74話 オークション終了
本日2話目
「白金貨2枚と……金貨1枚。」
貴族の若い男が俺をチラ見しながら上乗せをしてきた。
様子を見ていると、どうやら張り合うつもりと考えて良さそうだ。
さぁ、どうする。
ジワジワ競り重ねていくか、それとも一気に突き放して様子を見るか?
俺は……この能力はどうしても欲しい。
それなら相手の心をできるだけ早く折るべきだ。
腕を組んで熟孝する事もなく10秒で結論を出し右手を挙げる。
「白金貨3枚。」
結論を出した俺は、もう貴族の男を見る必要はない。
相手を見て気にするような真似は無駄に敵愾心を煽る事になりかねないだろう。
……しばしの沈黙の後、貴族の若い男の声がする。
「白金貨3枚と、金貨1枚」
「白金貨4枚。」
すぐさまに上乗せする。
相手が上乗せして来たら機械的に上限まで上げて心を折るまでだ。
俺の上乗せの様子を感じ取ったのか貴族の男から声は上がらなかった。
俺は『魔物調教』のスキルを無事に落札する事ができ、係員から2枚目となる引き換え券を受け取る。
残りの予算は白金貨4枚と、金貨4枚。
……まだ明確にポリポリ回避を確信できるような能力は手に入れていない。
これまでのオークションの様子を見ていると欲しいスキルが出品されたとしても、落札には少し心もとない予算だ。だが運が良ければもう一つくらいのスキルは落札できるかもしれない。
一つ心配な点としては、今の3つのオークションが終了した時点で、俺が2つも落札してしまっている事。黒髪のせいもあってか、何というかさらに注目が集まっているように感じないでもない。
「はい、落札有難うございましたぁー! んでは続いてのスキルぅ~。エントリーナンバー4!
さぁ、貴族の皆さん! 大っ変お待たせしましたぁ、お待ちかねの素晴らしいスキル!
激しい競りになりそうな予感がっ既にビンビンしておりますよー!
言わずもがなエルフからの出品ん~!
スキル『長命』
内容は『10年分の寿命』!
競りの開始価格は……白金貨1枚から! 入札単位は金貨1枚!
貴族の皆さん! 準備はいいですかぁ!? さぁ張り切ってスタートゥっ!!」
「白金貨2枚」
「白金貨3枚!」
「白金貨3枚と金貨5枚」
「白金貨4枚と金貨5枚!」
開始と同時にそこかしこから入札の声が上がり、あっという間に俺の予算を超えていく。
俺はと言えばスキルの内容に驚きが隠せない。
これは『寿命を買える』という事なのか?
成り行きを見守ると、白金貨12枚と金貨7枚で、恰幅の良い貴族が落札した。
なんと次の競りのスキルも『長命』『5年分の寿命』が出品され、別の貴族風の男が白金貨6枚と金貨5枚で落札。
その次のスキル『風の魔法』が発表されると、貴族たちの大半が席を立ちオークション会場を後にし始めた。この様子を見ていれば嫌が応にも多くの貴族は、このオークションで最初からスキル『長命』を目当てに参加していたという事が伺い知れる。
スキル『長命』が、どういった効果なのかはスキルの受け渡しの際に確認できるようであれば聞いてようと頭の中に強くメモを残す。
もしスキルの効果が『若返り』で、それを日本に持ち込む事が出来るとしたらとんでもない金になる。
10年の若返りが白金貨12枚と金貨7枚。日本円換算で1270万円、5年が白金貨6枚と金貨5枚だから650万円で落札できていた。
日本でなら、5年の若返りでも1億円出しても欲しいという人間だっているだろう。
世界規模で考えれば10億出しても、まったく惜しくない人間だっているはずだ。
コレは……金のニオイがプンプンするぞ。
なんとしても落札する為にもこれからガンガン金を貯めなきゃならん。
なんてことを考えながらオークションの続きを眺める。
6番目の出品スキル『風の魔法』。
内容は『かまいたちを発生させて切り傷をつける』から『少し離れた距離からでも木の枝くらいは切り飛ばせる』という物。
あまり興味を惹かれなかったので、スルーして成り行きを見守ると、身軽そうな細い男が白金貨3枚と金貨3枚で落札した。
7番目の出品は『土の魔法』。
『土で固い棘を作る』から『土の壁を作って防御できる』という内容。この魔法は色々な利用法が出来そうで少し興味を惹かれたがスルー。白金貨4枚と金貨3枚で残っていた貴族の男が落札。
8番目には、初の『強制』が出た。
『火の魔法』まで『ジャイアントが近寄れない火力でファイアーウォールを作る事が出来る』という内容で出品されたので、火の魔法欲しさに競りに参加した。
が、魔法使いのような男が白金貨6枚と金貨2枚で落札し、能力を手にする事は叶わなかった。
9番目が最後らしく、2件目となる『強制』でスキル『俊足』が出品された。
内容は『一般人の認知の追いつかない速度で体力が続く限り移動する事が出来る』これも参加はしたが、白金貨8枚金貨3枚という高額落札品となり手も足も出なかった。
『強制』になると高額の競りとなるということが理解できたし、2つは落札できたので今回はよしとしよう。
それにしても……俊足の能力を手にして隠密併用して使ったら、まさしく忍者になれるんじゃないだろうか? そんな妄想をするとテンションが上がる。
「それでは皆様、また次回のオークションをお楽しみにぃー!」
司会者が締め、参加者たちは次々と会場を後にし始める。
俺もはっと現実に戻り、その後に続く。
会場を出るとすぐに係員に声をかけられ精算を求められたので、エイミーを呼びに行くことにした。
が、付き人達もオークションが終わる事を知らされていたのか通路からこっちに向かってくるエイミーの姿が目に入ったので、手を振って自分の所に来るように呼び寄せ精算をお願いする。
ふと視線を感じ、そっちに目をやると『魔物調教』を競り合った貴族の若い男が、俺とエイミーを交互に見ているのが目に入った。
貴族の若い男は、なにやら合点がいったように数度頷いて俺に向き直り、俺とバッチリと目が合う。
『すわっ、貴族に目をつけられてしまって、何か文句を言われるのか!』
そう気を揉んだ……が、貴族の若い男は俺に向かって、ウィンクとサムズアップを送ってきた。
『頑張れよっ! 同類っ!』
そんな強烈なテレパシーが飛んできたような感じ、気が付いたら何故か俺もサムズアップを返していた。
貴族の若い男は満足そうにまた数度頷き、そして背を向け軽く右手を挙げて『またな。兄弟』とジェスチャーを残し、ネコミミ付き人と共に去っていった。
……よくわからないが…………アイツはきっといいヤツに違いない。
ふとそう思った。




