151話 イチとマドカの悪巧み
豪華なソファーに腰掛ける神様。その神様に綺麗に90度腰を折る俺。
「ドーカ! オネシャシャスっ!」
「ね~イチもこう言ってるし、なんとか聞いてあげてくれないかなぁ~ん? か・み・さ・まぁ~ん。」
神様の横に座り、撓垂れ掛かるマドカ。
「……なんでこうなったんじゃ。」
「うふんっ。神様本当に久しぶりよねぇ~。」
マドカは神様の頬を人差し指でつつっと撫でている。
俺が神様にお願いしたのは、マドカに日本とニアワールドの境界をいじらせて日本行きができるかどうかを検証する実験の許可や、もしそれが実現した際の異世界間での人間の行き来の許可を得ること。
後、もし可能であれば、俺がどちらかの世界に住む事が決まったとしても行き来できる能力を失う様な事にならないように制限の撤廃だ。
後者に関しては、神様の性格を考えると一度決めたことを曲げるタイプではないので、なんとか規制を緩くしてほしいくらいを目標としている。神様とて、なんのメリットも無くこのような条件を飲む事はできないだろう。
そ・こ・で、マドカによる色仕掛けだ。
色仕掛けを選んだのも神様は人間臭い成り立ちをしていると自分で言っていたし、マドカの事を好きだとも言っていた。だから、その好きな人間にお願いされたのなら聞くんじゃないかと思ったのだ。
神様も男の形をとっていたし、美人になったマドカが傍で神様を見ていれば、いい恰好しようとして条件飲んだりするんじゃないかと思ったりもしている。
マドカが俺に協力するメリットは、単純に神様のお墨付きで日本に行けるようになる事。
マドカに内容を説明して改めて協力をお願いすると二つ返事でマドカも協力してくれた。
やはり日本に行けるかもしれない事は魅力的だったようだ。
それから、マドカ用にメイク用品や日本の高品質な服などを用意して神様を迎える準備を整え、『日頃お世話になっているので、たまには感謝を形にしたい』と神様に電話をかけて、とりあえずニアワールドに来てもらい、そして接待を開始してのお願いである。
「なぁんか企んでおるとは思ったが……まさかワシを誑し込もうなどと考えておるとはな。
そもそもの話としてワシは別にマドカが境界をいじって、うまくいって行き来できるようになっても別に咎めはせんぞ?」
神様はなんとなく呆れた顔をしている。
俺としては、この返答は驚きだ。
「えっ!? そうなんですか? 俺が住むところ決めたら行き来できなくなるって条件でしたし……てっきり異世界間の行き来って禁忌っぽいのかと思って、勝手にやったら怒られると思ってました。」
「ワシゃあお前さんの条件以外はなんも言うとらんじゃろ?
それに前に会うた時も、心の赴くままやってみいと言うたじゃろ?」
「確かに、その言葉は頂きましたが……本当に良いんですか?」
「ワシに二言は無いぞ?」
あっさりと第一目標が達成できたことに、俺は拍子抜けしマドカも軽く肩をすくめる。
「な~んだ。イチさんの考え過ぎだったのね……まぁ、ボクは久しぶりに神様と会えたし、なんか嬉しい気もするからいいけどね。」
「マドカは久しぶりじゃのう……偉く立派になったのぉ……」
「あ~。オッパイ見ながら言ってる。神様も好きねぇ~。
……なんなら揉んでみる?」
「フォッフォッフォ……
…………ええんかの?」
珍しく眼光鋭く真剣な顔をしている神様。
「ふふふ。いいよ~。」
「……じゃあお言葉に甘えて。」
マドカの胸をつついてニヤケる神様を見て、俺のこれまでの思いや心配は一体なんだったんだろうと虚しさがこみ上げないでもない……
でも、目標が達成されたとなれば、それでいい。
ポジティブに考えよう。
好きにやって良いってお達しも出たんだ。うん。
なぜか涙が出そうな気がしたので天を仰ぐ。
そんな俺に神様の嬉しそうな声が響く。
「おぉお……これは良い物じゃな……」
「ちょっと神様の手、骨ばってて痛い。」
「おぉ。スマンスマン!
であれば、これでどうじゃ?」
言葉の後、神様がどんどん若返り中性的な青年の姿に変わっていく。
その姿はマドカに負けず劣らずの美貌を兼ね備えていた。
「うわぁ……神様素敵ぃ……」
マドカがウットリと神様を見つめている。
あの顔はメスの顔だ。
元オスのくせに器用なヤツだ。
若干の嫉妬の混じった目線を向けていると、マドカは胸に当てられている神様の手の上に自分の手を重ね、そして握りしめた。
そして俺に勢いよく振り向く。
「ねぇイチさんっ! ベッドのある部屋はどこっ!」
「肉食系っ! ……あるにはあるけど――」
「どこよっ!?」
マドカの獣のような目と飛びかかられんばかりの殺気が放たれたような気がして怯えながら答える。
「こ、この部屋を出て! 真っ直ぐ行き! 突き当りを右に行った先にあるであります!」
途端に神様を引っ張って動き出すマドカ。
「ちょ、ま、マドカ! 流石にそれはどうじゃろうか!?」
「いいからいいから! ちょっとだけっ! ちょっと味見するだけだから! ねっ! 怖くないよ! むしろキモチイイから!」
「ああああああ――」
フェードアウトして行く神様の声。
その姿は困惑し、俺に助けを求め、手を伸ばしているように見えた。
だが、あっという間に消えていく姿を見送る事しかできない。
神様の声が遠くに消え、俺は口を押さえながら目を伏せる事しかできなかった。
「……おいたわしや……神様。
どうか……無事にお戻りください……」
数時間後
「ふぇぇ……人間に堕とされちゃったよう」
「うぇひひひ。」
ショタ化まで加わった神様をお姫様抱っこし、ツヤッツヤした顔のマドカが帰ってくるのだった。




