43話 午後の検討とお付き合いチャンス 【挿絵あり】
アニにチョコを渡し、ニアワールドで午前中にやろうと思っていた予定も無事終了。とりあえずアデリーの家に向かうべく中央広場を出た。
時間を確認すると10時50分。
これからやるべき予定と、突発でやらなくてはいけなくなった事を歩きながらまとめる。
まずは日本に戻り、アデリーが出したカッチカチ糸を工業試験場へ持っていき堅牢度や強度確認の依頼と質問されていた切断方法を伝える。
その後は会社に顔を出して加藤さんがきちんとボールペンを発注したかの確認と費用の確認。できれば写真が売れているかも確認したい。
加藤さんの作業に問題が無ければ黒の髪染めを買ってから家でナポリタンを作って、女神の飯屋に持込しつつ食事。その際にパスタの乾麺とウイスキー4リットルも持っていて売り込みをしても良い。
後、どうせまた中央広場近くに来るのであれば、チョコの残りも全部持ってきてアニに渡してもいいかもしれない。
屋台の人間相手にアニがチョコを売るとしたら、今渡した分だけだと明らかに少量すぎるからな。
どうせ髪染めも持ってくるつもりだし……荷物が増えすぎてもなんだから、どっかでアプリ起動できる所を探しておく必要もあるな。
……午後にやる事はこれくらいか。
今回はギルドから予想外の仕事がもらえたけれど、そもそもの話として俺が一体どれくらい稼いだらいいのかという目標が決まってないのは実は問題だよな。
ふむ。目標金額はどの程度が妥当か一回考えておこう。
単純に豪華に観光を楽しむとして……毎食銅貨2枚は必要と考えると1日銅貨6枚。
家賃は日本に帰るから不要とはいえ、突発的に宿に泊まるとかそういった事も考えると高級宿だと銀貨2枚とかすると物語にはあった。
という事は、1日あたり銀貨3枚使えるくらいは稼ぎたい。
月にすると金貨9枚。
……まぁ、あくまでも豪華に過ごすための金額としての目標額だ。もし金を使わない生活ならアデリーの所で食わせて貰って寝させてもらえればそれでいいのだから。
でも、アデリー……怖いからな。
アデリーの家を出ることを考えると最低月金貨9枚は要る。
そこからさらにスペシャルギフト用の貯金、日本で仕入れずにニアワールド内で完結させる商売を始める為の軍資金も貯める必要がある。
まぁ、スペシャルギフトと軍資金については勇者やギルドで儲けるとしても、それ以外で月に金貨9枚稼がなきゃいけない。
……結構高いな。
そもそもギルドや勇者向けの商品は、取引金額と利がデカイといっても、今後うまくいくかも解らないし、なによりいつ依頼が来るかもわからない。
で、あれば手堅く、LEDランプ、チョコ、歯ブラシ、靴下、髪染め、パスタにウイスキーとかを業者に卸す形で、きちんと定期的な収入を得られるようにしておくのがやっぱり重要。
LEDは5個で金貨1枚になったが、この商品については売れ行きが好調になればなるほど、数が足りはじめる後半に売れ足が鈍る。
なんせ消耗されない品だからな。
となると消耗品の食品で金貨9枚稼ぐことになる。
単価が低くてしんどいな……
それと同時に日本で仕入れるって事は写真が売れないと俺の貯金がガンガン減って、いずれ仕入れが出来なくなる。これは大問題だ。
つまりニアワールドで売るだけじゃなく日本で売る物も本格的に考えないと早々に確実に詰む……
思わずため息をつく。
……難易度が高い。
いつの間にかかなりの距離を歩いていたようで既に雑貨通りについていた。
まだブライアンの店の戸が全開になっていたので『アイーシャ居るかな?』と店内をチラ見すると、アイーシャと目が合う。するとアイーシャが物凄い勢いで俺の所に走ってきた。
距離が近い! だが可愛いっ!!
「どうしたのアイーシャ? なんか用?」
「ね、ねぇ。イチ! お昼ごはんはまだよねっ! よかったら一緒にどう!? イチからは色々プレゼント貰っちゃったし、その、お礼がしたいのっ!」
あぁ……神様。
あんたのニアワールド……マジ最高だよ。
「それは嬉しいお誘いですね! 是非に!」
「あぁ、よかったぁ~……実は、断られたらどうしようと思ってドキドキしてたの!」
おいおい! 断るわけないじゃないかっ!
アイーシャたんペロペロチャンスが向こうから近づいてくるんだぞっ!? まったくもう!
……あ。
「あ……すみません。嬉しさのあまり、つい何も考えずに答えてしまいましたが……用事が諸々あったのを忘れてました。」
「あ、そうなの……ご、ゴメンね。忙しかったよね」
「いえ、あのっ! そうだ! お昼を回って少し遅い時間になっても良ければ、是非お願いしたいんですけど……それは難しいですか?」
「ううんっ! 全然大丈夫よ! じゃ、じゃあ私お店で待ってるからイチの用事が終わったら声をかけてくれると嬉しいな。」
「分かりましたっ! 早めに終わらせてきます!」
思わずアイーシャに手を振って走り出す。アイーシャも俺に手を振っている。
ギルドの依頼がなけりゃあ全部無視してアイーシャを優先しても良かったけれど、さすがにデカイ取引は確認だけとはいえ優先度が違う。
全速力でアデリーの店に入るとアデリーが店に居た。
どうやらどこぞの奥様がこれまで来ていて話をしていたのだろう。
俺が走ってきたのを見て、白目の無い目が点になっている。
「おかえ――」
「アデリー! 2階借りるね!」
「あ、うん。 ……ん? ちょっと待ちなさい。」
アデリーの後ろ脚に進路を塞がれ立ち止まる。
「ちょ、アデリーっ!? 俺めっちゃ急いでるんだけど!」
アデリーが両手で俺の肩を掴んで動けないように固定し、そして俺の首、肩、腕、腹、腰へと次々と顔を近づけて最後に俺の目の前に顔を持ってきた。
「………女のニオイがする。」
「っぴ」
思わず変な声がでた。
イラスト
もじゃ毛 様
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