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パソコンが異世界と繋がったから両世界で商売してみる  作者: フェフオウフコポォ
命の価値 編

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139話 命の価値 エピローグ


「おはようございます。イチ様」

「あ……お…う、うん。おはよう。」


 私がイチ様の寝こみを襲った事がサリーさんとアデリーとかいう多眼女の尋問のせいで白日の下に晒されて以降、イチ様は私に対してどこか引っかかるような態度を取られるようになりました。


 あの時は、どうにも生存欲求といいますか人間の本能といいますか、誘拐、監禁、拷問と、通常では有りえない危険な目に合ったせいもあって、つい眠っているイチ様に手が出てしまったんですよね。


 ええ。異常事態だったから仕方ないのです。

 私はとても可哀想だったのです。肉体的にも身体的にも痛手を被っていたのですから『つい』程度は仕方ないのです。


 その辺りを泣き落としたら皆さん納得してましたし。

 ええ。

 ふふふ。


 それにしても気になるのはイチ様です……

 きっとこの私に対する態度は


 『不本意ながら一線超えてしまったんだし……もう手を出してもいいんじゃないだろうか?

 でも、ニオイでアデリーにバレるかもしれないよな?』


 と、お考えなのでしょう。


 ふふふ。

 いつ……私の宝物(イチ様コレクション)を処分した際に仰ってくれた『何でも言う事をきく』を引きあいに出してお願いをしましょうかしらね。

 出来るだけ効果的な、それでいてその後が決定的になるような時がいいですね。


 ふふふふ。

 うふふふふふふ。

  

 っと……いけませんね。

 これについては、多眼女のニオイ対策方法をサリーさんから掴んでから考えましょう。

 今は、お仕事。お仕事の情報収集に集中しましょう。


 ヘッドホンを通して聞こえてくる会議室の会話に真剣に耳を傾ける。


 この突然やってきた男『グレン・マイケル・コールマン』と、その補佐の『兵藤ひょうどう 悠二ゆうじ』は会議室に通しましたが、イチ様とサリーさんと『商談』をされているようですね。


 しかも、隠すことなく堂々と日本の同盟国の手の者である事やグレンが軍人である事を打ち明けていますし……長命のカードや回復の巻物についても情報を持っていることも話しています。


 一体どこから漏れたのでしょう?


 回復の巻物については信者の皆さんに事情聴取をすれば推測できるでしょうが、長命のカードは私かサリーさんくらい……もしくは宝生でしょうか?


 宝生……うふふ。


 イチ様が捕まえてくださったら色々聞かなければいけませんね。

 是非私に任せて頂きたいものです。


 うふふふふふ。


 ……っと。集中集中。


 あら……この兵藤とかいう男……やり手ですね。


 ゆるやかな会話ながらも背景がとても大きそうな事は伝わってきました。間接的で柔らかい言葉ですが脅しとも取れる言葉ですね。

 イチ様なら大丈夫でしょう……が、またしても私達が足を引っ張りかねないかもしれませんね……このあたりについては、まずはサリーさんに相談する事にしましょう。


 もうお帰りのようですね。

 今日のところは、まずは顔つなぎと頭出しみたいな物なのでしょうね。

 きっと意見を求められるでしょうから早速イチ様のところへ向かう事にしましょう。


 あああ。

 イチ様。今お傍に参ります。

 はやく触りたい嗅ぎたい舐めた――



--*--*--



 グレンと名乗る軍人と、その補佐の兵藤が帰った翌日、状況は変わっていた。

 変化を踏まえた上でサリーさんと結香子と改めて会議を開く。


 会議冒頭、昨日の俺とサリーさん、グレンと兵藤の四人の会話を結香子が盗聴録音していたので、まずはその録音を再生し確認する。


 彼らの言った事は単純。


 若返りを望む者はどの国にも多く、その価値は天井知らず。

 回復についても、その価値はとんでもない。


 だから『売って』ほしい。


 取引してくれるのなら『金』でも『物』でも、要望があればどちらでも対応するし『それ以外の要望』にも可能な限り応えよう。


 こんな内容だった。


「この人達……俺とサリーさんのやった事は確実に理解しているんだよね。」

「あぁそうだね。どうやってこの力を得たのか興味津々ではあるが、まだそれを交渉に出すには早い。 でも探るだけは探っとこう。

 そんな感じがしたよ。」


「問題としてはイチ様やサリーさんの行った事を把握しているにも関わらず、一切それを交渉のテーブルに乗せる気配がないという事……むしろ、それに触れて関係を悪くするくらいならば最初から話に出さない。と下手したてに出てきているところでしょうか。

 あと、どんな要望がきてもソレを実行できる力。度量の深さや組織力を考えると、とても強大な相手のように思えます。」


 結香子の言葉に、ため息をついて背もたれに寄り掛かり背筋を伸ばす。


「『それ以外の要望』って、あの世間話かと思ってたヤツだよね……」


「そうだね……アンタが兵藤さんの『宝生についてどう思う?』ってのに『二度と顔を見せて欲しくない』って答えたヤツ。アレが関係しているんだろうね。」


 結香子がタブレットを操作し、会議室のモニターにニュースサイトを映しだし内容を読み上げる。


「政治家、宝生富一、海外視察中の事故により死亡。」


 天を仰ぐ。

 何気ない世間話だと思っていた。

 会話の内容は当たり障りのない物でしかなかった。


『宝生は今海外に身を潜めているようです。』

『そうですか……俺としてはこのまま日本に帰ってこないと嬉しいですね。

 また手を出されると厄介ですし。』

『なにかと良い噂も聞かない人ですからね。海外と言えば事故も多いですから案外そうなるかもしれませんね。』

『そうなったら、悪いけど安心できますね。』


 こんな1分にも満たない会話。


 兵藤達が帰って、ニアワールドに行かず日本でサリーさんと夕飯を食べていた時に、ニュースで宝生富一が交通事故に巻き込まれ死んだ事が報道された。


 宝生は10年、20年の若返りを望み、長く生きたいと思って悪事に手を染めてまで足掻いていたのだろう。だが、ついでのような会話からの策略、見せしめであっさりと死んだ。


 俺や皆を苦しめたくせに、あっさりと。


「相手はでっかいよなぁ……」

「そうだね。多分だけれど……国家規模の組織を相手にするって事だろう。」


 重たくなる頭。

 流石に国家を相手に全員を守れる自信なんかはまったくない。


 ニアワールドにみんなを移動させることができるのであれば話は別だが……今のところ、ニアワールドへは、物や死体しか移動できないし……


 ……物?


 自分の中で何か閃くような感覚があった。

 もしかしたら仮死とかなら運べるのかな?


「イチ様なら何があっても大丈夫です! イチ様ですから!」


 結香子が大きな声を発したので閃きがどこかへと飛んで行く。

 どうやら渋い顔になっていたらしく元気づけようとしてくれたのだろう。


「ありがとう。」


 失笑しながらも礼を言うと幾分空気はやわらいでいた。

 柔らかくなった気分につられサリーさんが口を開く。


「まぁ相手が相手だけに考えようによっては楽なのかもしれないよ?

 宝生みたいな小物じゃなくウチの唯一無二の価値を理解しているからこそ丁寧な対応をしてきたって事かもしれない。

 ウチは利用できるだけ利用して、その間に対抗手段を考えたらいいんじゃないか?」


「まぁ……もう、そこしかないよね。

 ……うん。利用するだけ利用しよう。

 そしてできることから始めよう。」


 こうして俺たちはグレンや兵藤と取引する事、取引をしながら対抗手段を模索する事にした。


 取引について話をしたいと、こちらから連絡すると一時間もしない内にやってくる素早い対応で、具体的にコチラの提供できる物を、向こうが把握している長命と回復だけに絞って伝えると、兵藤は長命5年が2億5千万円、長命10年が5億円。

 回復の巻物は一律500万円。

 それを現金か価値相当の物で支払う事を提示してきた。


 俺は飛びついた。


 現実でもお金チートまっしぐらや~!

 うほほ~い!


 って、


 ……うん。


 もちろんサリーさんに任せる事にしたよ。

 俺ダメだわ。この系。

 お金に目が眩む。だめ。


 餅は餅屋。

 適材適所。


 人にはあった道がある。

 うんうん。


 ただ……


 金で動く命。

 命で動く金。

 そんなことに少しむなしくなりそうな気がしないでもない。


 だがソレを利用できる立ち位置にいるのだから存分に利用させてもらう。


 また向こうの提示した『金』以外の『物』についても折角なので、どんなものが手に入れられるのかを聞くと、兵藤は笑顔で『なんでも』と答えた。

 茶化すつもり『戦闘機でも?』と、聞くと『対価があれば』と笑顔が返ってくる始末。

 ただし物によっては俺が同盟国側を訪ね、そこで受け取って運搬をすることになる事だけは念を押された。


 この『物』の取引が俺、そしてニアワールドにとって大きな意味を持つのは明白。

 日本で買えないような銃火器であったりセキュリティシステムであったりを購入できるようになれば俺がニアワールドで一層安心して暮らせるようになる。


 もし安心して暮らせるようになれば……俺は向こうへの移住を決めると思う。


 だが、そうすると行き来が出来なくなる。


 そうして取引ができなくなった場合、グレン達は何をするのだろうか?

 だから……俺の移住までに知人みんなの移住方法を見つけるか、もしくは日本に残る人が安心して暮らせるようにする方法を探さなければならない。


 これは、俺が始めたことに対しての責任だ。

 目的も明確になり、画策を始める。


 まずは、念の為の知人と新世界の風本部の防御力向上。

 後、俺自身の生存能力の向上。


 知人の防御力向上については、スキルカードや巻物を使う以外には思いつかなかったので、サリーさんに任せる事にした。

 俺が考えるよりもずっといい方法を提案してくれるはずだ。


 ただ……サリーさんのように人を飛び越え過ぎた、人外パワーを身につけないことを願うのみだが……多分大丈夫だろう。


 サリーさんに丸投げする分、俺は新世界の風本部の改良に取り組む。


 まずはガーディアンの設置。


 ニアワールドでホールデンとドワーフ達の悪ノリ魔工房を尋ね開発中のクレイゴーレムの試作改良に全面協力した。

 しばらくの後『夢と欲望の園』と『新世界の風』には、人間サイズの人形が至るところに設置されるようになった。


 どちらも一定の区画以降は、ホールデン特製アクセサリーを身に付けないと人間サイズのクレイゴーレムが動きだし排除される仕掛け。かつ緊急時アラームボタンを押して特別迎撃態勢に移行すると、両肩に設置された魔法銃が容赦なく火を吹く凶悪仕様だ。


 さらにクレイゴーレムは、アデリーの糸で防御力を強化してあり、ニアワールドに持ち込んだハンドガンで撃っても弾丸程度は弾くのを確認済み。


 日本で簡易な武装の人間であれば、このクレイゴーレムを排除するのは中々に難しいだろう。


 というか、ぶっちゃけ俺の力でも排除は無理。

 俺、このクレイゴーレムに勝てる自信ない。


 尚、サリーさんは大丈夫。

 本当この人ヤバイ。

 現状サリーさんは地球上で最強の生物になってしまっていると思うけれど……まぁそれはご愛嬌。


 俺自身の生存能力の向上については、アデリーのサリーさんへの問答無用のスキルカード渡しを中断させ、俺にもある程度まわってくるように説得した。


「だってぼくちんこのままだと危ない目にあうかもしれないのぉぉ」で、アデリー一発だった。ちょろい。


 それと同時に、ムトゥにあるスキルカードがどうしても欲しい事を告げ、機会があれば率先して手に入れるように依頼した。



 その他の取り組みとして、グレン達は俺やサリーさんの能力も知っているから、それも利用させてもらった。


 サリーさんは少しスキルを取得しすぎた事を後悔していたみたいだけれど、新しい世界が広がった感もあるらしく、得た能力を活かしてグレンの軍事訓練に協力し、サリーさんなりに伝手を作り情報を得ようとしている。


 ……なんとなく思いきり破壊してストレス発散しているように見えない事もないが……まぁ、それもご愛嬌。うん。


 尚、ヤクザについては若頭を物凄く聞き分けが良い人に仕上がっていたけど、それ以上に強力に動く存在が出来たので即時解散させる事にした。


 結香子が解散させたフリをして再結成させて、こっそり何かしているような気がしないでもないけど、それはもう俺は関わらないと決めている。

 ……だって、結香子怖い。


 兵藤やグレンは友好関係を築こうと尽力しているようにも見え、長命のカードをめぐる日本での出来事は安定し、ある程度の決着がついたと判断しても良いと思えるようになった。


 辛い出来事も多かったが結果として考えると上々であると言ってもいい。


 なぜなら、ニアワールドにこれまで以上に資金をかける事が可能になり、さらに一般流通品以外の品物も持ちこめるようになったのだから。


 ニアワールドに足を踏み入れ、外を眺め、大きく伸びをして


『さぁて、どう楽しんでやろうか』


 そう思った時、上空を大きな竜が通り過ぎていった。



 ギャビィに昔聞いた事が頭を過る。



 勇者は竜に乗っている――




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