32話 対ウサミミビッチ
本日5話目
「どういったご用件でしょうか?」
チッ! このビィーーッッチィっ!
「お忙しいところすみません。
変わった質問なのですが勇者様に依頼をお願いしたり、連絡を取るなどは可能でしょうか?」
このウサミミヴィーーッツィーっ!!
特段の表情の変化なくウサミミが答える。
「勇者様への依頼については一度ギルドにてお預かりさせていただき、その内容を精査した上で勇者様がいらした際にご相談させて頂くことはございます。ただ、あくまでもお伺いのみです。連絡についても同様で精査した上で報告となります。」
「連絡は伝言でしょうか? それとも書面での受付でしょうか?」
「どちらも可能です。
まぁ書面などの方がお渡ししやすいです。ただし、どの場合であっても内容はギルドで内容を確認した上でお渡しして良いかの判断をすることになります。」
「なるほど。わかりました。
では書面を用意した場合は、ギルドに持ち込むと読んで頂ける可能性があるのですね。」
「はい。注意点としては書面などは返却されません。
……『勇者様に特訓をお願いしたい』などは確実に廃棄処分となりますので無駄はなさいませんよう、よろしくお願いします。」
……なに超笑顔してやがる、この脳筋好きのウサ娘がぁぁっ!
「ははは。確かにそんな内容を書くのは考える事の出来ない者でしょうね。」
「実際かなり多いんですよ? 元々弱かった奥様方は勇者様と共に行動した事で英雄となられましたからね。その話を耳にした『自身の弱さを悲観された方』なんかが、『なんでもしますから鍛えてください』といった内容を延々書いて来たりされるんです。」
はっ! 暗に『お前どうせそんな事書いてくるんだろう』ってか!? このクソビッチが!
「それは大変ですね。
……えっと受付さんは無駄な事が嫌いですもんね。」
「あぁ。アンジェナと申します。
よくご存じですね。えっと……」
ギルドカードを取り出して、見せながら
「イチです。」
「あぁ、そうでしたね。イチさん。
髪の色などは覚えていたのですが、すみません。」
弱い虫の名前には興味ありませんってか? はっ! 髪も勇者様と同じ色だから覚えてたんですよね わかります。
「それでは書面を用意しましたら、またお持ちしたいと思いますので、その際はよろしくお願いいたします。」
「はい。私以外の者でも対応は可能ですので、いつでもお持ちください。」
私に話しかけんなってか。ハッ!
名前覚えたからな、アンジェナ!
このウサミミビッチがっ!
散々内心で悪態をつきながらギルドを後にする。
思いの外、連絡手段がありそうで嬉しい。
ただギルドについては勇者が気まぐれに顔を出した時なんかに連絡するっぽいし。結局は勇者次第って事になるようだ。
いや……もしかすると小間使いとか使用人なりが確認をしに来る可能性の方が高いのか。
どちらにしろ連絡手段として『手紙』はアリと。
ニアワールドは文字が違って主人公が苦労してたからな。
文字についてはアデリーにお願いしよう。
……もしアデリーが字を書けなかったらアイーシャにでもお願いしよう。
いや、最悪の場合はギルドにお願いするか。
で、『日本語』で本題を書いておけば、勇者が見たら飛びつくはずだ。
『この暗号は勇者ならば読める』とか。
いや、怪しすぎて捨てられそう……悪戯と思われて廃棄されるのがオチだな。
文字や内容……どう書くかとか結構ネックになりそうだ。
確実に書ける方法も考えておきたい。
……となると。
貴族街区へ向かう前に、アンジェナの所へ戻る。
「あら、どうしました? イチさん。」
「いえ、ギルドカードを作って頂いたり色々と教えて頂いているのに、なんの礼もしていなかった事が気になりましてね。
いまちょうど沢山の菓子を持ってましたので、アンジェナさんにおすそ分けでもと思いまして。」
返答の前に鞄からチョコを出し始める。
「いえ、ギルド職員はそういった物品の贈り物は受け取れないんで……あら? ひどく変わった物ですね。黒色とは……なかなかゾっとします。」
微妙な興味を引いたようなので、6個ほど取り出し、カウンターに置きその中から無作為に一つとり、アンジェナが見ている前で食べて毒見してみせる。
「えぇ。私の故郷の甘い菓子なのです。」
「へぇ。甘いんですか。」
しげしげと見ているアンジェナ。
「ええ。とても。
で、コレは……じゃあ、そうですね。
おすそ分けではなく、近々この菓子『チョコレート』を中央広場あたりで販売したいと思ってましてね。
コレは非常においしい菓子なので、『あの菓子の出所を探ってほしい』なんて依頼が出るかもしれないと思いますから『その出所は私です』と先に報告しておこうと思いまして。その証拠品です。」
「はぁ。」
「私としてもそういった話が出たら、売り先の一つとして確保しておきたいという思いもありますので、その際はギルドに仲介もお願いしたいですからね。」
「……はぁ。まぁ……よくわかりませんが。」
微妙に首を捻るアンジェナ。
食べるかどうかは別として置いていくことは出来そうだ。
さて、本題だ。
「あ。そうだ。
さっきの書面についてなんですが私は文字が少し不得手でして、友人に頼もうと思っているのです。ただ、もし友人も文字が得意でない場合は、ギルドに紙を持ち込んで代筆の依頼することは可能ですか?」
「あぁ。それでしたら精査も同時に兼ねる事が出来ますので受付可能です。
ただ、お届けするかどうかといった精査結果については返答できかねますので、その旨ご了承願います。」
「わかりました。有難うございます。
ちなみに幾らくらいの費用を見ておくとよいでしょうか?」
「紙とペン、インクは持ち込みされるのですか?」
「はい。持ち込みます。」
「で、あれば、大体50文字で鉄銭1枚くらいと考えて頂ければよいかと。」
「おぉ。それは良心的ですね。」
「そうですか? 私は高いと思いますよ。」
小さく笑うウサミミ娘。
くっそ……ビッチの癖に可愛いな。クッソ悔しい。悔しいけどニヤニヤしちゃう!
「色々有難うございました。では。」
「あっ……」
チョコ持って帰れと言われない内にギルドを出る。
手紙はアンジェナに書いてもらう事にしよう。そうしよう。
そして日本語の本題は枠の模様みたいに配置して読ませる事にしよう。
貴族街区に向かって歩きながら、腕を組み右手を顎に当て、書く内容を検討しはじめる。




