直せと言って直るものじゃない。放置しておくわけにもいかないが、大事な対処の一つにチームという中で、彼を活かせる役回りを用意することだ。

そこで選んだのは特定のチームにだけ絞った、先発登板であった。


『ピッチャー、北田』


アナウンスと同時に相手チームから嫌な顔が出てくる。


「うげっ!北田だ……」

「あいつ、嫌いなんだよな」


このチームにだけは異様に強い選手。あるいは、この選手にだけは異様に強い選手。

メタを張ったような存在は必ずいるものだ。

北田の印象は、速球派のノーコンピッチャー。投げるほど調子を上げてくるタイプ。

守備面などがまだ疎かであり、北田として嫌いな打線に俊足巧打者が揃っているチーム。選球眼が良く、ボールを見極めてくる奴が嫌い。塁上でちょろちょろしてるとムカつく。一方で、積極的に打ってくる強打者揃いのチームが大好物。純粋に力勝負が好きでありその上で勝つ、速球でストライクをとるというピッチャーの理想を模した選手のまま、ここにいる存在。

先頭打者やアウトカウントが2アウトになってると、滅法強い投手。

よーするに、打者との勝負に専念できる投手なのだ。



ドパアァァッ



「ストライク!バッターアウト!!」


ほとんどの投手が重量打線に苦戦する中で、飄々と抑え込んでしまう不思議な投手。

その要因にはその打線が非常に打ちたがりであり、選球眼も甘く、打ち損じの確率をあげているという点もある。北田がマウンドにいるとき、このチームの走者の多くは、さほどイラつかない、気にもしない点も相性が良かった。北田のノーコンの部類も、”いつ”、”どこ”に行くか分からない点が多く、一発を浴びる長打よりも打者に当てている確率もしばしば。ある意味、ちょっと怖い。

1人の打者に何球も投げる事にも嫌がらず、むしろ抑え込む楽しみを持っている北田ならではの精神もあって、今シーズン2桁勝利をマークする。



12勝4敗。

シーズン150奪三振をマーク。


内、8勝が1つの球団を狙ったような先発起用で勝ちとったものだ。

自分の欠点が、ときには功を奏する事もある。

そんなところを発見できた周囲もまた、北田と同じくらいの功績を出したと言えよう。



遅くなりましたが、福井選手の契約更改がされて良かったです。

減俸でしたけれど、大石選手は引退でしたしね。

トレードもありましたが、勝ち越しで終わった今シーズン。派手な結果を残したわけではないですが、今シーズンは、西武に3勝したところが評価されてたみたいです。

なんで、あの山賊打線を相手に3勝できるでしょうか?って、思いたくなる投手でもあります。対チーム防御率で見ると、凄く不思議に思います。ホントに西武だけ抑えてる。

そこが魅力ですよね。

弱いところに弱く、強いところに強いタイプ。結果だけで見ると、弱いチームには自信をつけさせ、強いチームは虐めるスタンスが好きです。かつては、メッセンジャー選手や菅野選手と投げ勝った選手ですしね。そーいうのがあるかもしれませんね。

まぁ。そんな感じより、今シーズンは単純な相性と思いますが。

やっぱり開き直ってると、強いんでしょうかねぇ。


来シーズンも楽しい試合、見させてください。


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