67話 パーティを組んでみる 【2点挿絵あり】
本日2話目
ゴードンの館からの帰り道に堪能させられたフニョンの魔の手から理性をフルに稼働させ、必死に日本の自宅へと脱出する事ができた。
あの安心感は危ない。あの安心の先にどんな未来が待っているかは……考えない方がいい。
日本へ帰り色々あったから、さっさと寝ようと思ったのだが……なんとなく回収したビデオカメラの資料だけは確認しておいた方が良いと思い、ちょっとだけ異世界についての研究を始める事にした。
ビデオカメラの映像は、何というか研究対象の二人の肝心な所が丁度よく微妙に見切れていて、見えそうで見え……た! あれっ!? のような、いい仕事をされてしまい、気が付いたら深夜を軽く回っていて、自分の研究熱心さに少し悲しくなった。
翌朝は土曜日という事もあり会社も休みだったので、日本で仕入れをした後そのままニアワールドへと向かい、アデリーに卵を渡してからカメラ3台と三脚を担いでブライアンの所へと向かう。
ブライアンの店ではゴードンが約束通りに小間使いを通して概要を話してくれており、ゴードンの言い分とこちらの希望に関して齟齬が無いかだけを確認し、問題は無かった。
どうやらブライアンは儲けのニオイを感じたらしく超ノリ気でアドバイザーになってくれた。本命のアイーシャにもアドバイザーになって欲しい旨を打診をすると喜んで引き受けてくれて一安心。
大事な話の確認が取れたので、待機していた小間使いにゴードンへの報告に走ってもらい、俺はアニの所へと向かう事にした。
ブライアンとアイーシャにこれからもう一人のアドバイザーに会いに行く旨を告げると
「ふぅん。俺らと同じアドバイザーね……アイーシャ。色々付き合っていくことになるだろうし、どんなヤツか見て来てくれ。」
ブライアンからアイーシャに業務命令が出て、アイーシャと二人で並んで中央広場へと向かう。
アイーシャは嫌な顔一つせず、俺が大量にもっている荷物を少し持ってくれて、なんとなくデートみたいな気分で嬉しくなる。
「ねぇイチ。もう一人のアドバイザー候補ってどんな人なの?」
「えーっと、中央広場で巻物を売ってる人で『アニ』って人なんだ。」
アイーシャが怪訝な顔をする。
「アニ……って、もしかして女の人?」
「あぁ、うん。女の人でチョコとか販売してもらう事になってるんだ。」
チラリとアイーシャを見ると、どこか驚いたような顔をしている。
その表情に少し疑問を感じながらも足を進めているとアイーシャが慌てたように続けた。
「そ、そっか。イチって女の人の知り合いが居たのね。」
アイーシャの驚いて、つい発したような言葉にゴードンに『不細工』呼ばわりされた事がフラッシュバックする。
『ニアワールドは美形が多すぎてブサイクの判断基準が狂ってるんだよ! コンチクショー!』
そう強く思った。
そして、どこか慌てたような雰囲気で何かを考えているアイーシャを見て思う。
『女の知り合いがいないくらいの不細工だって思ってたって事だよな……アイーシャたんペロペロの道のりはまだまだ遠い。』
そう思い至り、一人落ち込む。
落ち込んだ内心を隠しつつ上辺の会話をしていると、程なくアニの下へ辿り着いた。
「おぉう……」
アニはいつもの売り子姿とは違う、しっかりとした戦闘用と思わしきローブ姿で立っていた。
凛々しいその姿を見て思わず感嘆の息をつく。
「おはよ、イチ。魔法を使う準備はバッチリよ。」
そう一言告げ、ウィンクをするアニ。
戦闘用にも関わらず胸元は開いてるんですね。
露出が高いんですね。素晴らしいです。
心の中で賞賛を送りまくる。
もちろんチラリと隣の屋台のにーちゃんに目を向ければ鼻の下が伸びきっている。
アニの屋台には別の中年の女性が座っているのが目に入り、代わりの店番の魔法使い仲間なのだろうことが推測できた。
「おはようございます、アニ。
まず先に確認なんですがゴードン商会から話は来ていますか?」
「ええ聞いてるわよ。なんか面白そうじゃないの。乗ったわ。」
この後、アニとブライアン同様に内容の齟齬が無いかを確認し、予定していた全員の了承を得る事が出来てホっと胸をなで下ろす。
ふと袖を引く気配を感じて目線をやるとアイーシャが営業スマイルをしていた。
いつもと違う貼り付けたような笑顔に『仲間になるんだからさっさと紹介しろ』という意思を感じ、慌ててアニに紹介を始める。
「あ、そうそう! そのアドバイザーなんだけど……アニの他に後二人の人にもお願いしてるんだ。
で、その内の一人が来てくれてるから紹介するよ。」
アイーシャが俺の前にズイっと出る。
「どうも、初めまして。
イチと仲良くさせてもらってる、アイーシャ・クナナンです。」
「あら? ……へぇ。初めまして、アニー・クラウディオよ。
私もイチに色々お願いされてるのよね。仲良くしましょ。」
「へぇ~、そうですか。」
「えぇ~、そうなのよ。
今日もこれから、イチにお願いされてのデートだし。」
アイーシャがバっとコッチを振り返る。
はは。言わんとすることは分かっておりますぞ。『不細工が美人とデート?』って驚きの顔ですよね。分かります。
軽く溜息をつきながらアイーシャに向きなおる。
「ははっ、デートじゃなくて依頼なんですけどね。
俺ってまだ本格的な魔法を見たことが無いので見せてもらいたくてお金を払ってお願いしたんですよ。」
アイーシャは納得したように軽く数度頷きアニに向き直り、笑顔を作った。
……二人の様子を見ていると何やら、情報交換だろうか話をしたそうにも見え、俺は閃く。
「あ、そうだアニ。今回は街の外に出るって事で良かったんでしたっけ?」
「えぇ、そうね。街の外へデートよ。」
アニがニッコリ微笑む。
「じゃあ万が一の時の為に護衛のあてがあって、お願いしてたんで、そいつちょっと呼びに行ってきます。俺がそいつを連れてくる間、アドバイザー同士ででも交流しててもらえませんか。きっとこれから長い付き合いになると思うんで。
ついでに、ちょっと俺の荷物もここに置いていきますんで、すみませんが見といてください。宜しくお願いします。」
俺。冴えてる。
アドバイザー同士の連携も必要だろう。うん。
さっさと無能系衛兵を呼びに行くことにした。
スイッチバックの坂道を上り無能系衛兵を見つけ話しかけると「要請により、調査へ行ってまいりますっ!」と平然とギャビィが上官に嘘報告をし、どこか呆れた様子の上官らしき人に見送られながら中央広場へと向かう。
アニの屋台に戻ると二人共、俺が離席したままの立ち位置で笑顔で話をしていた。
話が熱中すると、その場から動かない事もよくある。うん。どうやらアドバイザー同士の交流は成功のようだ。
今後チームとして動く上でアドバイザー同士の仲もきっと重要になるだろう。
「お待たせしました。護衛役を連れてこれたんで準備整いました。
ギャビィ。悪いんだけどコレ運ぶの手伝って貰ってもいい?」
「おう、いいぜ。兄弟。」
いつの間に俺に兄弟が出来たんだろう。
なんて野暮な事は思うだけで口と態度には出さない。
「さぁて、じゃあ私はイチとデートに行くわね。
さようなら。アイーシャちゃん。」
アニがニッコリ微笑みアイーシャに別れを告げ機材を持つ俺の腕を組んできた。
おおう役得。
胸のふくらみ。
プライスれす。
天国を感じた視界の端に、隣の屋台のにーちゃんの怒りで目が血走っている姿が入り正気に戻る。それにアイーシャも何となく不満そうな顔をしているように見えた。
少し慌てながら
「ははは。あんまりからかわないでくださいよ。」
やんわりアニが組んできた腕をほどかせてもらうと、アイーシャの機嫌は悪いままにしろ少し和らいだような気がした。
なにより後からアデリーにニオイ云々って言われる可能性がある……と思ったのが、ほどく大きな理由だったのは内緒だ。
「ねぇ……イチ。
私も一緒に見に行っていいかな?」
アイーシャがニッコリと笑顔を作って言った。
渡りに船。人手が欲しかったし、なによりアイーシャたんペロペロ作戦が継続できる。
「もちろんですよ! 実は人手が欲しいと思ってたんで来てくれると嬉しいです! アニさんもいいですよね?」
「今回の依頼主は貴方よ……イチの好きにしたらいいわ。」
アニは肩を竦め軽く笑った。
こうして、俺、アニ、アイーシャ、ギャビィの4人で、街の外へと出る事になったのだった。
どうか良い動画が撮れますように。
【アニー・クラウディオのイラスト】
朱ぃたみふる様
http://www.pixiv.net/member.php?id=960665
【アイーシャ・クナナンのイラスト】
もじゃ毛 様
http://www.pixiv.net/member.php?id=3344017




