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私は皇帝  作者: 破魔矢タカヒロ
1/21

その1


 私は皇帝だ。


 名前は隆仁という。


 どこの国の皇帝か?


 太陽国の皇帝だ。


 さて、皇帝って何か?


 まあ、平たく言えば、国王だな。


 諸外国では私のことをエンペラーと称する。


 では、皇帝と王様、どこが違うのか?


 結構、はっきりと違うのだよ。


 それはね、隣の国のチュンコクの慣わしなのだが、王様が従えるのが一国だけなら王様、ないし国王、そして、数ヶ国を従えているのなら皇帝。なんとなくだが、四千年とかの昔から、そういうことになっているのだよ。


 で、私は皇帝なわけだ。


 だったら、我が太陽国は、つまり、太陽国の国家元首たる私は、数ヶ国を従えているのか?


 それがね、残念なのだけどね、従えてはいないのだよ。


 実のところ、私が従えているのは、太陽国、この一国だけなのだよ。


 ならば、どうして、皇帝なのか?


 それはね、戦争に負けるまで、皇帝が数ヶ国を従えていたからなの。


 しかし、今、私が従える国は太陽国だけなの。


 それなのに、我が太陽国の国民とか政治家とかは、私のことを皇帝として崇めるのだよ。


 それは、どうしてか?


 いや、もちろん、私が「そうしろ」と言ったわけではないよ。


 国民とか政治家とかが、勝手にそう呼んでいるのだよ。


 戦争に負けた、負け惜しみかな?


 私としては、国王とか王様とかで十分なのだけどね。


 その国王ないし王様にしても、怪しくてね。


 何が怪しいかと言えば、私は皇帝なのに、私の存在についての、かかる以外の表現として、私は、「象徴」と称されているのだよ。


 だから、我が太陽国の国民の一部には、私のことを国家元首とすら思わないやからがいるのだよ。あやつらは、私のことを単なる「旗」だとぬかしやがる。まったく、失礼しちゃうよな。


 けど、仕方がない。我が太陽国が先の戦争で負けたから、そんなことになってしまったのだよ。


 そんな、ややこしい立場にある私も、そろそろ引退したいと思っている。


 なぜなら、私は、もう八十二歳だ。もう、しっかりとヨボヨボなのだよ。


 私には、まだ、認知症とかはないが、それでも、女子よりも平均寿命の短い男子である私は八十二歳でもなにかと疲れる。


 だから、私は、マナベとかいう下膨れの総理大臣に申し入れたのだよ。


 「もう、ええかげんに引退させろ」とね。


 ところが、あいつは、空気が読めない。大人の言い方をすれば「気が利かん」。


 なかなか、辞めさせてくれなかった。


 しかし、遅々として進まなかった退位の手続きがようやく終わり、私は、来年、退位できることになった。


 さて、そんな私には、私特有の愚痴とか不満がある。


 私は、同じ国王でも、戦争に勝った、ニギリス国のアリザベス女王とは違うのだよ。


 それでも、そのような愚痴や不満とも今年限りでおさらばだ。


 ああ、退位する日が待ち遠しい ・・・ とか、思っていたわけだが ・・・


 お、やばい! 祭祀の時刻だ、ちょっと行ってくる。


=続く=



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