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005神々の輝き

0005神々の輝き

 

 


 時は少し遡り、11月の頭ごろの事だった。

 

 結局どの神が加護を与えるのか決まらず、このところ手隙になっていた多くの神々が開発チームに加護を与えた。

 リスク分散でもある。

 

「加護は与えたが、この、げひるんふれーむ? とやらは無理ではないか?」

「むりかね?」

「我が子らの技術ではまだ無理であろうな」

「1000年で作れそうか?」

「それだけあればなんとか…… いや、わからんな。そもそもこれの『せってい』は、作った当人達でもわからんとなっている」


 うむうむと唸っている神々の中に一石を投じる声があった。

「じゃあゲヒルンフレームの神様を迎えればいいんじゃないですか?」

 ウォシュレットの美少年神だった。

 

「なるほど、直接神の加護を与えるわけか」

「それならばいけるかもしれん」


 神々もまた、いつの間にか自分たちの立場をすっかり忘れてしまっていた。

 

「アニメの神は少し前からこの国にいるはずだ。来ていないか?」

「来ていませんね。まだ秋葉原でしょう」

「あやつ、このごろ縁結びの力を得たというのにまったく。とりあえず使いをやれ」

「アニメ作品の中の器物を神に迎えるとなると、アニメの神の加護は当然として、他に必要なのは何でしょう?」

「難しいな。作品そのものはともかく、細かい部分だ。力が足りんかもしれん」


 神々もまた、上映会を開き、ガン◯ムを見ていた。

 初代劇場版三作と、逆襲のロット、そしてUCである。

 途中、ロットの主張は正しいかどうかで論争が巻き起こったが、現在はなんとか元の目的に戻ってきている。

 その目的自体が実はズレていると気付いている神はいない。

 いや、意図的に気付かない様にしているのかもしれない。

 神々も楽しい事は大好きなのだ。

 

「神に迎えるにはおそらく力が足りないでしょう」

「アニメ作品から神になったモンおったよな? ちょっと話聞いてみよか」

「ノノちゃんは?」

「きてませんね」

「ノノちゃんって、誰ですか?」

「ほれ、この間挨拶来とった機械のコや」

「本名は… ナナコ?」

「七号ですよ。あの、髪が赤い」

「ああ、あの可愛らしコか」

「ノノちゃんダメやで。あのコが神として力を使えるんは一万二千年後や」

「でもとりあえず呼んでおこう。話を聞くだけでも良い」


「ほれ、あの魔法少女の……えっと…… あ、そう、まどかちゃんや! まどかちゃんおらんか? マドカちゃんかなり力あったはずやで」

「あー、無理ですよ。まどかちゃんはちょっと前にお友達に呼び戻されてしまいましたよ」


 その後も色々と話合ったが、結局上手い方法は見つからない。

 

 そこで口を開いたのは、またウォシュレットの美少年神だった。

「直接ゲヒルンフレームの神を迎えなくても、ゲヒルンフレームを神の管轄において、無理やり分霊入れちゃえばいいんじゃないですか?」

「なるほど」

 しかし、だとしたら誰の管轄に置くかで今度はもめた。

 この方法はかなりの力が必要で、ここにいる神々ではなかなか難しい。

 

 厠神が「どれ、私がやりましょうか?」と言ってきたので、皆で止めた。

 

 

 

「なぁ、皆んなもうわかっとるやろ?」

 一人の神がつぶやいた。

「まぁ…… な……」

「せやけど…… それは……」

 縁の無い所に無理やり分霊をねじ込み、奇跡を顕現させる程力がある神。

 

「スサノオ兄さんしかおらへん」




 ・・・・・

 

 

 

 

 スサノオは引き篭もり中である。

 妻の奇稲田姫(くしなだひめ)は、最初のうちは落ち込んでいるスサノオを構ってくれていたのだが、最近はBLに夢中だ。

 地上に降りてからは色々と人間に手を貸していたが、それでも心の空白は埋まる事は無かった。

 姉上を困らせてしまった。

 粗暴な行いを反省し、心を改めてみたものの、やがて人も神の手を離れていった。

 それは喜ばしい事なのだが、やはり寂しい。

 

 なんだかボンヤリと日々を過ごす内に、出雲から出れなくなっていた。

 上の神々はスサノオの渡航を禁止しているが、渡航どころか国の中を旅する気もわかない。

 

 そんな折、靖国から使いが来た。

 なんでも、宇宙人が来たらしい。

 存在しない技術を求めているが、その引き換えに貰える技術で、この国はより栄える事ができるという。

 このごろこの国の外は物騒な事になっているらしい。

 備えは確かに必要なのだが。


 スサノオからしてみれば、突然の事でどうしたらいいのかわからなかった。

「その宇宙人と戦争するのであれば力を貸そう」

 適当にそう言って追い払った。

 

 しかし、今更になって後悔している。

 渡航禁止の身だが、宇宙は大丈夫だろう。

 

「この空の向こうには他の神も存在するのだろうか」


 スサノオはかなり高位の神だが、人間の妻を娶り、人間と長く暮らしたため、付喪神や土地神、人と関わる多くの神々の様に、人間に似た考えもできる。


 それは好奇心や憧れという感情だった。

 

 高天原と重なっているこの国から宇宙に飛び立って、他所の惑星に降り立ったなら、そこにも高天原と同じ様な場所が重なっているのだろうか。

 あったとして、そこに住まう神々はどの様な姿で、どの様な力を持っているのだろうか。

 

 ゴロゴロと体を揺らしていると、来客があった。

 

「厠神か。どうなされたのだ」

 立場上スサノオの方が高位だが、この厠神というのはスサノオにとっても尊敬に値する神である。

「スサノオさま。重ねてのお願いになってしまいますが、どうか、子らに加護を与えてください」

 ゆっくりと厠神が頭を下げる。

 

 願ったり叶ったりであった。

 厠神が来たならば、一度は蹴った願いを聞届けるのにも十分な名目が立つ。

 


 厠神が帰った後、BLゲームをクリアしてホクホクの奇稲田姫が

「あら、随分と楽しそうな顔をしていますね。何かあったのですか?」

 とスサノオに声を掛けた。

「ああ。あったぞ。楽しい事が」

 スサノオはニヤリと笑う。

「姉上に話を付けてくれぬか。お前の言葉なら姉上も聞いてくださる」

「どの様な事を?」

「外に出ても大丈夫かと」

「あなたは渡航禁止だったのでは?」

「他所の国ではないよ」

 スサノオはすっと、腕を上げた。

 指先は天をさしている。

「宇宙だ」

 

 

 

 

 高天原で話し合いがあった。

 分霊とはいえ、スサノオを宇宙に送り、そこに神が在ったならば無礼に当たらないだろうかという声もあったが、アマテラスの説得によって、なんとか許可を取り付ける事ができた。

 アマテラスはスサノオを不憫に思っていた。弟は気付いていないが。

 

 

 かくして、スサノオは地上のそのゲヒルンフレームとやらに分霊を仕込んだ。


「しかし…… げひるん? ふれーむ? 外来語ではないか。おい、誰ぞおらぬか! 使いを送れ」

 

 

 

 

 ・・・・・

 

 

 

 

 11月の半ばごろ、横縞鉄鋼にサイと名乗る少年が現れた。

 

 発注元が連れて来た「パイロット」らしい。

 

 最初は訝しまれたが、人当たりの良さもあって、計画チームに溶け込むのに時間はかからなかった。

 

 そのサイが「このゲヒルンフレーム、名前はスサノオにしましょう」と提案した。

 そういえば、この実験機の名称が無い事に気付き、誰も、特に反対する事無く計画チームは了承した。

 ただ、発注元からの使いは、名称を付ける事にストップを掛けて、上に確認した。


 一日の内に許可が出たのだが、この妙な齟齬から、サイは発注元とは少し違うところから来ているのではないかと計画チームの面々は感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 


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