雲黒斎の野望
首都に集まった俺達は国王とラインズに表彰され勲章を授与されたり新しい領地を管理したり忙しい毎日を過ごしていた。
国王とラインズ両名から勲章を授与されたのはもちろんこの国を継ぐのはラインズである事を世界に示す事や俺とラインズの仲の良さを示す為である。
今日は久しぶりに全員が揃っての食事会と言うなの作戦会議だ。
「どうやら貴族を焚きつけたのは赤井雲黒斎という人物らしい。
念の為赤井という人物と家系を調べさせたのだが何も分からなかった。」
リザベルがそう報告する。
俺は話しを聞きながら燻製地鶏と新鮮野菜のサラダを食べる。
「うむ。」
地鶏の甘さと燻製の香り、そしてこのドレッシングが野菜の美味しさと混ざりたまらないな。
「こっちにも貴族の裏で手を引く奴が居たよ。
青井って奴だ。
もちろん青井家の連中を探らせては居るがこっちも何も出ないね。」
俺はサニーの話しを聞きながら野菜仕立ての豆乳スープを頂く。
「うむ。」
丁寧に裏ごしされた野菜のエキスがスープの中で絡み合い、さっぱりしながらも濃厚な旨味と風味がしている。
「こっちは白井って奴が絡んでいたわ。
こっちも残念ながら白井家からは何も出なかったわ。
俺はレナの報告を聞きながら、
和牛のステーキを食べる。
「うむ。」
ステーキには2つのソースが添えられている。
大根おろしのソースとワイン煮のソースだ。
ワイン煮のソースの方が味が濃そうなのだが、シェフのススメ通りにワイン煮のソースから食べる。
なるほどワイン煮のソースは和牛本来の味を殺す事なく、脇役に徹して和牛を引き立てる味になっていた。
大根おろしのソースは次の料理に繋がる味をしながらも、たくさんの香草や大根の酵素の働きを使って消化を助けてくれている。
三人の話しを聞いてラインズが話しはじめる。
「首都の貴族に働きかけていたのは黒井雲黒斎。
こちらも国の全力をあげて黒井家を追っているが黒井家からは何も出てこなかった。」
俺は春海老の混ぜご飯を食べながらそれを聞いた。
この後は柚子シャーベットで口直ししてからケーキセットとコーヒーが出る。
「ちょっとフレズ!
ちゃんと聞いてるの?」
食事会を満喫する俺にレナが話しを振った。
「ああ、裏で糸を引いていた奴の家系を洗ってみたが何も出なかったって話しだろ。
聞いてたよ。」
「聞いてればいいって話しではないですよ兄さん。
せっかく黒幕に繋がる情報を得たのに黒幕と思われる奴等の家系から何もさぐれないのです。」
次期国王として今回事態の収拾にあたるラインズも珍しく熱くなっていた。
「いくら探っても赤井家・青井家・白井家・黒井家からは何も出ないよ。
気付かないのか?
さっき言ってなかったがサニーとレナの言う青井と白井は青井雲黒斎と白井雲黒斎じゃないのか?
彼等は国家転覆を企む貴族の一家ではなくて横の繋がりだよ。」
俺はそう言いながら四人にリストを渡す。
大木居雲黒斎
長居雲黒斎
危内雲黒斎
紺野雲黒斎
間地出雲黒斎
金成雲黒斎
菅江雲黒斎
恵頼雲黒斎
十文雲黒斎
細維雲黒斎
太維雲黒斎
硬井雲黒斎
汚衣雲黒斎
厚猪雲黒斎
熱亥雲黒斎
碓氷雲黒斎
濃伊雲黒斎
酷威雲黒斎
「みんなリストにある間地出雲黒斎の元で剣を学んだ者達だ。
免許皆伝されていて雲黒斎を名乗る事を許されている手練れ達ばかりだ。」
「まさか家ではなく剣の子弟関係とは!
そこに気づくなんてさすがフレズベルク隊長だ。」
「さすがの私もそれには気付かなかったよ。」
「素晴らしい観察眼と思考力ですわ。」
「それでこそ私のフレズよ。」
「さすが兄さん。」
俺は何かこの雰囲気に気持ち悪いものを感じながらローニャを注意する。
「ローニャは気づいていたんだろ?
ふざけてないでさっさと話せ。」
ローニャは俺の方を見て軽く微笑んで話しはじめる。
「雲黒斎一刀流は太古より続く剣の一門。
その歴史は古くこの国を初代ドーヘンタイーナド様が統治する前から続いています。」
「という事は敵の居所は…、」
「そう旧都尾薙羅ですわ。」
さすがローニャだな。
任せておいても大丈夫そうだ。
俺は食後のケーキを食べながら聞く。
それにしても今日の食事は美味かった。
特にシェフの故郷から取り寄せたという和牛。
あれは是非我が国も取り入れなければならない。
俺はシェフと話しをして和牛の入手経路について尋ねる。
「イセケンミエムラの港から尾薙羅の国を通って輸入しています。」
なるほど、これが神の思し召しと言うやつか。
「みんな俺はこれから尾薙羅に旅立つ。」
「そうだなみんなで行こう。」
「フレズ隊長私も行きますよ。」
「料理なら私が居た方がいいですね。」
「私だって行くに決まってるでしょ。
なんでフレズだけ美味しいもの食べようとしてるのよ。」
四人はそれぞれ参加表明した。
「僕も行きたいです、兄さん!」
ラインズもそう言う。
「「「「ラインズはダメに決まってるでしょ!」」」」
結局公正なくじ引きの結果、俺とレナとサニーで現地に向かう事になった。
リズベルとローニャは国の内政の立て直し、ブルーノはラインズの警護に当たる事になった。
今週もよろしくお願いします。




