33話 衛兵から情報収集
本日6話目
貴族街区へと向かう坂道を登りながら内容を考える。
まずは異世界の文字で手紙に書く内容についてだ。
異世界文字については、ギルドの精査に弾かれない必要がある。
ならば『勇者の利になる』という事を書けば、ギルドで弾かれるということはまず無いだろう。
ふむ……
当方、魔道具を集める事を生業とし、現在は勇者様のお膝元たる街に滞在させて頂いております。
街の方々《ほうぼう》で勇者様のご活躍を耳にする度、尊敬の念が起こり、是非とも私の所有する魔道具を献上したいと考え筆をとりました。
異世界から届いたかのような摩訶不思議な遊具なども数品ございますので、是非、献上の機会を頂けましたら幸いです。
………ってとこかな?
で、もしギルドに献上品預かるとか言われたらゲーム機渡しておいても話が早そうだしな。
手紙の装飾枠に模した本当に伝えたい日本語はどういう内容にしよう?
敵意は無いし、日本を行き来できる俺の能力は奪えないって事もわかる方が良いけど、その事を書くことで逆に気づかせて手を打たれる可能性もあるからやめておこう。
ん~~……
貴方も会った事があるからわかるだろうけれど『神様』に連れられてやってきた日本人の男です。
貴方の事は神様に聞きました。同郷の人が居て嬉しいです。
私に戦う力は無いけれど、日本の品を取り寄せる事が出来るので、それを買ってもらえませんか? ぶっちゃけ生活する金が欲しいんです。
………くらいの「助けて~勇者様~」で興味は持つだろう。
自宅に行ったらパソコンで作成してプリントアウトしよう。
封筒は目立つように、ちょっと豪華な物を買っておくといいだろうな。
LEDランプを買うついでに、購入しておこう。
そんなことを考えていると、貴族街へ向かうスイッチバック式の坂道を上り終えていた。門はやはり開いている。おおらかな貴族ですこと。
とりあえず俺の髪を見ている前回と違う若い衛兵に話かけてみる。
「おはようございます。」
「あぁおはよう。アンタの髪。いいなぁ。」
「あはは。勇者様と一緒の色だから目立ちますよね。物凄く見られるから恥ずかしいですよ。」
「いやぁ、勇者様のご活躍もあるから真似して染めようとする奴も多いんだ。でも、そんなに綺麗に染まらないからな。羨ましい。」
おっ? これ、もしかすると黒色の髪染も需要有るか?
髪染屋とかもイケる可能性ありだな。
「へ~~。
ちなみにですけど綺麗に染められるとしたら、幾らくらいなら出せます?」
「ん~~。 ……そうだな。
銅貨…………5枚までなら!
いや、6枚でも!」
……髪染とシャンプーとかの手間を考えると利幅は薄いな。それに面倒そうだ。ただ……黒い髪が増えれば俺が目立ちにくくなるっていう利点はある。このメリットは案外大きいかもしれないから要検討だな。
とりあえず生活用品で購入するリストに、歯ブラシの他にん、黒色の髪染、シャンプーとコンディショナーを追加。
「あはは。結構出しますね。」
「まぁな。なんか強くなれそうじゃねぇか。」
「そういえば勇者様って戻られたんですか?」
「ん? いや、そんな話は聞いてねぇな。」
「そっかー。こりゃ担がれちゃったかな。
酒場で勇者様見に行ってこいよって盛り上がったから、てっきり居るのかと思いました。」
「はははっ、そうそう勇者様に会えねぇよ。今も討伐に行ってるしな。勇者様が戻られる時は竜に乗って戻られるから、すぐわかるぞ?」
「え? 竜ですか? ……ワイバーンとかじゃなくて?」
「おう。ビビるよな。すんげー竜だから、否が応にも気が付くさ。」
「でも、屋敷にそんなすごい竜が居たら危ないんじゃ……」
「不思議だけど竜は姿を消すんだよ。ほんと勇者様はなんでもありだよ。」
チートの勇者のペットは竜ですか。
物語外で話が進み過ぎだな。
それともハーレム要員の誰かが変身してるとかか? まぁ、どちらにしろ勇者はパネェってことだ。
「話は変わるんですけど、勇者様と話をされた事とかあります? どんな方なんですか?」
「おう! よく聞いてくれたな!
俺が夜に見張りに立ってたらな勇者様が通りかかって『お疲れさま』って声をかけてくださった事があるぞ、ありゃあスゴかったね、なんせ――」
うっわっ、ただ挨拶した事あるだけなのに、まるで仲良く話したことあるみたいあ感じで得意げに話し始めたよ。
とりあえず笑顔を貼りつけて、うんうん頷いておくか。
--*--*--
あぁ……コイツすっごい話好きだな。
とりあえず武勇伝から本筋に話を戻したい。……なので切りこむ事にした。
「いやぁ、すごいなぁ。
あ、そうだ。良かったらコレどうぞ菓子です。」
二つ取り出し一つを自分で毒見してみせる。
「なんだこれ? 変わってんな……って、あ。コレ、根性試しで食ってたヤツだ」
「根性試し?」
「おう。休憩ん時にな、なんか怪しいもん貰ったって話が出て根性試しで食ってたヤツが居たわ。」
「はは。きっと美味しそうにしてたでしょ」
「おうよ。じゃあ、俺もちょっと試させてもらうかな。」
チョコを受け取り食べる衛兵。
コイツ絶対無能系衛兵だな。と、確信したのは言うまでもない。
「おお~~~あんめぇなっ! こりゃあうめぇっ!」
「良かったです。あぁ。もう一つお伺いしたいんですが栄育院の子供達にこの菓子を差し入れとかってしても良さそうですかね? まぁ、ぶっちゃけた話は、差し入れて気に入って頂けたら中央広場に買いに来てって宣伝したいって腹があるんですけど、貴族街区は商売しちゃいけないんですよね。」
「あ~~そうだな。売買は認可を得た者以外は禁止されてる……が、差し入れであれば問題ない。
宣伝については……あれだな。聞かれたら答えるくらいならいいだろう。けれど大っぴらに宣伝するのはまずいな。」
「なんだか複雑ですね。」
「まぁ金持ちが多い区画だから制約があるのは仕方ねぇよ。
おぉ、そうだ! 俺が一緒に行ってやるよ! 商売しないかの監視も仕事の内だしな! ちょっと待ってろ」
衛兵は詰所に走っていき代わりに立つ人間と一緒に出てきた。
「待たせたな。俺はギャビィだ。しばらくだがよろしくな。」
「イチです。お手数おかけします。」
衛兵のギャビィが仲間になった。
なんつって。




