65話 変化の兆しと、奇跡の価値 【挿絵あり】
「……うううう。
なんでワイ……こんなことになっとるんやろか……あっ。」
「ねぇアデリーっ! もうやめたげてよぉっ!」
ゴードンは立派な服を着たまま空中でM字開脚の状態で天井から釣られている。
俺はゴードンがあまりに可哀想でアデリーに懇願する。
こうなった経緯は、エイミーに裏切られ傷心でガックリと膝をついたゴードンをアデリーが怒りそのままに、あっという間にM字開脚亀甲縛りにして釣り上げた。
そしてそのままアデリーによるお話が行われ『イチに対してハニートラップは仕掛けません』と、ゴードンは固く約束をさせられ、それに満足したアデリーは大きく頷いていた。
だが、このゴードン。めげる事なくアデリーに俺と話がしたいと請い、俺も元々ゴードンと話をしたかったので渡りに船で頷いたのだが、アデリーはハニートラップ予告が気に食わなすぎたようで危険人物と認定し俺と交渉させる事を渋った。
ゴードンは粘りに粘って、それに折れたアデリーが
「請われたから仕方なく話をさせてあげる。気に食わない事言ったら即打ち切り」
と、恩を売る形で俺とゴードンの話がはじまった。
ただ……何故かゴードンのM字開脚亀甲縛りが解かれる事は無く…ゴードンと俺は何とも言えない恰好と空気のまま話をする。
俺はペン等に関して仕入れができる事やそれらの品を売れる事、ゴードンは商会で可能な事を話、お互いにとって利になる話をゴードンの恰好を見ないふりして進める事が出来た。
俺がその他提供可能な物として、ノートやメモ帳、テープ等、その他多種多様にある事を伝えた際のゴードンの反応は凄まじかった。
エイミーが羨ましそうに見るくらいにグイングイン揺れた。
今回話をした感触として、ゴードンは商人としては有能なのは間違いない。
ただ、値切り等の事に関してはしつこそうな印象を受け、仕入れ値を決める話にも要注意が必要だと感じた為、圧倒的にニアワールドについての知識の足りない俺の知識の補填の為、値決め等には雑貨通りで店舗を営んでいるブライアン(とアイーシャ)、屋台を営んでいるアニを値決めの際にアドバイザーとして同席させる事を了承させた。
アデリーが『私は?』的な顔をしたが、
「アデリーは家にいるのが好きだろうから邪魔したくないんだ。ははは。」
と、棒読みをしたら
「そうよね。帰った時に私が居ないとイチ寂しいものね。フフフ。」
と不吉な言葉を返されたから聞こえないフリをした。
ブライアン(とアイーシャ)とアニには事後承諾になる為、翌日俺が話をしに行こうと話すと双方から話が言った方が信頼性も増すとゴードンから提言があり、ゴードン商会からも明日の朝一に小間使いを走らせて説明をしておいてくれる事になった。
頭数に入れた全員が参加してくれなくても、この中の誰かが協力してくれれば問題は無いだろう。
荷の受け渡し等については俺の能力を明かす事は避けたいのでアデリーの店にエイミーが小間使いなどを連れて取りに来る形で落ちついた。
また、俺が持ち込む事で職を失う可能性がある者については、その職で生み出される物をまずは俺が売れるか試す……つまり日本へ持込んで売れるようであれば販売に取り組む。
日本での販売が難しいと判断された場合は、職の継続が不可能な職人については商会で可能な限り別の職を斡旋をしてくれることになった。
「よっしゃ! 概要もまとまったし、ひとまず握手や!」
ゴードンの言葉の後、自分が握手すらできない恰好である事を思いだしての冒頭である。
アデリーの糸から解放され、ゴードンとガッチリと握手を交わし、こうして俺はニアワールドで『商会』というバックボーンを得た。
その後インク壺とペンや、羽ペンをお土産にもらい、アデリーフニョンのお姫様抱っこで店へと戻るのだった。
--*--*--
場所は変わり日本。
湯気が立ち上り、時折『ちゃぽん』と水音がなり、湯船に誰かが入っている浴室である事がわかる。
浴室の雰囲気から女が湯船につかり、疲れを癒しているようだ。
「ふぅー。風呂はいいねぇ~」
今はもう無い、かつて傷のあった、たるんだ腹を撫でる。
……オバちゃんである。
「あ゛~……」
オバちゃんはリラックスしている。
ふと今は亡き社長の忘れ形見で、なにかと手のかかる子供の事を思いだした。
「ほんとにあの子にも困ったもんだよ……一気にむちゃくちゃ使いやがって。
許可を出したはいいが、いきなり50万も使うバカがどこにいるってんだい!」
飽きれながらも湯につかりながら考える。
あの子はきっと、これからも金を使う。
やる気になって活動的になってくれたのは嬉しいが……金を使われ過ぎるのはダメだ。
おばちゃんは傷の無い、たるんだ腹を撫でる
ただ……あの子の持ってきた物は…間違いなくとんでもない代物だ。
古傷が跡形もなく治るだなんて、自分で体験した上でもまだ信じられない。
「まるで……奇跡みたいだよ」
奇跡を手にする事が出来る立場にいるが、それで会社をつぶす訳にもいかず、おばちゃんは奇跡と経費を天秤にかける。
が、天秤がなかなか動かず、ため息を付く。
「あ~あ……奇跡が金になりゃあねぇ」
自分の発した言葉から、何かカチリとピースがハマる感じがしてオバちゃんは目を見開く。
「奇跡を……金に?
……高い金を払っても奇跡が欲しいヤツ……いるじゃないか。
あまり相手にしたくないけど……巻物が2本あればアタシが表に出なくても渡りは付けられるな……」
売りつける相手に心当たりがあったのか、おばちゃんはニヤリと笑った。
「ふふふっ、奇跡! 金にさせてもらうよ!」
おばちゃんは勢いよく立ちあがった。
【イラスト】
もじゃ毛 様
http://www.pixiv.net/member.php?id=3344017
ご覧のとおりのセクシーなイラストも書かれる絵師様なので、URLを閲覧する際は、人目のない所でこっそり開きましょう(重要)




