24話 アイーシャたんペロペロ作戦(作戦内容は無い)
アイーシャたんペロペロ作戦を決行する為の必需品『ウイスキー』
ただウイスキーは日本に置いてあるので、いったん自宅に戻る必要がある。
という事はアプリを起動する際に衆目にさらされないよう路地裏かアデリーの家に行った方が良いだろう。
一通り考え今の場所はアデリーの家が近いので、アデリーの家へと向かう事にした。
アイーシャたんペロペロの為にアデリーの家に行こう!
……なんだかそう考えると、まるでヒモの男が浮気の準備の為に一回家に帰るみたいな感じがして不純な気がしてしまう。
いや、でもアデリーとは何もないし。
むしろ物を差し入れしまくってる足長オジサン的立場だし。問題ない。問題ない……はず。
物の2~3分でアデリーの家に到着。
カウンターの上には、いまだ葡萄が置かれていた。
「アデリー。戻りましたー。
葡萄は2階に運んでおけばいい?」
奥に向かって声を張ると2階から声が返ってくる。
「あ~おかえりイチー。そうねー。運んで~。」
葡萄を4房持ち2階へと上がる。アデリーの2階の居住区は2部屋ある。
昨日食われそうになった部屋と、もう一つは入った事はないが、きっと作業場なんだろう。
リラックスする為の部屋と仕事をする部屋は絶対に分けた方がいい。効率が違う。
同室にするとメリハリがなくなって絶対仕事にならないからだ。
……働いてない俺が言うのもなんだけどね。
まぁ、昔取った杵柄だ。
テーブルのある部屋に葡萄を置き、もう一部屋をノックする。
「は~い。どうぞ~」
扉を開けると窓から差し込む明かりの下、両手と前足2本を使って器用に編み物をしているアデリーが目に入る。
その作業を見ていると『編む』というよりは『接着』に近い印象を受けた。
糸を『くっつけて』いって、肌着の形に組み立てていたのだ。
「どうなってるの? それ。」
「うふふ。今作ってるのは手抜きだけど作るのは早い下着よ。」
話を聞くに、ネッチャリの糸同士は触れると糸ががっちりくっつくので成形しやすく、それで大まかな形をつくってから、カチカチ糸をネッチャリ糸にコーティングしていく形で仕上げるらしい。
形はヒモパンだ。
「ふふふ。勝負用よ。
どこで脱いだかなんて、わかんなくなるかもしれないものね。
無くしても大丈夫なくらいお手頃な値段に仕上げる為に布地は少なめ。サイズ調整も可能だから楽よ。」
「へ~。」
いや。パンツを無くすことは無いだろう。
外とかで超頑張ったりしない限りさ。
…………え?
あ……もしかして壁の上とか?
風で飛ばされたりとか?
え!? 嘘!
………今度、盗さ………なんでもない。
流石にそれはイカンわな。
「ふぅ。で? イチはどうしたの。」
「あぁ、いやなんでもない。葡萄はテーブルに置いておいたよ。
ちょっと一回能力を使おうと思って戻ってきたんだけど、またあっちの部屋を借りてもいいかな?」
「あぁなんだ。そんな事なら好きにして頂戴。
じゃ私はもうちょっと頑張って作っちゃうから。」
「お邪魔しましたー。」
「はーい。」
アデリーのリラックスルームへ移動しアプリを起動し自宅へ戻る。ゆっくりトイレへ行ってから念の為に夜ごはん用に炊飯をセットする。
百均のグラスを洗い、グラスとウイスキーを持ち歩いた際にガチャガチャ音が鳴らないよう緩衝材替わりにチョコを詰める形で鞄に入れてから、アプリを起動し戻る。
「じゃ、また出かけます~」
「はーい。いってらっしゃーい。」
アデリーの店を出て、魔女の帽子の看板の店へと向かう。
「こんにちは~。」
戸を開きながら挨拶をすると、つばの広い黒帽子をカウンターに置いて、前髪を紐で結い、目にかからないようにしながら一心不乱に何かの作業をしているアイーシャが目に飛び込んできた。
「あっ! イチー! 会いたかったわぁっ!」
勢いよく両手でどーん! と机を叩き飛び出してくる。
「俺もです。アイーシャたん。」
「あはは。イチったら呼び方がおかしいわよ。
それに『さん付け』は要らないから。アイーシャって呼んで。」
目の前で上機嫌でキラキラしているアイーシャたん。かっわいい。
アイーシャたん。可愛いよ。ハァハァ。
「あ、はい。わかりました。アイーシャ。」
「って、そんなことよりもイチ!
ランプの仕組みが、ま~~ったくわからないんだけど! っていうか、コレなによ!」
アイーシャがカウンターに戻ったかと思えばスゴイ勢いで戻ってきて、小さな手の平を俺に見せる。
なにかと覗き込めば、手の平に小さなネジが乗っていた。
プラスチックの外装同士を止める役割のネジで、ネジネジ部分の直径は1mmあるかないかの大きさ。
「こんな細かくて精巧な細工見たことないわよっ!
これだけじゃないわ! 開けた中身も未知っ! このランプには未知が詰まっているわっ!!」
鬼の首をとったかのようなテンションで叫ぶアイーシャ。
知り合いのテンションが無駄に高いと、逆に周りの人間は冷静になってしまうものだ。
「あぁはい。喜んで頂けたようで何よりです。
ただ私は職人じゃないので仕組みや原理は分かりません。 申し訳ない。」
「あら……そうなの。」
『しゅーん』と落ち込む擬音が聞こえそうな程に、テンションだだ下がりなアイーシャ。
だが、またテンションが戻り高い声が聞こえる。
「でもいいわ! 今日もまた何か持ってきたんでしょう! 売る物とか、色々私に見てほしいって言ってたものね! さっ! 早く見せて! イチっ!」
「あ~~……えっと。」
俺の様子を見て『しゅしゅーん』と音が聞こえそうなくらいテンションが下がっていくアイーシャ。
『「パパ!約束したよね。遊園地に連れてってー!」「えっ? そうだっけ?」と言われた子供』状態だ。
「……すみません。
今日は特段持ってきてないです。」
「あ、うん……そうよね。なんかゴメンネ。」
あからさまにがっかりした様子でカウンターに戻っていくアイーシャ。
もしかしなくてもだけど、アイーシャには何かしらの手作り工作キットとかをプレゼントしたら『素敵!抱いて!』状態になるんじゃないだろうか?
でもゴメン。今日はウイスキーしか持ってきてない。
う~ん。どうしよう。
酒渡す空気でもないような気がする。
アイーシャはまた、分解したっぽいLEDランプを弄り始めている。
俺も腕を組み右手を顎に当てて熟考する。
…………
とりあえず。酒好きかだけ聞こう。
で、好きだったら渡そう。
「あ~。
ねぇ。アイーシャ。」
「ん~。なぁに?」
「アイーシャってお酒は飲む?」
手元から目線を外して、俺を見るアイーシャ。
また手元に目線を戻す。
「飲んだことないから好き嫌いなんてわかんない。」
「えっ?」
まさかの『分かりません』頂きました。
「……えっと。違ったらゴメンだけど。
アイーシャってドワーフだよね?」
「うん。そうよ。
……一応ドワーフ。」
『いちおう』? なんか怪しいのか?




