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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
新世界生き残りの為の自分磨き編

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78話 スキルカードハイ

 アデリーの店の前に立ち通り抜ける風を頬に感じる。

 これから命の危険を伴う話合いが行われるかもしれないというのに不思議と恐怖感が無い。


 今の俺は大抵の事は問題なくできそうだ。

 いや、出来る。


 なんていうか……これまでの俺は本気じゃなかった。

 そう。本気じゃなかったんだ。

 だから今はちょっとだけ本気を出してみようかな。


 そうだなぁ……交渉の落としどころはどこにしよう?

 アデリーの糸の能力は希少だし俺の手元には置いておきたい。針子主婦のネットワークだってなかなかだ。


 過度じゃなければ好意を向けられるのも悪い気はしない。

 なんせ、あのフニョンは素晴らしいと思う。うん。


 他にもエイミーの御主人様という立ち位置はアデリーに好かれているから故の立場だし、現状の俺の立場は悪くない。


 だが……やっぱり俺はアイーシャたんペロペロしたいし、アニのレッスンを受けたい。

 そしてウサミミハムハムだってしたいんだ。


 そう。ペロペロレッスンハムハム 全部したいんだ。


 ここだ。

 問題はここなんだ。


 アデリーに現状維持のまま、他の女の存在を認めさせる。


 これが俺の落としどころだな。


 …………ちょっと……ゲスな気もしないでもないけど…いいんだ。

 そう。良いのだ。

 俺はニアワールドでハッピーな毎日を過ごすんだ。ふふふふふ。


 そうと決まれば先手必勝!

 本気の隠密発動していきなり目の前に現れて度肝を抜かせるぞ!

 『アレ!? いつものイチじゃないわ!? 全然違う! あぁ、ダメ! 私じゃ捕まえられないわっ!』

 そう思いしらせてやろうじゃないの!


 ようし……行くぞ。


「はぁぁぁ………超隠密発動っ!」


 ………おおお……やっぱりなんていうかやっぱりガンガン疲れてくる気がする。

 疲れ切る前に、さっさと行って終わらせよう。


 店に入るとアデリーはいつもの2階の作業部屋にいるような気配を感じ、階段を上る。

 階段を上り終え作業部屋のドアに耳を当てて様子を伺うと鼻歌が聞こえた。


 ふふふ。

 何で上機嫌なのかは知らんが驚愕で染め上げてくれるわ。

 ふはははははっ!


 そっとドアを開く。


「おかえりーイチ。」


 …………


 ……



 おやっ?

 おかしいな?


 ……なんか呼ばれたような気がしたよ?

 気のせいだよね?


 現に俺、今もガンガン疲れてっているし。

 隠密発動してるんだから、わかるわけないよね。


「ちょっとーイチ? ただいまくらい言ったら?

 早く帰ってきたから嬉しかったのに。」


 あ、うん。

 ばっちり目が合った。

 これ確実に見えてるわ。


 しかもアレか。


 鼻歌は俺が店に帰ってきたの分かったから、それで出たのか?

 帰ってきた事すらわかってたのか。


「ただいま……………じゃない! お邪魔します。」

「もう毎回なんなのソレ。フフ。」


 部屋に入りドアを閉め、1,2歩横にずれてからアデリーに問い掛ける。


「え~っと……アデリーさんや。俺が分かるので?」

「? 私にイチが分からないワケないじゃない。」


 俺は疲れるだけの能力を解く。

 少し頭が真っ白になったような気がしないでもない。


 ……………


 まだだっ!


 まだ奥の手があるっ!

 ふふん。今日は本気だと言っただろう?


 アデリーは少し首を捻ったが、別に能力の変化に違和感を感じたというよりも、俺の様子や行動がいつもと違うという方が大きそうな顔をしている。


 俺には『魔物調教』がある!

 俺は今日からハッピーライフを生きるんだ!

 そう! この魔物調教で俺好みに躾をしてなっ!


「アデリー、アデリー。」


 手を動かし、コッチ来いのジェスチャーをするとアデリーは編んでいた物を置いて近くへとやってくる。

 気合を入れて右手手の平を前に出す。


「アデリー。お手。」


 アデリーはキョトンとした顔をする。

 そして


「ふふ。なぁに?」


 と、右手の手の平にアデリーが手を乗せてきた。


 よしっ!

 魔物調教はアデリーに効果がある……かもしれない!

 次だ!


「おかわり」


 左手の手の平を出すと、アデリーは手を乗せてきた。


 いいぞいいぞ!

 俺はきっとやれる。


「ふふふ。何かわからないけど、じゃあ次はイチね。 はい。お手。」


 アデリーが右手の平を上に向けて前に出すと、ピシッっと俺の自信に亀裂の入る音が聞こえた。


「ほら、イチ。おー手。」


 ピシピシッっと亀裂がドンドン走る音が聞こえる。


「…………わん。」


「は~い、よくできましたー。

 うふふ。ご褒美にハグしてあげる。

 よしよしよしー。いい子いい子~」


 フニョンに包まれ、俺のさっきまであった自信は音を立てて崩れ去るのだった。



--*--*--



 あれ?


 なんで俺あんなに自信あったんだろう?

 アデリーにスペシャルギフトでスキルを落札して能力を得た事を話しつつ、ふと思う。


 魔物調教の能力を得ている事とさっきの「お手」で、アデリーの気を悪くするかもしれないと思ったが、もし今言わなかったとしても結局、後でエイミーが来て俺が手に入れた能力を話すからバレる。

 それならば『後ろめたいから隠したな?』と思われるよりは、最初から『全然悪意ないよ。なんとなく興味で試してみただけゴメンネ』と伝えておく方が良い。


 実際、


 「ハァ……仕方ないわねぇ……やっぱり魔物とか思われるのは正直傷つくわ。

 はぁ…………ん? でも……私を調教したかったって事?

 あら? ……調教して何をさせたかったの??

 そんなの手に入れなくったって普通に言ってくれたらいいのに。

 うふふ。 ほら、言ってごらん? いーち♪ ほーら。」


 と、俺が微妙に火傷を負うような責めを受ける程度で済んだ。

 隠密の能力がバレバレだった理由を聞くと、こちらも簡単に教えてくれた。


「え? だってわかるでしょ?」


 だ。


 理由になってないが……充分すぎる答えだ。

 まだ俺はアデリーには敵わないと思い知らされ『他の女の存在を認めさせる話』を始める勇気は既に微塵もありはしない。

 だってポリポリ怖いねん。


 なので、とりあえず空気をごまかす為に


 「いや~。なんか突然急にデザート作りたくなってさー。

 俺がデザート作ったらアデリーが食べるか聞こうと思って。あはは。

 ついでに能力手に入れたから使ったら驚くかなって思ったけど全然だったね、あははは。」


 と、誤魔化した。


 手に入れた能力を試す為に帰ってきた。なんて言ったら藪蛇だから……まったく関係ない理由をでっちあげて、とぼける方がいいと思ったんだ。


「え~! イチが私の為にデザート作ってくれるの!? 嬉しー! もちろん頂くわ♪」


 というわけで、今……少し落ち込みながら日本の自宅で卵、グラニュー糖、牛乳を撹拌している。

 ちなみに作っているのはプリンだ。

 簡単に作れるし、材料的にもきっとアデリーも嫌いじゃないだろう。


 料理はいい……

 ……段取りを組んだりして作業していると……無駄な事を考えない。


 プリンは本格的に作る場合は蒸すが、今回はただ誤魔化す為だけに作るから、そこまで気合を入れるのも面倒なのでガラスや陶器のコップにプリン液を入れたら、そのまま鍋に並べて湯煎にかける。

 これだけでできるのだから楽だ。


 作業と洗い物を終えると、ポツンと待ち時間が出来たりする。


 …………なんであんな自信あったんだろうな。俺…………はぁ。


 とにもかくにも先走って話を切り出さなくて良かった。


 プリンは無事そこそこの出来栄えで固まり、粗熱を取ったり冷蔵庫で冷やしていると、おなかが減っている事に気が付いたので、アデリーの所に夜ごはんも作って持っていくことにした。


 といっても、やる気の無さからインスタントラーメン塩味だが。


 アデリーも食べるだろうと思って、2袋作ろうかと思ったが、そういえばエイミーも来るとか言ってたのを思い出し、3袋を一気に大きめ鍋で作る事にした。


 3人で食卓を囲むのに麺だけというのも味気ないので野菜炒めも作る。野菜炒めは付属の粉スープを混ぜつつ炒め、鍋のラーメンの上にそのままかける。

 もちろんラーメンに卵を3個落としてある。


 鍋と取り皿フォークと箸を持ってニアワールドに行くと、エイミーもやはり店に居たので、とりあえずみんなで御飯の時間にする事にした。


「イチって料理上手よね。とっても美味しいわ♪」

「コレは……なかなか癖になる味ですね。沢山食べたくなります」

「針子さん達が持ってきてくれるご飯って、ほぼ毎回肉だよね。今回も肉だし……でもオークって慣れると超美味い。固いけど」

「だって私お肉好きだし。」


「私はご主人様の野菜炒めが癖になりそうです。」

「お馬ちゃんは野菜好きよね。持ってきたのも野菜サンドイッチだし。」

「はい。なんというか無性に食べたくなるんです野菜。」

「へ~そうなんだ。あ。じゃあ今度日本から野菜ジュース持ってこようか? ニンジンジュースとかもあるよ?」

「わぁ! 嬉しいです!」

「あら? なんで私に無くてお馬ちゃんにプレゼントがあるの? おかしくない?」

「「 すみません 」」


 うん。

 平和な時間が一番だ。

 もう忘れよう。


 今日別に何も話そうとしてなかった。

 怖い話し合いの予定なんて元からなかったんやー。


「っと、そろそろいい頃合いだからデザート持ってくるよ。」

「やったぁ~~! 待ってたわ~楽しみー!」

「え? 今日はデザートがあるのですか!?」

「そうよー! イチが作ってくれたの!」

「へ~。ご主人様は器用ですね。」

「お馬ちゃん? イチが折角作ってくれたのに反応薄くない? ねぇ?」

「キャーー!! ご主人様のデザートが食べられるなんて感激ですぅっ!」


 エイミーの強制された感動に苦笑いしながら自宅に戻りプリンとスプーンを3つずつお盆に乗せ、またニアワールドへ戻る。


「はーい、お待たせ~。 何の変哲もないプリンですー」

「「お~~。」」


 二人とも一口食べて、かなり喜んでくれた。

 俺も食べようかな。


 そう思った瞬間、店の入口の方から聞き慣れた声が聞こえる。


「イチはーん!! イチはーーーん!! コレの詳しいこと教えて―な! この時計っちゅーやつ!!  コレとんでもないもんでっせ!」

「わ、私の時計返してよ! ゴードンさん!」


 俺の時間が一瞬止まる。


「あら? こんな時間にゴードンよね? 折角イチの美味しいプリン食べてるのに無粋ねぇ」

「そのようですね。 プリン……食べると無くなるのが惜しいです。美味しい。」


 問題は無粋云々じゃない。

 小声で聞こえた『返して』の声。


 俺が上げた時計の持ち主がここに来ているという事の方が大問題だ。

 というかニアワールドで時計を持っている人間なんて俺は一人しか知らない。

 なんせ俺が贈ったからな! アイーシャにっ!!


「あ、あはは。 俺に用みたいだからちょっと行ってくるよ。

 よ、よかったら、俺まだ手を付けてないからさ俺のプリン食べちゃって、まだ沢山作っちゃったから。

 あははは。ゴードンさん。突然だなぁーあははははは。」


 俺は扉を締めると同時に階段を駆け下り、飛び出す。

 そしてそのまま走り出した。


「よぉーゴーードーーーンさーん。

 教えて欲しけりゃ俺を捕まえてみろやー!!

 捕まえる事が出来たら教えてやるわーーーっ!!」


 わき目も振らず風になった。

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