表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
ニアワールドの勇者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/166

149話 境界

「二本足って……バランス悪くない?

 全然安定しなくて慣れないんだけど……イチがすぐ座ったり横になる理由が分かったわ。」


 照れなのか恥ずかしさなのか、内心を隠すようにアデリーが文句を口にする。

 アデリーは滅多に照れないし文句を言う事もないから、今はアデリー自身が困惑するほどにおかしな状態になっているのだろう。


「アデリーだよ……な?」


 はにかむ女神から目が離せない。

 俺の視線に戸惑いつつも照れているアデリーは口をつぐむ。

 マドカは「うまいうまい」と寿司を食う。


「アデリー様ですよ。イチ様。」


 金髪オールバックの若い男が答える。

 雰囲気は知っているが誰だ!? いや、面子から推測できるけれども。


「って、そっちも!? ムトゥなのか!?」


 ここに来てとうとう俺は叫んだ。

 叫び声にマドカが「ングっ」とヒラメを喉に詰まらせ、味噌汁を慌てて啜って一息つく。


「ふぃ~……慌てて食べるもんじゃないね。

 そうだよ~。アデリーさんとムトゥだよ。

 アデリーさんは半人半蜘蛛(アラクネ)だったから、その境界をいじって、ムトゥは肉体年齢の境界をいじったんだ。」


 マドカが俺に笑顔を向けてくる。


「オーファンとムトゥ達の事は有難うね。

 ボクも気になってたんだけど優先順位的に中々手が回らなくてさ。感謝してるよ。

 って、イチさん……いつまで立ってんの? どっち(・・・)もさ。なんならお寿司食べたらだけど、ボクが座らせるのを手伝ってあげちゃおうか?」


 マドカが後半ニヤニヤして舌なめずりしながら俺の下半身に流し目を送ってくる。

 とりあえず慌てて座る。


「マドカさん?」


 アデリーが凍てつく笑みを浮かべ、マドカの名を呼ぶ。


「ふふふ。冗談だって。

 でもさ、彼、ボクのおっぱい触ったからそうなってるんだと思うと、ちょっと何とかしてあげたくなるじゃない。」

「ちょっ!」


 マドカの言葉に俺が動揺すると同時に、糸が飛んできて俺はイスにグルグル巻きに固定される。


「……あら? どういうことかしらね?

 私というモノがありながら。どういうコトなのかしらネ?」

「アレー。 普通ニ 糸ハ 出セルンデスネー。

 スパイダーウーマン ナンデスネー。」


 なんというか、いつも通りのアデリーのお仕置きな感じに、つい変な声が出る。

 そんな俺に対して容赦なくアラクネの時同様に首コキコキして顔を傾け、アデリーがじりじりと近づいてくるのであった。



--*--*--



 俺がアデリーから多少のお仕置きを受けるも、その横で日本の寿司折りをメインにした昼食会が開催され、俺と勇者の懇親が図られた。


 どうやらアデリーの変身はマドカとアデリーの企みによる物で、マドカとしては俺といい関係を築きたいから、既に情報収集をして知っていた俺の恋人のアデリーに恩を売って取り込もうという思惑があり、アデリーもマドカの出現により、誰よりも俺に好かれたいという気持ちが刺激されて、そんな二人の思惑が絡み合った結果なのだそうだ。


 正直なところ。

 俺はアラクネのアデリーが好きだ。

 半分蜘蛛だろうが好きだ。

 これはもう偽りない本心。


 ……でも、人型のアデリーはもっと好きでした~。


 いや、やっぱりなんていうか。

 種族的に近いっていうのは心のありようがまた違うんです。はい。

 アラクネアデリーが通常の好きだとすると、1.5倍好きになるというか。何というか。


 アデリーにしても、アラクネとしての能力や力を保ったまま変身したような感じで、アラクネとしての誇りを保ったまま、これまでよりも俺や他の人間達から好かれやすい形を取れるという事に満足しているらしい。


 マドカのとんでもない能力を目の当たりにして、俺は戦っちゃいけない相手であるという認識を深めつつ人化したアデリーを見て、ふと思った事をマドカに聞いてみた。


「それって、半人半馬ケンタウロスとかでも可能なの?」


 ってね。


 口滑ったよ。うん。

 いや、単純に好奇心だったんだ。


 でもアデリーにしてみれば、自分を差し置いてすぐにケンタウロスメイドのエイミーの人化に興味持つのか? って話じゃない?


 そりゃあキレるわ。

 うん。

 折角人化したのに、それは無いだろうお前。ってもんですわ。


 アデリー激おこ。

 強制的に解散。


 尚、マドカは

 「アデリーさんの機嫌が治ったらまた来るね。次は鰻が食べたいなぁ。精つけたいし。」

 とウィンクと言葉を残し、カップラーメンとレトルト食品、菓子パンを大量に買って帰っていった。


 懇親会解散の後……俺2日間アデリーの部屋に監禁されました。


 いや、女神になった大好きなアデリーに監禁されるんだから、幸せは幸せであるんだけれども……流石に2日はイカンて……2日間ずっと連z……


 …………


 ……


 …


 ワタクシ


 アデリーの愛の大きさを


 十分理解しました。


 はい。


 もう十二分に。


 はい。


 アデリー以外の女を見る必要が無いことも理解しました。


 はい。


 それはもう十二分に。



 尚、ムトゥ采配により、アデリーの部屋にはバブとかサフナみたいな小さな子は近寄らないように配慮されていた模様。

 ご飯はアイーシャが持ってきてくれてたけど、ご飯を置いて部屋の様子を見る度に「おはふー」って顔してた。


 カラッカラになりながらも、生存できたよ……俺。


 大いに愛を語らい合った結果アデリーも落ち着き、二人で部屋風呂に入りながらマドカの事、神様の話を含めアデリーに相談する事にした。


 これまでも自分だけで解決できないような事はアデリーに相談しながらやってきた。

 これが俺のやり方なんだ。


 アデリーへの説明の中で、ニアワールドが物語として生まれたというのを伝えるのは、なんだか微妙な気がしたので、その点はボカしながらニアワールドのモンスターはマドカの意思・無意識で変化していく特殊な世界と説明した。


「――ってワケで、マドカの『戦いを止める』キッカケを作らないと、いつかみんながヤバい事になるんだ。そのキッカケを作る為に、神様が俺にこの世界に入る能力を与えた。」


 ちゃぷっと湯を肩にかけ俺の説明を聞き続けていたアデリーが口を開く。


「なんとも理解に苦しむような話ではあるけれど……理解に苦しむのは毎度の事といえば毎度の事だし、それに実際に敵は強くなってるものね……勇者マドカが戦いを止める。

 それも心の底から戦いを望まないようにするのよね……難題だと思うわ。」


 俺に背中と体重を預けてアデリーが伸びてくる。

 これまでにはできなかった体勢で思わず嬉しくなりアデリーを後ろから抱きしめる。


 この二日間は俺……自由がきかなかったような気g―― ……ウっ! ……頭が!


 ……………


 ……


 軽く頭を振り意識を取り戻してから話を続ける。


「そうなんだよね。

 神様は『筋道は作った』って言ってたし『マドカが女になった』っていうのは関係しているんだろうけど……」

「……男じゃできなくて、女にしかできない事……そして戦いを望まなくなる……」


 アデリーがなにか気が付いたのか、振り向いてガバっと俺の両肩を掴む。


「ダメよっ! それはダメっ!

 確かに赤ちゃんができたら、きっと平穏を心から望むだろうけど! イチと子供を作るのは私よっ!」


 アデリーの言葉に


 『あ。そうか。子供が出来れば確かに。』


 と、気が付く。


 俺が全く気が付いていなかった事を理解したアデリーは『しまった』という顔をした後、何かを考えだし、そして薄く笑い始めた。


「ふ、っふふ。

 いいえ。イチの話なら、別に赤ちゃんじゃなくてもいいのよね。

 そうよ。大丈夫なのよ。ふふ。例えば……そう、マドカがこの世界からいなくなればいいのよ。」

「なにそれ怖いアデリーさん。」


 心からドン引きしますですよアデリーさん。


「ねぇイチ。わかるでしょう? 私の言わんとする事が、あなたなら。

 この世界……『ニアワールドにマドカがいなければいい』のよ。

 マドカは境界をいじる事が出来る。

 私みたいに半分人と半分蜘蛛という存在の境界、ムトゥみたいに経てきた時という肉体の境界、マドカみたいに男と女の境界、この世に『存在する境界』を操作する事が出来る。だとしたら……」


 アデリーの言わんとする事が理解できてきた。


「まさか……」


 可能性としてはあり得る。

 だが、その事による弊害を思い、俺は両手で頭を抱えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ