92話 事前準備と加藤さんの癒し【挿絵あり】
本日2話目
神様との話を終え、超小型のPCが手に入れば、すぐにあの3人に対して行動できるようになる。
ただし一網打尽にする為にも全員がもう一度集まる日を狙う事が重要だ。
あの日一部始終を見ていたおかげで、3人がまとまって行動する日に心当たりがあった。
『オークレバー』の注文があり納品された日を狙えばいい。
オバちゃんに確認してもらったが手紙を渡した日はオークレバーの納品予定日で間違いがなかった。
次、やつらが浮かれ絶好調の日に絶望を味わわせてやるのだ。
それまでは準備をしながら通常業務をこなし機会を待つ。
待っている間にも不幸な目にあう信者は少なくないのだろうが……そこはもうどうしようもない。
せめて犠牲になるのが自分の意思でその道を選んだ人だけである事を願う。
予定を決め終え通常業務に戻る前に、自衛用の巻物を加藤さんに渡しに行くことにした。
俺も信者から見張られているようだから出歩かずにオバちゃんに任せることも考えたが、逆に信者が俺に直接アプローチして来たら、それはそれで好都合。
直接会って3人に『とっておきのプレゼント』をくれてやろうと思いなおし、自分の動きたいように動いてあいつらの都合は構わないことにした。
なんせ今は加藤さんの顔を見て、迷惑をかけている事を謝りたい。
車を走らせ会社に向かう。
そのついでにホームセンターに寄り、とっておきのプレゼントをする為に必要な木材と金づち、五寸釘とバールを購入して車に積みっぱなしにしておく。
会社に到着すると加藤さんはいつも通りPCに向かっていた。まっすぐ加藤さんの所に向かう。
「加藤さん! ご迷惑をおかけしてスミマセンっ!」
「はぁ……迷惑ですか? ……よくわかりませんが…どうも。」
要領を得ていないような加藤さんに俺とオバちゃんのせいで今、加藤さんがどういう状況に置かれているのか、そして加藤さんにハニートラップがもちかけられている事を説明する。
「あぁ……なんか不自然に言い寄ってくる人が増えたなぁと思ってたら、そういう事だったんですね。納得納得。」
「というわけで、いざという時の自衛用に攻撃魔法の巻物を持ってきました。
初級の巻物で動画みたいな超強力な魔法じゃないですが、攻撃力としては十分にありますので、万が一危険を感じた時は使ってください。もしそれで問題が起きたら俺が責任とって絶対に何とかしますから。」
アニから譲ってもらった攻撃系の魔法の巻物。それぞれに『火』『風』『土』『水』の付箋がはってあり、次々と入れてあったエコバッグから取り出して並べる。
「さすがにコレは危なくないですか? 私は睡眠の巻物ひとつだけで十分だと思うんですが……」
「そう仰ると思って睡眠の巻物を5巻持ってきてます。属性系の巻物は念の為です。はい。」
準備しておいた睡眠の巻物5巻が入ったエコバッグを渡す。
「はぁ……有難うございます……使い方は広げて念じればよかったんですよね? 確か。」
「ええ。回復魔法の巻物は使う相手や箇所に触れる必要がありましたが、コレは対象に触れる必要はないです。
ただし、対象との距離が離れれば離れるほど効果は弱くなります。逆にそれを利用して脅しに使う事も出来るので覚えておいてください。
あと巻物を持ってるのが信者に見つかると面倒になる可能性もあるので、持ち歩く際は持っているのがばれにくいようにしてくださいね。」
「はぁ……分かりました。」
「でも安心してください。近日中に俺が全部解決して見せますんで! オバちゃんもすぐに前みたいに元気にしてみせます!」
加藤さんは一度キョトンとした顔を見せた。
「あ、はい。よろしくお願いします。」
が、すぐに普通の表情に戻った。
なんだか加藤さんは覇気がないような、元気が無いように見える。
いつもアンニュイな雰囲気を纏っているが、今日はまた一段と気だるげな感じがするのだ。
突然こんな話をされたら当然だよな。と思いつつ加藤さんを見ると既にPCで仕事に戻っている。
本当にすみません。巻き込んでしまって。と思いながら一度軽く頭を下げて加藤さんを見ると、ちょっと元気が出たような優しく微笑むような顔をしている……PCモニタに向かって。
突然の表情の変化に首を捻りながら加藤さんのPCモニタをちらっと覗くと、画面にはオーファンの男の子達が楽しそうに遊んでいる動画が流れていた。
二度見しつつ加藤さんに向きなおるとモニタから視線を一切外すことなく喋りはじめる。
「今は休憩中ですから。癒しを求めても問題ありません。」
「お……おう。」
「はぁっ………ほんっとうに可愛いですよね。この子達」
「あ。はい。」
滅多に表情を崩さない加藤さんが微笑んだような気がした。
俺は加藤さんにハニートラップは効かなかった理由が理解できた気がした。
なんていうか……なんだ。
加藤さんは大丈夫だ。
うん。絶対。
「じゃ、じゃあ加藤さん。くれぐれも気を付けてくださいね。」
「はい。」
少し安心し会社を出ようと、ふと視線を感じて社内に目を向けると加藤さんと目が合った。
「社長……なんとかしてくれるって……信じますからね。」
「任せてくださいっ!」
加藤さんが優しく微笑んだ気がした。
加藤さんに護身用品を渡し、俺が心配する人間には一定の安全が確保できたように思う。
オバちゃんに加藤さんの面倒を見てもらってガードしてもらう形も考えたが、こっちの行動は信者を通して見張られているので、普段と違う大きな変化を見せたら、警戒される可能性もあるから極力いつも通りにする。
その日から通常業務に戻り、オバちゃんも翌日から職場に復帰しこれまで通りに過ごした。
3日後にPCが、4日後に大型テレビが届いたので、接続してから早速アプリを起動し実験すると、無事に大型テレビをゲートとすることができ、つい手を合わせて神に感謝した。
大きくなったゲートの枠の通りやすさに満足しながら前のモニターを確認すると、これまでゲートとして使っていたモニターは普通のモニターに変わって機能しなくなっていたので、次の実験として小型PCを大型テレビの接続から外し、これまでのモニターと接続して、再度アプリを起動する。
するとこれまで使っていたモニターがゲートとして機能した。
つまり、俺はこの小型PCが接続できる事を条件に、モニターやテレビをゲートにすることができるようになったのだ……これでいつでも作戦を実行できる。
そして数日が過ぎていき、ようやくオバちゃんから鶴来がオークレバーを注文してきたと連絡があった。
俺はその注文の間隔の短さに、つい乾いた笑いを漏らしてしまう。
納品予定日を確認すると……よりにもよってスペシャルギフトのオークションの開催日と重なってしまっている。
納品日をずらす事も一瞬考えたが、叩けるものは早く叩いてしまいたい気持ちが強く、オークションについてはゴードンとエイミーとアイーシャに『長命』のスキルだけは絶対落札して、他に良さそうな物があれば競っていい形で伝えて任せる事にして、俺は鶴来達に集中することを決め、納品予定日に向けて行動を開始した。
【加藤さん イラスト】
もじゃ毛 様
http://www.pixiv.net/member.php?id=3344017




