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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
日本での問題編

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85話 オバちゃんの容体確認

 オバちゃんが倒れた!?

 病院!? と、とにかく病院へ行こう。


 こういう時は自分で車の運転をしない方がいい。

 思った以上に取り乱していたりして正常な反応が出来ない恐れがあるからだ。

 それに気持ちが焦り普段はしない無茶で乱暴な運転をしかねない。


 俺はとりあえず広い道まで走りタクシーを止める。

 乗り込み、運転手に行先を聞かれ口を開けなかった。


 どこか答えられない。


 どこの病院にオバちゃんが運ばれたか知らなかったのだ。

 全然自分が落ち着いていない事を理解し、とりあえずきちんと財布を持っているかを確認すると、ニアワールドで使っている財布しか持っていなかったので謝りながらタクシーから降り、自宅に戻りつつ加藤さんに電話をする。


 どうやら加藤さんも動揺していたようで病院の名前を書いていない事を覚えていなかった。

 改めて財布を持ち家に鍵をかけてからタクシーを拾い病院へと向かう。


 病院は好きじゃない。

 色々と思い出してしまう。


 受付で確認するとオバちゃんは完全個室の部屋を取っていたようで個室に向かいノックをするが反応は無い。恐る恐るドアを開けるとオバちゃんがベッドで眠っていた。

 とりあえず中に入りベッドの横にあるイスに腰掛けてオバちゃんの様子を伺う。


 前に会った時に、なんとなく痩せたような印象を受けていたが……正しくはやつれていたのかもしれない。眠っているのに、とても疲れた顔をしているように見える。

 目の周りも実年齢より歳をとっているように思えた。


 親父が死んでから、俺の面倒を見てくれたオバちゃん

 働きもしないのに、給料が入る状態のまま俺の好きにさせてくれていたオバちゃん。

 異世界に行けるようになって、俺の為に便宜を図ってくれるオバちゃん。


 オバちゃんは俺の為に色々な事をしてくれている。


 俺は……何を返していただろう。

 本来俺がやるべき苦労を全部オバちゃんに任せて、良いトコだけをつまみ食いして。


 ……最悪だ。


「ごめん……オバちゃん。」


 声に出ていた。


「……あぁ……アンタか――」


 オバちゃんが目を覚ました。


「オバちゃん!」

「悪いね……こんなことになっちまって。」


「いや、そんな事より大丈夫なの?」

「あぁ……たいした事ぁないよ……過労で倒れたみたいさ、情けない。」


 過労で倒れる……それくらい頑張っていたんだろ?

 ……俺はそれを手伝う事もなく、ほったらかしにしてた。


「ごめん……オバちゃん。」

「あぁ? なんでアンタが謝るんだい?」

「いや。だって俺。なんもしないで……全部オバちゃんに任せてばっかりで……だから」

「はは。相変わらず優しい子だね……よいしょっと」


 オバちゃんが上半身を起こす。


「……今回アタシが倒れたのはアンタが気にする事じゃないんだよ。

 単純にアタシのミスからの自業自得。身から出たサビさ。」


 オバちゃんは疲れたように息をつく。


「情けないけど、アンタには全部話しておくよ。」


 オバちゃんは少し重い口を開き話してくれた。

 話を聞き要点をまとめると俺の身体は重くなっていた。


 まず今回倒れた原因は、回復の巻物の売り先の連中に脅迫された事。その被害が出ないように立ち回り、その無理がたたって倒れたのだ。


 オバちゃんは回復の巻物を2本セット1,000万円で売っていた。

 その金額に超ビビり、加藤さんもその事を知っているのかと聞くと、オバちゃんは資本金100万円でペーパーカンパニー……回復魔法の巻物やウチの会社として扱いにくいオークレバーといった商品を販売するだけの特別目的会社を設立し、そこを中継させることで怪しい品の売り上げをその会社に集中させる形を取ったらしく知らないらしい。


 そうした理由を聞けば万が一の際のウチの会社の安全と消費税対策を考えての事だと。

 俺や中村君のレシートなんかの経費の処理もそっちの会社に回している部分も多いらしいけれど、あっという間に免税対応範囲の金額を超えてしまったので、節税にはならず当初の予定通りの安全目的の隠れ蓑としての機能のみらしい。


 オバちゃんはガメつい面はあるけれど、人の道に外れるような行動をすれば怒るタイプだから、きっと今回の件も落ち着いたら俺に報告してくれたと思う。そうなる前に限界が来たのだ。


 まぁ別に教えてくれなくてもオバちゃんのおかげで俺は経費使い放題状態な事に変わりなく、正直日本で出る儲けはオバちゃんの好きにしてくれても構わなかったが、きっとそうはしていないだろう。そういう人だ。


 それに俺もニアワールドでオバちゃんの規模と同じくらいまではいかないが結構稼ぎ始めているし受け取る利益としてはニアワールドに行ける分、俺の方がずっと大きい。それになにより俺が日本で販売したところで、そんな高値で売る事なんて思いつかないし実行できなかった……


 オバちゃんの原因の話に戻るが、オバちゃんは『鶴来』という男を介して『サリー』という偽名で宗教団体に向けて回復の巻物を売り捌いていたのだそうだ。


 その宗教団体名は『新世界の風』

 宗教法人としても登録していて最近になって活動が活発になってきた団体。


 売捌いた巻物は『新世界の奇跡』として扱われ、その奇跡を呼び水に急速に会員数を増やし始めたことが活発化の要因らしい。オバちゃんが奇跡の対価として求めたのは、最初は2本1,500万円だったが、6本目を売った頃から新世界の風から、定期購入をするから安くするよう交渉があり、利的には問題ないと判断し隔週で2本1,000万円で売るようになったのだそうだ。


 ただ取扱いの品ゆえに宗教団体から鶴来を介さないサリーとの直接取引の要望が強くなり、鶴来も防波堤になって止めてくれてはいるが団体内の急進派の信者達が暴走し、サリーの情報を探りあてオバちゃんに対する執着・嫌がらせが始まったのだと。


 ひっきりなしに自宅に押し寄せる信者達。

 盲進的なヤツラが一般人の説得なんて聞くはずがない。


 信者達の言い分はこうだ。

 『サリーは教祖様が奇跡を起こすために必要な道具を盗んだ悪者。だが教祖様はお優しいから行動出来ない故に私達が動くのだ』

 と。


 サリーとして『もう販売しない』という選択肢もあったが収入が減る事の懸念と、教祖が本格的にサリーを『悪』と断罪した時の怖さもあり取引は継続させる事にした。


 オバちゃんも元々偽名を名乗るくらいの危機感があったので、異変を察知するとすぐに自宅からウィークリーマンションに住まいを移したり拠点を探らせないように過ごしたりもしたが、慣れないホテル生活なんかのストレス。そして『もしかして』という恐怖によるストレス。さらにウチの会社の社員や取引先に支障が出ないよう気を使ったりするストレス。

 加藤さんや俺に被害が及ばないように気を付ける生活をしていた事で相当の疲れが溜まってしまい、とうとう倒れたのだと。


 倒れたオバちゃんを発見し救急車を呼んだのも会社に連絡をくれたのも鶴来らしい。

 というのも回復の巻物と別にオークレバーの話をしている時に倒れたらしく、鶴来という人もさっきまでは病院に付き添っていたのだとか。

 また明日顔を出しにくるくらいに心配しているらしい。


 話を一通り聞き終えると、オバちゃんはどこか影のある疲れた顔で少し下を向き「アタシももう若くないねぇ……」と、寂しそうに笑った。


 結局のところ、オバちゃんの倒れた原因を作ったのは俺の持ち込んだ『回復の巻物』だ。


 つまり。俺がオバちゃんを倒れさせた。

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