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世界を旅した少女の話  作者: 空猫このは
14/29

第13話「護衛の極意」

約束の時間まで寝ようと思っていたがどうも寝付けず、布団の上でごろごろとしていた。

今にして思えば、配達の仕事の方が安全だし確実だ。


土地勘がないので配達場所が分からない事態になったとしても、帝国の騎士や警備兵達が歩き回っている。道を聞ければこちらの物だ。


それに比べ、今回初仕事が護衛だ。

護衛が必要となれば当然盗賊や魔物がとの戦闘がある可能性は高い。


「...はぁ、怖いなぁ。でも約束だし仕方ないかぁ...。手違いとはいえ、まさか護衛の仕事になるなんて...。でも他にも居るよね。私だけって事はないはず!」


他人任せにしようという考えが丸見えな発言である。しかし、シャルルにとって一人よりは皆で戦った方が安全だという認識だ。


それを痛感したのはやはりゴブリンの親玉との戦闘だろうか。始まりの森での戦いだったたから生きていたような物で、魔物が多い地域や人通りの多い場所であれば、シャルルの命は無かっただろう。


「頑張ろう、しっかりしないと、あのおじさんに怒られちゃうもんね」


気合いを入れて、立ち上がる。

そして剣を手に取り手入れを始めた。まだ一度も使ってはいないが、逆に言えば、きちんと使えるかどうかチェックしておく必要がある。


刃に刃毀れは無い。錆も無い。

太陽の反射でシャルルの顔が映り込む。

その顔は、やる気に満ちた顔だった。


その日の約束の時間。シャルルは荷物を纏め、宿を後にすると、待ち合わせの場所へと向かった。依頼主はケルト帝国随一と謳われている大きな刀剣屋の店長だ。


お店に入り、店の人に事情を説明すると、奥へと案内され裏口へと出た。そこには6人の冒険者と見られる男達と、店長と思われる人が準備を進めていた。


「あのー___。」

と声を掛けた瞬間、準備を進めていた全ての人がシャルルを見た。何これ怖いと呟きつつ愛想笑いを披露した。


「おぉ、あんたが依頼を受けてくれたか!!ははー最初話に聞いたときは本当かと思ってたんだが本当に若え女の子じゃねーか!!」


ガハハと大きな声で笑いながらシャルルの背中を叩く大男。何を隠そう、この方が刀剣屋の店長だ。


「ちょっ、痛いですってば!」


「すまんすまん!!まさか本当に女の子とはなぁ!?所であんた名前は?」


「私の名前はシャルロット、シャルルって呼んでくれたら嬉しいかな」


「シャルロットね!!良い名前だ!確か何処かの国の英雄がシャルロットって名前なんだ!!縁起の良い話だ!!」


「そ、そうなの?聞いたこと無いけど...」


本当の話だとしても、今ここにいるシャルロットは英雄とは程遠いただの女の子。何か特別な力があるわけでも無く、爆裂魔法が使えるわけでも無い。少しの剣術と少し魔力の使い方が上手いと言う、この世界なら何処にでも居る少女だ。


「おうともよ!!伊達に商売やってねーからな!!所でシャル!!あんた冒険者なんだろ!?こいつらもそうなんだ!!今回の仕事仲間だから、仲良くしてやってくれ!!」


内心またかと呟いた。シャルルと呼んでと言ってまともに呼ばれた例しがない。アル君はシャルルお姉ちゃんと可愛く呼んでくれたと言うのに...大体は呼びやすいのかシャルと呼んだ。まぁ別に?構わないけど!?


「ど、どうもよろしくね?」

六人の男に囲まれながらペコリと挨拶をすると、「頼むぜシャル」「はは、護衛の仕事が増えたな!」「いざとなれば俺達が守ってやるよ!」等...戦力として見られていないようだった。


「むぅ!私だっていざとなったら戦うんだから!」


と少しムキになって吠えたところで、帰ってきたのは笑い声だけだった。そんな状況でも、シャルルは少し安心していた。少しだけ頬が緩み笑顔になる。


もっと厳ついと言うかなんというか__。顔に傷が入っている様な男達が集まっているのでは!とかもっと重たい雰囲気の中で仕事するのでは?!等思っていたからだ。これなら仕事も無事にこなせそうだ。



そんな穏やかな雰囲気の中、準備は進む。最後の大きな木箱を馬車の荷台に運び入れ縄で縛る。


シャルルも手伝おうと思ったのだが、嬢ちゃんには持たせられねぇだの商品落としたら買い取りだぜ?だのこんな重いもんは嬢ちゃんには無理だだの__。他の冒険者の人達にからかわれる始末だった。


まぁ実際持てたのは夜食としてと店長が用意した食べ物位だったが...。



「さてさて、そろそろ出発するぜ!!?忘れもんはねーな!!?」


「あんたが納品書の確認しっかりやってりゃ大丈夫だよ。積み忘れで戻ってくんのはごめんだぜ?」


「はは、それは言えてる。頼むぞ本当」


「このガルド商店店長様がんなドジかますわけねーだろうが!!」


「とか言って、先日に引き返し___」

 

「んじゃ、出発ーー!!!」

自分の失態を暴露されそうになった瞬間、見事な大きな掛け声により掻き消され馬車は動き出した。


シャルルや他の冒険者達は、荷台の後ろにあるスペースに座る。シャルルの護衛のイメージは、横に並んで歩いて行くものと思っていたため少し拍子抜けだった。荷台に乗って揺られるだけでお金が貰える仕事ならどれだけ楽なのだろうか!!しかも旅人のシャルルからすれば送迎みたいなものだ。今は偽物の冒険者としてだが__。


「ねぇ、もしも何も無く向こうの国に着いても報酬って貰えるの?」



「あぁ、貰えるぜ?でも大抵は魔物が出るし、盗賊も出て来る。何も無いなんて滅多にねぇさ。それに、何も無けりゃ俺達のようなギルドに護衛は頼まねぇ。変な望みは捨てるこったなシャル」


なんと...。少しだけ残念な気もするが、確かにそうだ。何も無いならそもそも護衛は頼まない。


「え?貴方達ってギルドなの?冒険者じゃなくて?」


「あぁ何か勘違いしてるな。一応冒険者ギルドとして登録はしてるぞ?ただケルト帝国の周辺は、既に殆どの地域は探索済みで未探索の土地へ出るような仕事がねーのよ。だからこうやって、護衛として仕事やってんだ。」


「なるほどねー...冒険者も地域によっては仕事無いんだ。」


「それでも俺達には冒険者としての誇りがある。魔獣退治や魔物退治はなんのそのってな!」


そんな事を話しているうちに、日は沈みケルト帝国の町並みが赤く染まる。その様子をシャルルは眺めた。飛行艇とグルメの帝国。美味しい記憶が蘇る。チンピラやその他の事は今はいい。楽しい記憶を胸に刻み、国を囲む城門の外へと、馬車は踏み出していったのだった。


その日夜。

馬車はケルト帝国から北西へと進んでいた。

隣の国ヴェデルティア王国までは半日はかかると言われている。その間商人がよく使うと言われる道を進むのだが、やはり魔獣や魔物が彷徨いていた。


丘に差し掛かる少し前__。

「よし、此処からは外にでて護衛だ!!馬を狙われちゃいけねぇ!!周囲の警戒を怠るなよ!!」と店長の大きな声が響く。


「そんな大声出さなくても聞こえてるっての...シャル、あんたは俺とジャックで馬とあのおっさんの護衛だ。前に行くぞ」


「う、うん」


荷台の中で、初めての護衛であることを伝えていたためギルドマスターと一緒に護衛することになった。


基本二人ペアで馬と店長の前、荷台の左右、後ろにつく。こうすることで馬車の周囲を見渡す事が出来る。ペアで見るのは、一人では対処仕切れない場合があるため。とのことだ。最悪、一人がやられたとしてももう一人が皆に知らせられればいいと。


今の護衛メンバーは、シャルルを含めて七人居る。そのため、三人で馬と店長を護衛する形となった。


「なぁシャル。お前は戦えるんだろ?一応俺がついてるが、守る優先順位で行けば店長が最優先だ。シャルの事までは守れるかわからねぇ。だから自分の身は自分で守る、いいな?」


「だ、大丈夫だよ...!魔物との戦闘は慣れてるし」


「そうか...んじゃ、もしも何かを見付けたら大声出せよ。皆との連携も兼ねてる。間違ってても良いから、怪しいと思ったら声を出して報告。わかったな?」


「了解、任せて!」と、元気良く答えたとはいえ、実際シャルルの手は震えていた。それを隠すように振る舞う。



そう、ここはもうシャルルの知る場所では無い。初めての場所だ。きっと見たことの無い魔物が居る。そしてローレンスとカイウスが話していた事もある。国の外は間違いなく危険なのだ。


鞘を握り、剣を握った。まずは震えを止めなければ...。大丈夫...大丈夫...。1度は死線を潜り抜けた。落ち着いて深呼吸を...。それから辺りの警戒を...。


「居たぞ!正面に魔物だ!」

ジャックの声が聞こえ、シャルルは心臓が止まるかと思う程にドキッとした。


ジャックは走り出し、一太刀浴びせる。

「魔物撃破、まだここいらの魔物じゃ話にならねーな」と余裕の表情だ。シャルルの出る間もなく、戦闘は終わったようだ。


「はぁー、緊張するなぁ..」


「当たり前だろ?シャル。護衛する奴が緊張してなきゃ意味ねーんだから。」


「はは...返す言葉も見つかりません」


「緊張するのは良いこった。ほら周囲の警戒!」


またいくつか、魔物の目撃と撃破を繰り返し順調に先へと進んでいった。シャルルも少し慣れてきたのか、魔物を見付けては声を出す。それを聞いて、ギルドマスターが魔物を倒すといった具合だ。


そんなこんなで数時間、ゆっくり歩き進む一行は小高い丘を登り切った時足を止めた。


「ここで一端休憩だ!!まだ先は長いからゆっくり休んでくれ!!」と大きな声がまた響いた。魔物が集まるのはこの声が原因じゃ無いかと茶化を入れ、また笑い声が生まれていた。


「ふぅ...」とシャルルはため息をついた。ギルドマスターが隣に座り、シャルルにコップを手渡した。中には珈琲が入っている。ありがとと一言伝え受け取ると一口飲む。砂糖もミルクも入っていないブラック珈琲だが、今は丁度良い。


「__やっぱり怖いか?」


「うん、少しだけ。魔物との戦いなら何とかなりそうなんだけど...」


「人とは戦ったことが無いから分からない。か。対人戦は確かに慣れないと難しいかもな...安心しろ。シャルに人の命を奪えとは言わねぇよ。」


「ねぇ、マスター。」


「ん?」


「ありがと...。」

心強い言葉だった。不安な心を溶かしてくれるような、安心できる言葉だ。きっとこのギルドの人達が優しい人達なのは、ギルドマスターの優しさに惚れたのだろうなと思う。


「お熱いねぇお二人とも。そーいうのは月光花が咲く丘に着いてからじゃねーと」


「な?!そんなんじゃねーよ!馬鹿たれども!シャルも勘違いすんなよ?俺はお前が初めてだからって言ってたからだぞ?」


「はいはーい、分かってるってばー。」


「絶対分かってねーだろシャル!」


周りには魔物が彷徨いていると言う状況なのに、辺りはほんわかとした空気が流れていった。


「ねぇジャック、さっき月光花って言ってたけど、それは何なの?」


「あぁ、この丘の向こう側に、月が出ると咲く花があるんだ。月の光を浴びてマナが発生するんだと。薬草としても有名だが、何せ凄い綺麗なんだ。花が月のように青白く光るし、マナが発生してるから地面が少し霧がかったようになる。」


「それって見れたりするのかな!?」


「ははは、嫌っていうほど見れるだろうさ。これからその草原へ行くからな」


「本当?!凄く楽しみかも!」


「...はしゃぐのは良いが、仕事わすれんじゃねーぞ?シャル」


「ぜ、善処します...」


そろそろ出発するぞと大きな声が聞こえ、一行はまた歩き出した。まだまだ護衛の本番は、これからである___。





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