97話 超スキルカードハイ 【挿絵あり】
今編は挿絵多いのねー( ・∀・)
「イチ。起きて。」
優しく揺らされる感覚に目を開くと、アデリーの心配そうな顔が目に入る。
「あぁ。アデリー……おはよう。」
「良かったわ。なんともなさそうね……心配したのよ。」
「すまなかったね。」
アデリーを強引に抱き寄せて押し倒す。
「でもさアデリー。俺がキミを残して、この程度でどうにかなるなんてことはないんだよ。
まったくアデリーは可愛いな。」
「ちょ、やだもーイチ。なんだか恥ずかしいわ。」
アデリーの頬や首等に数回軽くキスをしてから、さっと起き上がる。
「続きは帰ってからな……タップリと可愛がってあげるよ。マイエンジェル。」
ウィンクをした後、アプリを起動しスキルカードを手に取り日本へ帰る。
自宅でシャワーを浴び、すぐに新世界の風の本部へ向かう。
今の俺に不安などない。なんでもできる。俺が怖い事なんてマイエンジェル達が俺の前から居なくなることくらいだ。
…………
そう。
スキルカードハイ。
ただでさえスキルカードハイだった上に、さらに強力なスキルを2つも上乗せしたことにより、今のイチにはとんでもない万能感が生まれているのだ。
言わば『超スキルカードハイ』状態。
『俺様無敵』な視点になっているのだ。
アクセルを無駄に踏みこむ運転をするが、きっちり信号は守っている。
新世界の風の本部へと到着すると、勝手知ったる様子で裏口から入り自動施錠の扉に向かう。
「まったく……教祖様の出迎えも無しか。まぁいいだろう。」
インターフォンを押す。
『はい』
「私だ。」
『…………えっと……どちら様で』
怪訝そうな男の声。
「ふぅ……教祖たる俺の声を知らんのか?
まぁ良い。開けぬならば俺が勝手に開けよう。」
土魔法で棘を作りだして扉に突き刺し穴を開ける。
穴から手を入れ開錠し鶴来達のステーキを食べていた部屋に入る。すると隣の部屋のクリーニングの為か専門の業者達が忙しそうに作業をしていたので事務所の方へと向かう。
事務所に入ると、突然の侵入者にビクビクする事務員たちが目についた。奥にある一番大きなデスクに腰掛けて、ふんぞり返り一息つく。
事務所に居た事務員らしき男1人と3人の女が恐る恐る固まりになりながら声をかけてくる。
「け、警察を呼びますよ!」
俺はその言葉に盛大にため息を付く。
「おいおいお前達……伊藤結香子から何も聞いてないのか?
偽物の教祖は罰を受け正しい真の教祖がやってくると。」
「な、何を馬鹿な事を言っているんだ! 教祖様を冒涜するなっ!!」
口々に文句を言いだす事務員たちを睨み付け念話を飛ばす。
『囀るな! 詐欺師に騙されし愚か者共が。』
突然頭に響いた声に事務員たちは驚き声が止まる。
『大人しく伊藤に確認してみろ……あぁ、そうだ。それよりもお前達に俺の力を見せてやった方が早いか。』
若い女を見る。
「そこの女。お前はどこかに傷痕があったりするか?」
「は、はい……」
「見せてみろ。」
女は戸惑っている。
『早くしろ』
念話を飛ばすと、女はブラウスをめくりお腹の傷を見せてきた。
俺は隠密を使い、存在感を薄くした後、女を後ろから抱きしめるようにお腹の傷に右手を当て、左手で女の頬を撫でながら回復魔法を使う。
回復魔法が効果を発揮しみるみる傷痕が無くなっていく。
傷が無くなった事を確認して女から手を離し、もう一度席に戻ってふんぞり返る。
「これでわかったか? 偽教祖どもは俺が渡してやった力を使っていただけなんだよ。ヤツらはなんの能力もありはしないのさ。」
一度伸びをしてから事務員たちを見ると、ようやく理解したのか膝をつき始めた。
ヤレヤレだぜ……
別に崇めて欲しくてやったわけじゃないんだけどな。まぁ仕方ないか。
--*--*--
「アンタ……今日は随分と印象が違うねぇ。それにどうなってんだいコレ」
「あぁオバちゃん。悪かったね。忙しいのに時間を取らせてさ。」
俺は集会を目前に目の色を変えた女事務員達によって着せ替え人形になっている。
こうなったのは、説得の後、伊藤結香子は事務員から連絡を受けて慌ててやってきた時にサービスしてしまったのが原因だ。
伊藤結香子は、鶴来達の状態確認の為に聴取なんかが入ったらしく、ほぼ寝てなかったせいで微妙に寝坊してしまったららしい。
要は俺の為に頑張ったせいで寝不足になったのだ。
「伊藤……いや、結香子には色々と苦労をかけるな。」
結香子を抱き寄せて回復魔法をかける。
回復魔法の巻物は初級の傷を治す回復しかできなかったが、今の俺は中級の回復魔法を使える為、疲れを癒すくらいは朝飯前なのだ。
疲れを癒す回復魔法は相当気持ちよかったらしく結香子は柔らかい光に全身包まれながらウットリとその身を預けてくる。
その様子はまた神秘的だったらしく、見ていた事務員たちが『教祖様教祖様! ハハーっ!』と興奮し、盛大に祀り上げられ『相応しいお召し物はどれだーー!!』となっている時にオバちゃんがやってきたのだ。
着せ替え人形になりながらも少し呆れたように口を開く。
「まぁ折角の機会だし、思った事は話させてもらうさ。
折角だし、オバちゃんにもちょっと話やすいような場づくりを手伝ってもらうから宜しくね。」
「ちょ、ちょっとアンタ! アタシに何をさせる気だい!」
「ふふ。大したことじゃないさ。ちょっとしたお楽しみだよ。
なぁに俺の言った通りにちょっとだけ手伝ってくれればいいんだ。」
「ちょっと待ちなっ!」
俺はニヒルな笑みを浮かべオバちゃんの言葉を流す。
集会の時間はもう目前に迫っていた。
--*--*--
会場では信者達が壇上を見つめ司会進行役により祈ったりだの歌ったりだの意味不明な行動をしていた。そして慣例になっているのか教祖賛美の麗句を全員が合唱し始める。
その賛美を聞き、俺は我慢の限界に達し壇上に飛び出した。
「騙され洗脳されている愚か者共が! 目を覚ませ!」
腹から張り上げた俺の声が響き渡り賛美の言葉を打ち消す、一瞬静かになり、その後ざわつき始める。
俺は気にせず声を続ける。
「お前達がこれまで信じていた教祖など、ただの詐欺師。
お前達は詐欺師の作り上げた幻想を盲目的に信じることしかできんのか?
真実を見抜けぬ愚か者共よ。括目し自身の眼でしっかりと見るがいい!」
もう一度静まり返ったが、一声「ふざけるな」という声が上がると集団は強気になり、口々に文句をいい始め、それが大合唱へと変わっていく。
司会が騒ぎを止めようとしたが俺が平然とし、その場を微動だにしないのだから焼け石に水だ。
やがて誰かが履いていた靴が俺に向かって飛んできた。
俺は土魔法を使い、飛んできた靴を棘で突き刺し止める。
魔法でできた土を消すと靴がその場に落ち、会場は未知の光景を前に水を打ったように静まり返った。
「……お前達が信じていた教祖。
アレはただの人間。それもクズで下等な人間だ。ただ俺が力を貸してやっていただけに過ぎない。
あのクズが使っていたのは、傷を治すだけだろう? そんなのは俺が力を貸せば誰でもできるんだよ。」
見回すが現状を理解できているようには思えない顔ばかり。失笑を漏らしつつ考えていた通りに勧めることにした。
「と……言ってもお前達は俺の力をまだ信じていないだろう。
だから今日はお前達に、詐欺師共では出来ない本当の奇跡を見せてやろうではないか!
サリーさん! ここへ!」
手を広げるが、なかなか出てこないオバちゃん。
だが、伊藤さんに押し切られるように嫌がるオバちゃんが出てきた。
会場はざわめき始めている。
「サリーさん。年齢は?」
「はぁっ!? なんで今そんな事を!」
『いいから。答えて』
念話を飛ばす。
「50歳だよっ!」
少し渋り、そして吐き捨てるように年齢を言うオバちゃん。
おれは信者達に向き直る。
「さぁ愚か者共よ。今聞いた通りこのサリーさんは50歳だ。見た目からも納得できる年だろう?」
「失礼なヤツだね。」
……ボソッと呟くオバちゃんの声が聞こえ、俺は思わず口角が吊り上る。
「今から、お前たちにとっておきの奇跡を見せてやろう!」
オバちゃんに長命のスキルカード。10年、10年、5年、合計25年分の3枚全てを渡す。
『俺が合図したらソレを力いっぱい握って。
割っても体に刺さるような事は無いから安心して割っていい。』
俺の念話に、オバちゃんは見たこと無いような情けない顔をしながら小さく頷く。
「さぁサリーよ。俺の力を受け入れるがいいっ!!」
俺の言葉を聞き、『ええい、もうなるようになれ!』と言わんばかりに長命のカード3枚を割るオバちゃん。
バリィィン
まとめて3枚も割った事で、肉厚な音が響き渡ると同時に割れたカードが粒子化しハジメ、オバちゃんの全身を包みこんでゆく。
突然の光に、会場は息を飲んでその様子を見守り、ゆっくりと光が収まり、サリーさんの姿が表れ始める。
「な、なんじゃこりゃああっ!!」
自分の指をみて何かが起きた事を感じたサリーさんの貼りのある声が響き渡り、同時に信者たちから驚愕に震える声が漏れ始めた。
説明を求めるようなオバちゃんの視線に念話を返す。
『年取ったなぁ~って言ってたから若返らせたよ。』
25歳のサリーさんが俺の言葉に愕然とした表情を浮かべた。
【サリーさん イラスト】
もじゃ毛 様
http://www.pixiv.net/member.php?id=3344017




