決闘!
俺は8人同時にかかってこいと宣言した。
ここで貴族に圧倒的恐怖を与えラインズとの戦いを少しでも優位にしておく必要がある。
「そんなフレズ兄さん何を考えているのですか!」
ラインズが俺を気遣う。
いやお前の事を考えているんだよと思いながらも俺は口に出さなかった。
体内でこっそりと魔力を練るのに夢中だからだ。
「確かお前の家系では火の魔術が得意だったな。」
「左様でございます。」
貴族ではなくバートラーの一人が答えた。
「じゃあ本当の火の魔術を見せてやる。
死ね!」
俺は全魔力を込めて最大火力の魔術を放つ。
子供3人はどうとでもなるが、優秀なバートラー5人を含めて8人同時に相手する事はどう考えても不可能だ。
8人が同じ位置に立っているこの瞬間しかチャンスがないのだ。
この魔法で焼ききれなければ負ける!
バートラー5人は俺の予想通り子供達を囲んで守りに入った。
バートラー達も火の魔術に秀でているのだろう。
そこに隙があった。
俺は全ての魔力を込めて魔術を放ったのだ。
多少火が得意でも無傷では済まない。
問題はどこまで焼ききれるかだった。
太陽の様な真っ赤な炎が8人を焼き尽くす。
ただの魔術ではないそれは永遠に燃え続けるのではないかと思わせる程の炎であった。
火の魔術の中でバートラーが一人二人と倒れていく。
最後の一人が俺の炎を耐えきった。
4人のバートラーはかろうじて息はあるもののもう助からないだろう。
唯一立っていたバートラーももはや立っているのが不思議なくらいだった。
3人の子供達もバートラーが防ぎきれなかった炎浴びて全身に火傷を負っていた。
「ギャーーー、熱いよ痛いよバートラー。」
3人子供達はそれぞれ叫び出した。
3人の子供はまだ助かるかもしれないが、身体のどこかには障害が残るだろう。
バートラーが優しく微笑んで子供達に声をかける。
「大丈夫、お爺様が待っておられます。」
そう言うとバートラーは痛みを感じない様に3人を切った。
倒れた4人もそっと介助する。
「御主人様、最後までお使い出来ず申し訳ありませんでした。
私ではフレズベルク様は無理でございました。」
バートラーは俺の方に振り返る。
「フレズベルク様お見事でございました。
願わくば我が主人に出来るだけ苦しみを与えない様にお気遣いして頂けると嬉しいです。」
そう言ってバートラーは命を絶った。
正直あのバートラーが子供達を見捨てて攻撃してきたら負けていただろう。
俺は上着を脱ぎそっとバートラーの遺体にかける。
最高の戦士だったと認めた上で行動だ。
パチパチパチパチパチパチパチパチ。
俺の勝利とバートラーの勇姿に惜しみない拍手が送られる。
良い果たし合いだったと広場が感動の渦に包まれる中、残された貴族の重鎮は一人怯えていた。
そしていよいよラインズが広場に躍り出た。
「バートラーを見習って潔く自害せよ。」
ラインズがそう言うと、貴族は何とか勇気を奮い立たせラインズの前に立ち塞がった。
自分の相手は天才フレズベルクではない。
ただの7才の王子だ。
貴族が剣を抜くとラインズも剣を抜いた。
「何だそのボロい剣は!」
貴族はラインズの剣を見下した。
「この剣は我が国民が一生懸命作った物だ。
この剣の魅力がわからぬとはお主もそこまでだな。」
ラインズの口調が硬い。
緊張してやがる。
俺がそう思ってアドバイスしようとした時、貴族がラインズに切りかかった。
俺の予想通りラインズの動きは硬かったが、さっきの俺の脅しが効いているせいか、貴族の剣筋が甘い。
何とかラインズは貴族と打ちあう事に成功していた。
ラインズの緊張が抜けてくるとともに、貴族の怯えも抜けてくる。
一見互角に見えたが俺には確信する物があった。
ラインズの奴何気に武器屋に通ってやがったな。
貴族の護身に特化した綺麗な太刀筋に対して、ラインズの攻撃は荒かった。
ラインズは王家に伝わる護身の剣と荒々しい攻撃の剣を混ぜ合わせて使っていた。
それは大人に比べて体格が小さいラインズを助ける。
均衡が崩れる徐々にラインズが押しはじめた。
俺も安心して見ていた。
いや、沢山の魔力を使ったせいか注意が散漫になっていた。
ラインズの小さな隙をついて貴族がラインズに蹴りを入れ距離を取る。
そして火の魔術を放った。
やばい!
助けが間に合わない。
俺が動こうとした時、横から怒兵の一人が俺を止めた。
よく見るとそれは武器屋のオヤジだった。
「オヤジ流奥義、魔術斬り!」
ラインズはそう叫ぶと超高速の4連撃を放った。
驚いた事に火の魔術がラインズの剣に斬り捨てられていく。
そしてそのままラインズは貴族に突っ込んでいく。
「オヤジ流奥義、疾風斬り!」
それは一瞬だった。
おそらく貴族は自分が死んだ事すら気づかなかっただろう。
ラインズが剣を鞘に納めるてからゆっくりと貴族が倒れる。
恐ろしい斬撃だった。
とても7才の子供が放ったとは思えなかった。
広場の空気が静まりかえった。
あまりの斬撃に民衆はラインズを恐れたのだ。
「民よ、我が国民よ。
父の部下が失礼をした。
悪徳貴族が働いた悪さの分は必ずドーヘンタイナード家が補填するから許してくれ。」
何とその場でラインズは民衆に頭を下げた。
普段何も考えていない俺はともかく、それは有ってはならない事だった。
民衆に動揺が走る。
頭下げたラインズを見たら不敬罪で斬られても文句は言えないのだ。
それくらいの出来事だった。
その時ブルーノが気をきかせて叫んだ。
「俺は何も見てないけど、フレズ隊長とラインズ様を信じてます!」
その叫びをきっかけに民衆は後ろを向いて拍手しだした。
「俺達も何も見てないけど、フレズ隊長バンザイ!ラインズ様バンザイ!ドーヘンタイナード王国バンザイ!」
俺は頭を下げているラインズに近づいて声をかける。
「さあ帰るぞ。
もう気持ちは十分に伝わったはずだ。
いつまでラインズが頭を下げていたら民衆が朝ご飯も食べられないじゃないか。」
怒兵達も気を使って民衆が後ろを向いているうちに敵対貴族達の遺体を片付ける。
後にこの日を含めて一週間フレズベルク愛のお掃除祭りとして国民全員で溝掃除をしてから祝うお祭りになった。
お祭りにラインズの名前を使えなかったのは仕方ないがなぜ一々フレズベルク愛のと付けるのか俺は納得がいかなかった。
一方その頃、他の領地に敵対貴族狩りに出かけた4人は…。
今週もありがとうございました。
平日更新の本作品。
書き溜めがなくなってしまったので、ゴールデンウィークは更新をお休みさせて下さい。
次回更新は7日。
またよろしくお願いいたします。




