ローニャの隠し技と敵の隠し事。
ドバババババッ!
ローニャの複数の魔術がナメルハウ・ストーカーを襲う。
「魔術の複数同時発動とは驚きましたね。」
驚いたと言いながらナメルハウ・ストーカーは余裕そうだった。
針の毒のせいでローニャはうまく魔力を練る事が出来ず、精度や威力やスピードがいつもより低いのだ。
これならナメルハウ・ストーカーでも余裕で対処できる。
「魔力残量は大丈夫でしょうか?
ここに来るまでに随分とバカでかい魔術を起動してましたが…。」
そう言ってナメルハウ・ストーカーは高笑いする。
ローニャはなんとか足を引きずって走りながら魔術をどんどん放つ。
「無駄ですよ!無駄無駄無駄っ!」
ローニャには最後の作戦があった。
足を引きずって闇雲に攻撃している様に見せながら地面に魔法陣を描いていたのである。
「ふう、何とか完成したわね。」
そう言うとローニャは最後の魔力を使ってローニャオリジナル魔導を起動する。
「無限バリアー!」
魔法陣が起動してバリアーがローニャを包む。
「このオリジナル魔導無限バリアーは文字通り無限のバリアーです。
もちろん私も中から出る事すら出来ませんが
消失条件は足元の魔法陣が消えるか私が死ぬかしかありません。」
ナメルハウ・ストーカーはローニャのオリジナル魔導バリアーに攻撃をする。
大きい魔術は
ドーン!
パリンパリンパリンパリンパリンパリン…、ブーン。
と防がれてバリアーが再生する。
小さな連続攻撃も
ドドドドドドドド!
パリンパリンパリンパリン…、ブーン。
と防がれてバリアーが再生した。
「なるほど小さなバリアーが複数展開されていて、壊れた端から再生するのか。
今までのより硬いバリアーを張ろうとすのとは違う発想だな。
さすがフレズベルクのお気に入りだな。」
魔術大好きなオタク志向のあるナメルハウ・ストーカーは素直に感心する。
「ええその通りです。
子供の頃食べ辛いミルフィーユケーキを食べていて思いついたのですよ。
しかも、一度発動してしまえばバリアーの再生には魔力不要です。」
ローニャはフレズベルクのお気に入りと言われた上に魔術を褒められて少し機嫌が良くなった。
「なる程ミルフィーユケーキ。
ミル(1000枚)のフィーユ(落ち葉)か。
フレズベルクも天才と言われているが、やはりローニャも天才だな。
ローニャ殿今迄の無礼な発言を詫びよう。
バリアーの中で待機しながら回復したり、仲間を待ったりこれは万能だな。
どうせ上も下も完璧なのだろう?」
そう言ってナメルハウ・ストーカーは土魔術や風魔術を使って上や下からも攻撃して見せた。
パリンパリンパリンパリン…ブーン。
「ええもちろん完璧ですわ。
せっかくの強敵。
残念ですがここで仲間が来るまで待たせて頂きますわ。」
そう言ってローニャはフレズベルク愛の怒兵達の方を見た。
怒兵達は既に隊を3隊に組み直し、仲間を呼びに逃げる隊、それをサポートする隊、ここでローニャを見守りつつ、ナメルハウ・ストーカーを見張る隊に分かれていた。
ナメルハウ・ストーカーは集中して魔力を高める。
「ここで君を仕留めなければもう二度とこんなチャンスはない!
その様子ならもちろんバリアーの欠点にも気がついているのだろう?」
ナメルハウ・ストーカーは大型魔術を発動する。
ナメルハウ・ストーカーの手から放たれた水流が天に昇る。
それはまるで天の水龍の様だ。
「君の様な同時発動は無理でも2つくらいなら連続発動は出来る。」
今度はナメルハウ・フトーカーの手から大型風魔術が放たれた。
先に放たれた天の水龍と大型風魔術が混ざり合い大きな天の水龍のドリルが完成した。
「覚悟はいいか行くぞ!」
ナメルハウ・ストーカーはそう言うと、天の水龍のドリルでローニャを真っ直ぐに突こうとする。
パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリン…!
ローニャのオリジナル魔導バリアーがガラスの様に砕けちる。
そういくら無限のバリアーと言えども所詮は魔力で出来たバリアーなのだ。
破壊出来ない訳でない。
このまま複合大型魔術はバリアーを破壊しながら進み、やがて地面の魔法陣を破壊してローニャも突き殺すであろう。
パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリン…!
魔力切れを起こしているローニャは改めて剣を力強く握る。
パリンパリンパリンパリンパリンパリン…!
「私の天の水龍ドリルも小さくなってきたがそろそろバリアーも終わりの様だな。
魔術魔導師のお前にその剣1本で何が出来る?
さらばだぁぁあーーー!」
パリンパリンパリン。
地面の魔法陣が天の水龍のドリルの勢いで消されてローニャのオリジナル魔導無限のバリアーが消失する。
「きえええぇぇい!」
ローニャは雄叫びを上げて天の水龍ドリルに剣を振り回した。
剣を振ったローニャと天の水龍ドリルのナメルハウ・ストーカーが交差してすれ違う。
「ふっふっふっ!
はーっはっはーーー!
それが君の力かローニャ。
見事だ。」
バタッ。
ナメルハウ・ストーカーはそう言ってその場に倒れた。
ローニャが勝ったのだ。
さすがにもう自分では動きたくないローニャはフレズベルク愛の怒兵に指示してナメルハウ・ストーカーに縄をかける。
そしてローニャはナメルハウ・ストーカーのところへゆっくりと歩いて行った。
何とか生きていたナメルハウ・ストーカーはローニャに話しかける。
「まさかずっと剣の精霊石を使わずに戦っていたとわね。
その剣と精霊石は何なんだい?」
「これはただの逆さ天秤の剣ですよ。
もちろん至高の一本ですけどね。」
ローニャはそう答えた。
「逆さ天秤の剣…。
使用者の魔力が減れば減る程力を増す剣か。
新米の魔術土や魔道士が魔力切れの時用に持つよくある剣だな。
まさかそんな雑魚の剣に負けるとわ…。」
「この逆さ天秤の剣は通常の5倍以上に魔力反応が出ます。
人よりも魔力が莫大に多い私が魔力が空っぽの状態で使ったという事はもうわかりますね。」
「ああ言わなくてもわかる。
しかも最後手を抜いてくれたのだな。」
「ええもちろん。
腕が上がって有名になればなる程魔術士や魔道士は剣や体術を嫌がります。
中には魔力で飛んで自分では一切歩かなくなる者が居る程です。
しかも、それをカッコイイと讃えるしまつ。」
ナメルハウ・ストーカーは死刑を覚悟しながら黙ってローニャの言う事を聞いていた。
子供の頃に夢にまで見て憧れた魔術と魔導の完成系がそこにあるのだ。
「貴方はそうならないで下さいね。
ナメルハウ・ケンダーさん。」
ローニャはナメルハウ・ストーカーにそう言った。
「まさかそこまで見抜いていたとはな。
いつ気がついた?」
「最後の最後ですわ。
ナメルハウ・ストーカー伯爵は土属性が得意だったですからね。
最後の大一番で水と風の複合魔術は使いません。」
「すまなかった。
戦ってみたかったんだ奇跡の天才魔術魔導士ローニャとな。」
「今度暇な時牢にフレズベルク様を連れて行きますね。
私なんかより凄いですし、きっと直ぐに牢屋から出して下さいますわ。」
「やめてくれそんな奴いる訳ないだろ。
君ですら戦ってみて違い過ぎるレベルを感じて魔術士辞めようかと絶望しているんだ。」
ナメルハウ・ケンダーは牢屋から出してくれるはずなんてないという言葉はあえて飲み込んだ。
何故だか言ってはいけない気がしたのだ。
「そんな事ありませんわ。
魔術や魔道には上には上があって終わりなどありません。
フレズベルク様を一目見ればレベルが違い過ぎて魔術や魔道の道の奥深さを感じより一層やる気が出るはずです。」
ローニャはそう言ってナメルハウ・ケンダーの前を去った。
「さあフレズベルク様愛の怒兵の皆さん。
フレズベルク様の名の元に疲弊した民達を救いますよ。」
「「「おうーーー!」」」
ローニャとフレズベルク愛の怒兵の仕事はこれで終わりではないのだ。
疲弊した民達の為にまだまだ仕事はいっぱいだった。




