雲黒斎達の実力と性格。
翌日準備を終えた俺とレナとサニーは馬車に乗って城門を出る。
「うおーー、フレズベルク大隊だ!」
「キャーーー、フレズベルク様ーー!」
「レナちゃんこっち向いてー!」
「キャーーー、今日はサニー様も一緒よ。」
相変わらずこの街の人間はノリが良い。
サニーに女性ファンが多いのは謎だが、こうして応援されると俄然やる気が出るのは間違いなかった。
それに前回の旅立ちとは違い今はフレズベルク大隊。
今回は俺の私兵フレズベルク愛の怒兵達も一緒でもちろん馬車にも御者がいる。
街の人々に手を振っていた俺達は街の出口の所にきて馬車の荷台に入る。
「今回はえらく快適だなぁ。」
「ちょっとフレズ!
これから戦闘に行くのよ。
だらしなくしないでよね。」
レナが俺のだらけた態度を指摘して時だった。
突然馬車が止まる。
俺は軽く舌を噛みかけてしまった。
どうやら街の門を出た所で一度止まるのが俺達の宿命らしい。
「何事だ!」
と言いながら俺は検索魔導で状態を確認する。
「それが敵襲なのですが…。」
俺の検索魔導に大きな反応が5つ引っかかる。
「サニー見えるか?」
「あれは赤井雲黒斎と白井雲黒斎と青井雲黒斎と黒井雲黒斎と紺野雲黒斎だね。」
なるほど身バレしている五人で先遣隊と言う訳か…。
それにしてもあいつらはバカか?
なんで五人だけで来ているんだ?
そんな俺の疑問は近づくにつれすぐに解消した、悪い意味で。
こちらの愛の怒兵達の矢を五人は全て斬り落としていた。
かと言ってたった五人剣士ではこちらに攻撃を仕掛ける事は出来ない。
フレズベルク愛の怒兵達だってそれなりの手練れなのだ。
いくら格上相手とはいえ五人の剣士相手に距離を保ちながら矢を放つくらいはできる。
見ているだけでも分かる不毛な戦闘が続く。
あえて言うならこちらの矢が少し減っていく程度だ。
「サニー狙撃の準備を。
レナは俺と出るぞ!」
馬車から出た俺とレナは五人に向かって歩きながら魔力を練る。
剣士相手には遠距離大型魔術が一番効果的な戦術だ。
レナは両手を合わせて大火炎魔術を放つ。
俺はそれに合わせて左手から大火炎魔術を右手からは暴風魔術を放つ。
「ちょっとフレズ!
自分だけ手を抜かないでよ!」
「いいじゃないかこの方が強いし。」
俺はどうせレナは単純だから火炎魔術を放つと想像して火炎魔術を強化するために片手だけ中威力の暴風魔術にしたのだ。
まさに地獄の業火とか言いようがない炎塊が消えて赤井雲黒斎と青井雲黒斎が倒れる。
「ちょっと!
フレズが手を抜くから三人生き残っちゃったじゃない。」
「いや、あれは魔術封じのブレスレットだ。」
三人は魔術封じのブレスレットをしていた。
以前ブルーノが俺相手に使ったブレスレットの上位互換だ。
「どうやらあいつらは俺達と剣で戦いたいらしいぞ。」
仕方なく俺とレナは生き残った三人の前にゆっくり歩き出る。
もちろんゆっくり歩いたのはサニーの位置取りのためだ。
魔力の自然回復を待つと言う意味も少しある。
「貴様ら!
我らは一気撃ちを望んでいたのに卑怯だぞ!」
なるほど魔術封じのブレスレットをしていなかった二人はリザベルとサニーとやりたかった奴等か。
となると残り三人は魔術対策は完璧だろう。
これは益々剣で戦うしかないな。
「それは済まないな。
事前に一騎討ちの申し出がなかったものでな。」
俺は形だけ謝罪する。
「事前に申し出たら奇襲の意味がないだろうが!」
集団戦闘中にする一騎討ちの奇襲に意味があるのかは良く分からないが、間違いなく彼等は腕だけは一流の剣士。
おそらく精神集中などの意味があるのであろう。
「それと何故ゆっくり歩く。
ここは戦場だぞ!
ゆっくり歩いて少しでも魔力を回復させるなど卑怯な真似をするな。」
「ゆっくり歩いたのは魔力回復させる為ではない。
その方がカッコイイからだ。」
俺はデタラメを言う。
「なるほど。
確かにその方がカッコイイな。」
俺のデタラメに雲黒斎達が納得する。
こいつらは悪人だが、剣に夢中になり過ぎてバカなだけで意外に根は良い奴なのかもしれない。
「申し訳ないがテロリスト相手に一騎討ちする気などないが…、レナは白井雲黒斎の前へ。」
そう言って俺は黒井雲黒斎の前へ歩いた。
望み通りの相手と戦える様になって白井雲黒斎と黒井雲黒斎に笑みがこぼれる。
その隙をサニーが見逃す訳がなかった。
どこからともなく超遠距離超高速のストリングショットが黒井雲黒斎と白井雲黒斎を襲う。
なんと黒井雲黒斎と白井雲黒斎はサニーの超遠距離超高速ストリングショットを斬り落とした。
しかし、俺とレナも当然黙って見ている訳もなく二人がサニーの攻撃を斬り落とした瞬間に、二人の心臓に剣を突き刺していた。
「最初から卑怯な手など使わずに城に遊びにきて一騎討ちを申し込んでくれたら、良きライバル良き友になれたかもしれないのに。」
俺はついそう口から漏らしていた。
「ふっ、古き時代に取り残された我等にそう言ってくれるか…、ありがとう。」
「ああ、間違いなく今迄戦った中で最強の剣士だったぞ。」
俺とレナは二人の遺体を抱えて脇道に移動して、そっと横たえ瞼を閉じさせる。
「紺野雲黒斎だったな。
お前達の凄さは既に認めている。
戦争になった以上手を緩める訳にはいかない。
すまないが6対1だ。」
俺はあたかもリザベルとローニャとブルーノが来ているかの様に嘘をついた。
少しでも相手を混乱させて剣に迷いを生じさせるつもりだ。
そんなセコイ手を使わざるを得ない程、雲黒斎達は強かった。
サニーも同じ様に感じたのか狙撃をやめて俺とレナに合流する。
下手な狙撃をするよりも徹底的な隙を見せれば狙撃するぞという脅しの方が効果があると判断したのだろう。
もちろん実際には狙撃はないがそれでもかなり楽に戦えるはずだ。




