006取引
0006取引
2017年12月12日。
総理官邸に再びウグイスが現れた。
次回の話し合いの約束はしたものの、日時は決めていなかった。
もうこのまま来ないんじゃないかと期待していたが、とうとう来てしまった。
阿部総理はすぐに麻宗を呼び、その間ウグイス、もといメルオル船長に待ってもらった。
待ち時間の間、メルオル船長と当たり障りの無い会話をしながら、どうやってフィクションを説明したものかと考えていた。
麻宗は1時間程で到着し、
「どうも、初めまして」
と、笑顔でメルオル船長に挨拶をしている。
一応資料は用意してあるのだが、どうやって説明したものか。
それに、この資料は少しおかしいのだ。
無理だ、ではなく、こうやる。そういう旨の説明が多い。
これはどういう事なのだろうか。
失敗した試みも多く書かれているので、まずこの資料を見せて……
「では、日本国の返答をお聞きしたい。ゲヒルンフレームの技術を提供して頂けないだろうか……」
メルオル船長の言葉に対して、阿部総理が口を開いた時だった、
「まずはこの資料を…… ?」
これから大事な話が始まるというのに、一人の男が麻宗に歩み寄り、耳打ちをした。
阿部総理は口ごもってしまう。
次に、麻宗は、
「ちょっと外と連絡取りたいんですが、よろしいですか?」
とメルオル船長に問い、
「はい」
というメルオル船長の許可を得て、席を立ちもせず、その場で携帯電話を取り出して電話を掛けた。
麻宗さんは何をやっているのか。
要人の会談でちょっとありえない行動に出ている麻宗に、阿部総理は完全に固まっていた。
そんな阿部総理の驚きを他所に、
「ホントか? 光ったのか? 赤? 緑? ホントかよ! 飛んだ? なんでだよ!」
麻宗はゲラゲラと笑いながら話をしている。
「おう、おう、じゃあな」
そして、通話を終了し、携帯電話をポケットに戻した。
「総理、ちょっと私が代わってもよろしいですか?」
資料を渡そうとしていた阿部総理を制した。
その自信に満ちた表情に、阿部総理も乗った。
「はい。任せます」
「どうも。私ゃこのゲヒルンフレームの責任者でしてね。メルオル船長、技術の提供はできません」
麻宗の言葉に、ウグイスドローンがうなだれる。
「そうですか…… それは残念です……」
だが、麻宗は続けた。
「しかしね、現物を貸し出す事はできますよ。そいつでどうか、交換条件を認めてくれませんかね」
ウグイスドローンの顔がパッと輝いた。
それから少しだけ話を詰めた。
いかんせん、ゲヒルンフレームとその操縦者を送るため専用の輸送船が要る。
もっと話を詰めるのは後日にしようと持ちかけ、今度はちゃんと日にちを決めた。
ウグイスドローンが去った後、
「麻宗さん。ヒヤヒヤしましたよ。ハッタリで交渉なんて……」
総理は、麻宗がとりあえず交渉を引き伸ばしたのだと思っていた。
「いや、ハッタリじゃねぇぜ」
「は?」
「できちまったんだよ。ゲヒルンフレーム。いや、スサノオっていうみたいだが」
阿部総理は、豆鉄砲を食らったような顔で固まった。
「……麻宗さん、いくらなんでもそれは……」
「ま、明日見に行ってみようや」
そして二人は、空を飛ぶゲヒルンフレーム改め「スサノオ」を見て度肝を抜かれたのだった。
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