王都
どこまで流されたのだろうか・・・
流れ着いた場所には私以外は誰もいなかった。
ほかの領民を捜しながらふらふらと下流に向かっていく途中で私は偶然に旅の商人と出会った。
生きている限り出来ることをしなければならない。
私は対価として銀製のペーパーナイフを差し出し、商人に町まで連れて行ってくれるように頼んだ。
商人は私の着ている服も要求してきたが王都までの同行を認めてくれた。
私は濡れた騎乗服を脱ぎ、用意された粗末な衣服をまとった。
わたくしは生きなければならない、そして出来ることをする・・・
幾日か過ぎた頃、分かれ道で降りるように言われた。
ここから一日歩けば王都に付くそうだ。
私は約束が違う、とは言わなかった。
この状況でそんなことを言ってもかえって状況が悪くなるだけだ。
最悪は殺される可能性だってありうる。
私は二食分の食料を持って王都への街道を歩いた。
運悪くこの街道を通る者はいなかった。
その後私は三日間歩き続けた・・・
==============
通行税が払えず、ぼろを着ている私は王都に入ることが出来なかった。
「どうかエスケルト侯爵家の者に伝言をお願いできませんか」
もう何日、何十日目だろう、私は王都の城門の騎士に毎日同じお願いをする。
「またおまえか、きさまのようなぼろをまとった者が侯爵家の娘のはずがないだろう。しかも、エスケルト侯爵家の皆様は未だ領都にこもって帝国に抵抗しておられる。これでももってさっさと立ち去れ」
騎士が投げたパンが地面に落ちる。
安易に死を選んではいけない、私は自分が何もすることがないと分かるまでは何をしても生きなければ
パンを拾って街道沿いの木のそばに帰る。
私はここで街道を通る人たちに伝言をお願いしている。
だが、誰もぼろをまとった私の話を聞いてくれず、酷いときは剣を向けられるときもあった。
私は堅いパンをかじりながらほほえんだ。
領都はまだ落ちていない、領民はまだ生きている・・・
私が街道を眺めていると遠くに馬に乗って王都に向かってくる人をみつけた。
ああ・・・・私はふらふらとした足取りで歩き始めた。