第二章 第八話 買い物と改装
結局騎士団に協力してしまった。まあ、取るものはちゃんととったんだけど…
一応、王都から頂いた“王都協力者”の称号は店先につけてある。なんでも王都協力者は意外にも多くいるようでそんなに目立たないとアミードさんから聞いた。確かにアミードさんの診療所や工房にも貼っていた。
それからというもの、店の看板メニューに『燃料用魔力倍加』が加わった。騎士団の戦車用燃料を増幅させたことでウチの燃料タンクを!俺のところの燃料を!と家庭用燃料から
燃料売りを生業にしている者まで客層はより増えた。そういえば、最近は観光に王国軍にと自分自身の能力の発見はあったけれどちゃんとした生活基盤はできてないことにふと気づいた。
お金はある、あるというか王国軍の件で今は困らないほどだ。料理や洗濯などについては
商売を始めたころに初めに買った安物の魔結晶を時々増幅させながらずっと使っている。でもいくら増幅させたところで安物は安物というところなのだろうか、水圧や火力は十分とは言えない。やっぱり買い替え時かなあ…。買い替えるとなると魔結晶は廃棄することになる。でも魔力はまだまだ残っている。普通なら使えなくなった結晶は砕けるか完全に魔力を失った石になってしまうから特別な処理なんてしなくていいし山なんかに投げ捨てて置けば結晶は周りの微量な魔力を少しずつ吸収して長い時間をかけて再び魔結晶となって再び採掘…という流れがこの世界の常識なのである。だからといって、買い取ってくれるところがないというわけでもないし、この世には増幅士がいればその逆ができる人もいるそうだ。でもこの魔結晶も買い取ってくれているだろうか…。考えていても仕方ないので早速
買取屋に出向いてみることにした。
買取屋につくとそのたたずまいは想像していたものよりも簡素なもので店舗というよりは行商人の店屋のようだ。入ってみるとよく想像する頑固ジジイではなく優しそうなお姉さんが出てきた。
「あら?お客さんかな?申し訳ないんだけど売れるものはお花くらいしかないよ?」
と少し申し訳なさそうにこちらの様子をうかがっていた。自分は買いに来たというよりは使わなくなった魔結晶を手放したいということを伝えた。すると、すぐに店の奥から小銭の入った袋と鑑定書を取り出してきた。どうやらこの魔結晶は住宅街で市販されているものよりも圧倒的に多くの魔力を持っているらしく買値よりも少し高く売ることができた。
それはいいとしてここは買取専門と聞いたはずなのに植物をメインの商品としていることがどうしても気になった。でも今日は自宅の充実がメインの目標だからそこはあまり触れず、また来るといって出ることにした。
そのあとは、王都内にある雑貨屋で火力用と飲み水、その他用の少しランクの高い魔結晶を購入して、調理器具も新調することにした。なにせ今まで使っていたものは店を作ったときに出たあまりの金属に魔力を使って使えるように加工しただけのものだったのだ。包丁には力の、鍋には熱伝導の良さを…という感じだ。でも今回買った器具には元からその魔力が注ぎ込まれているだけではなく、それに頼らずとも通常使用できるという一級品なのである。店の看板には王都献上を表す表札が掲げられていてなんとなく親近感がわいてついつい買ってしまった。こりゃあ、節約生活しないときつそうだ。
そのあとは、魔結晶の取り付けだとかをして暇になったから店内も少し改装してお客さんがもっと簡単に魔力増幅を受けられるように魔結晶をセットする器具を作ったりして明日からの開店に向けて準備をした後はあんまり覚えていない。おそらくそのまま寝てしまったのだろう。幸いまだ気候は涼しいくらいなのでそのまま寝落ちしてしまっても問題ない。
さて、明日はミニリニューアルオープンのようなものか!と気合を入れて彼は眠るのであった…




