48話 解決しなくてはならない課題
「わかってはいたんだよな~……」
中央広場のアニの屋台へ向かいながら屋台に並ぶ物を品定めする。
だがやはり『日本で売れる』と確信できるような物を探しても無い。
屋台を一通り見ている内に『チョコください』と2回エンカウントした。うち一つは集団だったので、とりあえず近くでじっと見ていたオーファンにも無理矢理あげておく。
オーファンには明日アデリーの店に来て貰ってボールペンをギルドに運んでもらわなければいけないから恩を売っておくに越したことはない。
……それに喋れないオーファンは、俺から欲しくても貰えないんだから、集団で言われた時に近くにいるなら、ついでに少しあげるくらい問題ないだろ。
そうこうしている内にアニの所にたどり着く。相変わらず暇そうにしていた。
「やぁ、アニさん。」
「あらさっきぶりね。チョコのお兄さん。お兄さんが来るとザワザワしだすからすぐにわかるわ。」
「はは。この黒髪やら子供に囲まれたりやらで目立ってますからね。お恥ずかしい」
アニの店に並べられている品を見る。
魔法の巻物なら珍しいが、まずは日本で実際に使えるのかを実験する必要があるし、そもそも攻撃目的の物は安全性が低く、売り物にはできないだろう。
例えば、火の魔法の巻物を買って売りました。購入者が実際に使って誰かを焼いてしまいましたとさ。
……そんなんなったら会社潰れるわ。
なら害じゃなく癒す回復魔法の巻物を病院に持って行って試してみるか? 試す価値はありそうだが……なんか変な事にもなりそうな気がする。
まぁ、でも実験として試してみる分にはいいかもしれない。
「ねぇアニさん。回復魔法の巻物について教えてもらえますか? 今売っている物ってどの程度の怪我を治せるもんなんです?」
「そうね。軽度の回復魔法だから瀕死や深手を負った状態には焼け石に水よ。軽い切り傷とかそういった状態なら回復できるわ。」
「例えばですけど、指が切断されたとかだったら治りますか?」
「うーん。剣とかで綺麗に切られたのだったら治るわね。多分だけど。」
「おいくらでしたっけ?」
「銀貨4枚よ」
軽く右手を顎に当てて考える。検証する為にも1つは欲しい。
といっても自分で使うつもりはないから、怪我をしている人を探して使う必要がある。
で、その人が軽いけがじゃなく、もし焼け石に水状態で1回じゃ治り切らないヒドイ怪我だった場合はお礼……謝礼金ももらえないだろう……だが痛みが減れば多少はお金もらえるかもしれない。むしろ使えなかったら逆に怒られるだろうしなぁ……
「巻物を使う時ってどうすればいいんでしたっけ? 巻物を広げて回復を念じればいいんでしたっけ?」
物語では攻撃手段だったけどそんな感じだった。
「そうね。だいたい合っているけど、ちょっとだけ違うわね。回復魔法の巻物の場合は対象に触れる必要があるわ。『広げた巻物を持った状態で対象に触れて回復魔法の発動を念じる』と使えるわよ。」
「病気とかは治ります?」
「病気はこの魔法じゃ無理ね。少し系統が違うもの。」
「じゃあ……治りかけの怪我とかはどうでしょう?」
「それは治るわよ。」
「それじゃあ古傷はどうです?」
「う~ん……試してみないとって感じかしらね。多分イケると思うけど。」
もう一度軽く右手を顎に当て考え決断する。
「回復魔法の巻物を2つください。」
「あら有難う! すごく嬉しいわ!」
アニが巻物を取ろうと前かがみになり谷間が恐ろしいほど強調され自然と目が向く。
だって、仕方ないじゃない。
この美人イケメンが多い中でさらに綺麗どころなんだぞ?
そんな美人が『買ってくれるならサービスでじっくり見てもいいわよ、ほらほら』くらいのノリで谷間を強調してるんだ。逆に見ない方が失礼だろ!
金貨を渡しておつりを貰う。
アニが回復魔法の巻物を手渡してくれたので手に持って観察してみる。何となくだが紙自体が緑色がかっているような感じがした。
「じゃあチョコと沢山買ってくれたお礼に、大サービスで睡眠の魔法の巻物もつけてあげるわ。こっちは触れなくても大丈夫よ。ただ広げて手を向けて念じればそれだけで使えるわ。」
灰色がかった巻物もくれた。
「有難うございます。凄く嬉しいです! あぁそうだ。チョコもってきたんで、睡眠の巻物のサービスのお礼にまた置いていきますよ。好きに使ってください。」
チョコ5袋を取り出し渡す。チョコが無くなって空いたスペースに巻物を鞄に詰める。
「あらあら。サービスしたつもりがサービスし返されちゃったわね。ん~……じゃあお返しに私の胸をじっくり見てたのも許してあげるわ。」
え? 見ちゃダメだったの?
「あ……すみません。アニさんがあまりに魅力的だったので、つい……大変失礼しました。」
「あっははは! いいのよ、わざと見せてたんだから。」
ですよね~~……
「あぁ、もう一つあったんだった。アニさんにクリーンの魔法をかけて頂きたい時って、ここに来てお願いしたらかけて貰えますか?」
「えぇ大丈夫よ。クリーン程度なら……そうね。鉄銭3枚で引き受けるわよ。」
「アニさんは今日はいつまでこちらにいらっしゃいます?」
「いつも日が暮れてきたら帰るわ。仲間と巻物作ったり趣味で魔道具作ったりしてるから、夜に私に会いたくなってここに来ても会えないわよ。うふふ。」
「分かりました。」
魔道具か……
物語に出てきた魔道具は一時的に姿を消す魔法具とかそういった物だった……日本で売るとなると使えたとしても悪用されるリスクが高い。
それにそもそもの話として売る事自体も大変だろう。
『この首飾りをつけると姿が見えなくなりますよー』なんていっても眉唾だ。そんな胡散臭い物に大金出して買うアホはいないだろ。
売る場合は実際に使用しているのを見せるなり体験するなりしないと販売にはつながらないだろうな…………ん?
……実際に使用しているのを見せる?
『動画』……か。
動画で広告収入を得ている人がいると聞く。誰もが見たくなるような動画を公開して広告収入は……もしかするとアリかもしれない。
ハっと気づき、アニをじっと見つめる。
人に見られる事に慣れているのか、アニはウィンクを返してきた。
谷間丸出しの美人が、なんか魔法を使っている動画とかあったら……超見たくなるよね?
「アニさんって、どんな魔法が使えるのか伺ってもいいですか?」
「私? 私は、攻撃魔法なら大体イケるわよ?」
これはなんか現実離れした良い動画が取れるかもしれない。
「アニさん! アニさんのお時間を一日頂きたい時って、どれくらいの対価があればお時間を頂く事が出来ますか!?」
アニは一瞬きょとんとした顔をした後に艶のある声を発する。
「うふふ。私のは……高いわよ」
笑うアニと対照的に、隣の屋台のにーちゃんが睨んでる気がした。




