リズベルの西側部隊。
今回西方を担当する事になったリズベルはいつもと違う様子に戸惑っていた。
「かいもーん!開門!
私はフレズベルク大隊リズベル部隊隊長リズベルである。
ラインズ様からの命令により、反王室の疑いで事情を伺いにまいった。
大人しくするなら手荒な真似はしないが反抗するなら容赦はしない。」
そう言いながらもリズベルは敵を切ってしまいたくて仕方がなかったのである。
証拠もあるし、悪い奴の言い訳など聞いても碌な事はないのだ。
その部下達もある程度は自分達の上司のやっている事は気付いているだろう、ならば同罪だ。
さっさと斬り捨ててしまえばよい。
悪 即 斬。
それがリズベルの基本精神である。
そしてそれを成す力がリズベルにはあるのだ。
リズベルを門番は大声で怒鳴る。
「うるさい、我らが領主…」
ピュッピュッ。
バサ、バサ、バタン。
そう敵の兵が怒鳴りながら剣の鞘に手をかけ、鯉口を切った瞬間どこからか飛んでくる矢によって敵兵が倒されるのだ。
それが信頼するフレズベルクから今回の討伐作戦につけられた愛の怒兵の放った矢である事はわかるのだが、リズベルはストレスを溜めていた。
要するに悪を自分で切りたいのだ。
リズベルは念のため敵兵の死体を確認する。
先程自分でも認識した通り敵兵の剣はどれも鞘から2センチほど抜きかけていた。
つまり愛の怒兵は自分の指示通り、相手が敵意を見せてから矢を放っているのだ。
「いくらフレズの兵とはいえ私より早いとはな…。」
リズベルはそうつぶやくとさらに敵地に進んで行った。
結果リズベルは一度も剣に触れる事なく、敵の大将の元へたどり着いた。
「私はフレズベルク大隊リズベル部隊隊長リズベル。
今日は………。」
リズベルは今日何度目かのセリフを口にする。
どうせ言う事を聞かずに襲いかかろうとして、全員どこからともなく飛んでくる矢に撃ち落とされるのであろうな…。
ピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッピュッ!
敵が剣の鯉口を切った瞬間だった。
リズベルの予想通り敵兵が次々倒れていく。
リズベルは任務としては成功なのだが、なんか納得出来ない気持ちになりながらその様子を見ていた。
「なんだと…!」
リズベルの予想に反して二人の人物が矢の嵐から生き残った。
今回の目的アクツァダイカンとその嫁である。
フレズベルク愛の怒兵の一人が嫁に近づく。
「◯◯の婚約者◯◯様でからせますね?
貴女の無実は証明されております。
お父様の領地までお送り致します。
さあ、こちらへ。」
会話を聞いてリズベルは理解する。
なるほど、良く教育されているのだな。
自分は義理の娘だと思っていたがまだ結婚前のようだ。
事情を知らないであろう婚約者は無実か…。
そしてふと横を見ると愛の怒兵の一人が片膝をついて両手を差し出していた。
「なんだ?」
リズベルは聞く。
「槍では一騎討ちしにくいかと。」
返事を聞いて再びリズベルは驚いた。
このフレズベルク愛の怒兵達は私が活躍の場がなくイラついていた事に気付き、古いしきたりを持ち出して戦うために敵大将を一人とっといてくれたのだ。
「アクツァダイカン!
こちらには証拠が十分にある。
素直に自害するか潔く一騎討ちを受けよ。」
「おのれ小娘が調子に乗りおって、目に物見せてやるわ!」
そう言うとアクツァダイカンは剣を抜いて襲いかかってきた。
リズベルはアクツァダイカンの攻撃を冷静に剣で受け止め距離を離し魔法を放つ。
ドカーーーン。
リズベルの魔法がアクツァダイカンを捉えて爆発する。
「ふぅ…、やったかしら。」
リズベルがそう思った瞬間だった。
「甘いわー!」
アクツァダイカンが爆煙の中から斬りかかる。
「くっ対魔術装備か…。」
相手も名の知れた大貴族。
もちろん装備品も一級品なのだ。
魔法を封じられたリズベルは苦戦する。
リズベルは部隊で活躍する為に槍を得意としていたのだ。
ここにきて現代ではあまり見られない剣での一騎討ちにリズベルは手こずる。
「ハァッハァッ…。」
リズベルは呼吸も荒くその場に片膝をついた。
そして一瞬フレズベルク愛の怒兵の方を見た。
フレズベルク愛の怒兵は一騎討ちの形式に則り背後に待機していた。
アクツァダイカンは声を上げる。
「槍の名手と謳われた小娘も剣はたいした事ないのお。
おい!周りの兵士どもよ。
一騎討ちに勝ったら逃してくれるのだろな?」
アクツァダイカンは既に勝った様な気でいるようだ。
「フレズベルク様からアクツァダイカンが勝ったら一騎討ちの形式通り逃亡を許せと言われております。」
それを聞いてリズベルが反応する。
「なんだと!
お前達は悪を逃すというのか!」
「一騎討ちは正当な戦い。
アクツァダイカンが勝ったなら逃亡を許さないと我々が悪になってしまいます。」
「なっ…。」
「はーっはっはっはー。
さすがフレズベルク様だ。」
アクツァダイカンが勝ち誇った様に笑う。
「お前達正気か?
フレズは本気で逃せと言ったのか?」
「はい。
フレズベルク様はリズベルが何とか勝つから心配ないと申しておりました。」
「はーっはっはっは!
天才と言われてもフレズベルクも所詮は子供。
こんな雑魚を信じて馬鹿よのお。」
アクツァダイカンが再び笑う。
「なるほど、フレズが私が勝つから問題ないと言ったのだな。」
それを聞いてリズベルは再び立ち上がった。
フレズ隊長が私が勝つと言った。
フレズ隊長の意見は絶対だ。
私はフレズに信頼されている!
槍もない、魔法も封じられた、その上剣の腕は向こうの方が上。
まったくフレズは毎回毎回無茶を言ってくれる。
さて、これからどうするか…。
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?
私はあまり休みがなかったのですが、小説の書き溜めと他の方々の作品を見て書き方を勉強しておりました。
今週もよろしくお願いします。




