26話 遠巻きに激写は必須
「すみません。スペシャルギフトについて教えて頂きたいんですが……」
「はい。どのような事でしょう。」
見事な営業スマイルのウサミミではないネコミミさんが対応してくれている。
もちろんリアルネコミミさんを盗撮せずにはいられない。
目的地一直線に足早に移動をしていたはずなのに、目ざとく俺を見つけた一人のお子さんに「チョコレートください」を言われて一つだけあげ、すぐにまた移動を開始しギルドに到着。
で、やっぱりウサミミビッチが居たから遠巻きに盗撮しつつ様子を伺うと接客中だった為、空いている人に質問してみた。
ネコミミは素晴らしい。
これはもう至宝と言っても過言ではないだろう。
「お客さーん?」
「あ。すみません。
ええとですね。スペシャルギフトというのは購入できるのでしょうか?」
「はい。毎月末に競りが行われますので、そこで落札を頂ければ購入可能です。
参加資格は犯罪者でなければ問題ありません。また、参加する際には会場入場料として銀貨5枚が必要となります。」
5万円くらいの入場料って超高くね?
まぁ白金貨での取引が多くなりそうと考えれば、最低でも100万くらいの値がつくんだろうし、5%程度も払えないような奴は来るなっていう篩の意味もあるんだろう。
……もしかすると今の奴隷っていうのは能力を無くした状態になって提供される可能性もあるのかもしれない。という事は、能力は奴隷を買うくらいの金額と同等の可能性があるだろう。……つまり魅力的な能力なんかは美人エロフ奴隷並みの天井知らずな値段的な展開もあるって事だ。
「参考までにお伺いしたいのですが、ドワーフの『怪力』なんていうのは出たりするんでしょうか?」
「その時々に応じてなので、過去の事例を元にした推測になりますけれども、3~4カ月に一度くらいは出ているような能力だと思いますね。そこそこレアな能力です。」
「過去落札された額とかはわかりますか? もちろん分かったらでいいんですが。」
「すみません。毎回変動が大きいのでお伝えするのはトラブルの元になりますので……ゴメンなさい。」
「あ。それもそうですね。
えっと、最後の質問なのですが直近の開催日と会場を教えてもらえませんか?」
「直近ですと……後13日後ですね。
会場についてはギルドにお越し頂けましたら入場料を徴収後にご案内いたします。」
「有難うございました。」
必要な事を聞けたのでギルドを後にする。
約2週間後。
……それまでに白金貨を10枚は貯めておきたい。
中央広場はもう、夜向けの屋台の切り替えも進み始めている。
立ち止まり腕を組み右手を顎に当てて熟考する。
大きく稼ぐならば『希少価値』の高い物を『金持ち』に売りつける必要がある。
しかも1000万くらいポーンと払えるレベルの超金持ちが相手だ。
そして、向こうから買いたいと言ってくるような状況に持ち込む必要がある。
という事は俺の売り込む商材の価値を理解できる、もしくは知っている必要がある。
俺はこの条件に合うヤツを一人だけ知っていた。
それは『勇者様』だ。
--*--*--
女神の居る飯屋に入ると元気な声が聞こえてきた。
「お~イチさん。いらっしゃーい。
カウンターなら空いてるよ~」
案内されるまま座り、女神に声をかける。
「オーク以外で何かあるかな?」
「そうだね~。珍しいところだとワイバーンのステーキかな?
銅貨3枚もするけどね。」
「えっ? ワイバーンって……美味しいの?」
「美味しい部位は少ないけどあるよ? なんか胸の奥の方のお肉だったかな?
私もちょっとだけ味見させて貰った事あるけど……美味しかったなぁ。」
例えているのか自分の胸を触っている女神。
大サービスです! 有難うございます! 有難うございます!
勿論「えっ? どこだって?」と聞きなおして盗撮です。有難うございます!
「じゃあ折角だしそれと、後エールをもらえる?」
「はーい。かしこまりましたー。」
勇者に何を売るか。
そもそもの話として、まずはどうやって勇者と渡りをつけるかだ。
確か勇者は今どこかへ討伐に行っているらしい。
が、オークション開催までに戻ってくるかもしれない。
NAISEIをしてたりと活躍してたから、きっとこの街の領主、もしくは王みたいな立場だろうし、大金が動くイベントには顔くらい出すだろう。
勇者は最初はゲスな性格だったけれど終盤は清廉潔白な人柄になった感じもあったし何かの陳情なりには目を通すはず。
まだこの世界に関する情報は足りていないが、街の人の『チョコレート』の喜びっぷりを見ていれば、チョコレートは存在していないに違いない。
ならば『贈答用の高級チョコレートセット』なんかを献上品として渡せば、向こうから興味を持って俺にコンタクトを取ってくるだろう。俺が逆の立場なら絶対に会いたいと言うもの。
で、面会さえできれば、ゲームなり発電機なり売り……
…………
考えを巡らせていると、ふと思い付き、その考えに背筋が凍る。
もし俺の能力を勇者が知ったらどうなるだろうか。
この世界は『スペシャルギフト』という能力の譲渡がある。
そもそもの話として、これは勇者達が編み出した秘術だとアイーシャが言っていた。
という事は俺の能力が知られると
『勇者が俺の能力を奪いに来る可能性がある』ということではないだろうか
チート満載の勇者が、鼻で笑われるレベルの俺を狙う。
これは危ない。
危険すぎる。
今更だが『チョコレートください作戦』なんてやってる場合じゃなかった。
ニアワールドの世界の人は善人が多い。
『だが勇者はどうだ?』
日本生まれで当初はゲスいヤツだ。
今は清廉潔白といっても『善人』とは限らない。
髪を染めるか?
いや、美男美女の街でどっちにしろ俺の顔の作りは目立つ。
どうしたらいい?
思ったよりピンチな状態かもしれない。
「はいエールおまたせー!」
掛けられた声に思わずビクンと反応する。
なんだ女神か。
「あ。うん。ありがとう。」
木製のジョッキに入ったエールを一口飲む。
無濾過の酵母がそのまま感じられるビールだ。
木製のジョッキだから色もわかりにくいが、きっと濁っているのだろう。
日本のようなしっかり濾過して飲みやすいピルスナータイプが好きなので、こういったビールはアルコールも強そうな気がして、あまりグイグイいけない。
ただ不安から呷り、アルコールが入ったことで少しだけ気が大きくなる。
また一口飲み、天井を見上げて息を吐く。
「……どうしたもんかな。」
勇者に対して『俺に手を出すな』と思わせる事が出来るような事なり、人なりをぼーっと考える。
「はーい! イチさん!
ワイバーンのステーキお待たせー!」
大きめの木製の皿が置かれ、その上には500gはありそうな肉塊が湯気を立てていた。
肉の横には、マッシュポテトがこれまたドンと盛られている。
飾り気のない豪快さに思わず鼻を鳴らす。
木と鉄を組み合わせたフォークとナイフを手に取り。
ステーキを切り、口へ運ぶ。
「おお……」
固い肉を想像していたが思っていたよりもずっと柔らかい。
濃い目の塩味もよく合っていて、エールでさっぱり目の肉の脂を胃に流しこむ。
「コレ。うまいな。」
食べ進めて、ふと気が付く。
あ。いるじゃん。
俺と勇者をつなぐ適任者。




