古都最強の剣士達
紺野雲黒斎は刀を抜いて構える。
「古都でただただ忍んで鍛え続けるだけが我が生涯だと思っていたが、僅か十代の若者達と本気で渡り会えるとは何という晴天の石礫。
何対一でも構わん、全力でかかってこい!」
紺野雲黒斎に魔術が効かないのは既に確認済みだ。
俺達も剣を構える。
レナは下段、サニーは脇構え、俺は正眼に構える。
俺が積極的に仕掛け隙を作る。
その隙をつきサニーが切り上げる。
サニーの剣は紺野雲黒斎の左腕をかすめて出血させる。
紺野雲黒斎は左腕から出血しているにもかかわらず笑顔だった。
「若いのに素晴らしいな。
才能だけでなく努力もしてきたのであろう。
だが!」
紺野雲黒斎は剣を上段に構えた。
「避けろサニー!」
紺野雲黒斎の鋭い右袈裟斬りにサニーは反応出来なかった。
間に合わないと思った俺はとっさに風の魔術でサニーを吹っ飛ばした。
「魔術にはそういう使い方もあるのか?
やるのう。」
紺野雲黒斎は俺を睨む。
「脇構えはやめろサニー。
もう既に間合いも掴まれているし、カウンターも取れない!」
脇構え。
それは相手に剣の長さを、間合いを測らせない為の奇襲の構え。
そして左半身を犠牲にする事によりカウンターを取る事が出来る構えだ。
「まさか最初一振りで間合いを…、それにさっきの袈裟切りはシャレにならないわ。」
サニーは脇構えを諦め下段に構える。
「お嬢ちゃん最初の一太刀は見事であった。
並大抵のものでは避けられないじゃろう。
しかし、左腕を斬らせたのはわざとじゃ。
そこの若いのが言う通りもう間合いは把握した。
それにスピードが魅力のそなたが下段とは…。」
俺は相手が言い終わらぬうちに斬りかかる。
紺野雲黒斎のいう通りサニーの持ち味はスピードだ。
攻撃スピードを殺して防御を強化する下段など具の骨頂。
サニーは既に紺野雲黒斎に呑まれている。
この戦いでは使いものにならないだろう。
戦いを見ていたレナも紺野雲黒斎に斬りかかる。
レナと紺野雲黒斎の剣が重なり鍔迫り合いになる。
「鍔迫り合いは体格の小さいお主の方が不利じゃぞ。」
紺野雲黒斎はレナにそう言った。
まるでレナに剣の修行をつけているような発言だ。
「忠告ありがとう。
でもそれはどうかしら?」
レナはただでさえ体格的に不利な鍔迫り合い中に右手を外す。
「魔術はわしには効かぬぞ。」
紺野雲黒斎はレナの刀ごと斬り捨てる勢いでレナを押した。
レナは自ら後ろに飛ぶと同時に岩の魔術を紺野雲黒斎の剣に放った。
ゴーーーーッ!
レナの手から放たれた大岩が紺野雲黒斎の剣に向かって一直線に飛ぶ。
それはまるで隕石かと思う程の大きさと威力だ。
レナは頭が良い。
おそらく紺野雲黒斎の実力を感じ、勝てないならばせめて刀をと判断したのだろう。
カキィーーーン!
「ぬうぉうーーー!」
紺野雲黒斎はレナの岩の魔術を真っ向から受け止める。
ジャッキーーーン!
何と紺野雲黒斎は巨大な隕石の様なレナの岩の魔術を斬り捨てた。
残念ながら剣は多少傷ついたものの折れなかった。
「なかなかやるのう。」
紺野雲黒斎はまた嬉しそうにそう言った。
俺は覚悟を決めてもう一度紺野雲黒斎に相対する。
「サニーとレナの活躍無駄にはしない。」
俺は思いっきり振りかぶり兜割りを匂わせる。
紺野雲黒斎は俺の兜割りを上段右の袈裟斬りで受けてこようとする。
「レナという小娘がわしの剣を傷つけたと見ての兜割りか!
刀ごとわしを斬り捨てるつもりかもしれんがさっきの小娘の魔術を見てなかったのか?
剣は使い者に…、ぐふぅっ。」
俺は兜割りの途中から首と上体を捻り胴を斬ったのだ。
そして俺は覚悟を決めて次の衝撃に備える。
ズシャァアーー。
そう紺野雲黒斎が放った袈裟斬りが俺の肩をとらえたのだ。
「まっ…まさか、わしの袈裟斬りによりも早く胴を斬るとは…。」
「サニーとレナの活躍を無駄にはしないと言っただろ?」
「そうか…、最初からわしが兜割りを受けるのを見越して…、相討ち覚悟だったのか…。」
「サニーとレナとの戦いからお前が兜割りを受けると判断して最初から胴を斬るつもりだったのは正解だ。
だが、相討ち覚悟じゃない。
サニーが左腕を斬りつけ、レナが刀を傷つけたから先に斬りさえすれば、生き残れると判断した。」
俺は自分の魔導で自分の傷を治療しながら説明した。
「なんと!これが若い世代の力か…。
良い戦いをありがとう。
わしはもう疲れた…。
すまないが、介助を頼む…。」
そう言って紺野雲黒斎は上着を脱いで腹に剣を構えた。
俺は剣を構え紺野雲黒斎の最期を看取った。
剣士が自分の最期を決めた時、介助を頼む相手は実力を認めた相手だけだ。
俺は紺野雲黒斎の遺体に手を合わせる。
そして俺達は穴を掘って三人の雲黒斎を埋葬した。
古都最強の剣士ここに眠る。
俺達は再び三人の剣士の墓に手を合わせる。
「本当に強かったですね。」
「ねえフレズ。
まだ雲黒斎の名を持つ刺客はたくさんいるのに、古都最強の剣士とか書いちゃって良かったの?」
「これからそいつらと戦うんだぞ。
こいつらより強い剣士がそんなにゴロゴロいてたまるか。
こいつらが最強でいい。」
レナはもう一度墓に手を合わせる。
マジで三人が最強でいてください。
と願いを込めて。




