138話 収束
本日2話目
怯えながらとりあえず新世界の風本部にあるとマズイような物……例えば大量の銃なんかを全部ニアワールドに移す。
襲撃者達が乗ってきた車なんかも全て移動させる。
尚、アデリー顔合わせる度に微妙にイライラ。
俺ビクビク。
溜まるストレス。
結果、宝生に対して沸く怒り。
『全部宝生のせいじゃんっ!』
である。
正しくは、うかつに長命を持込み使用させた自分のせいである事は分かっている。
だが、そんな事は知ったこっちゃない。
ぜーんぶ宝生のせいだ。あいつが悪い。
アデリーが怒ってるのも、なにもかもぜーんぶアイツのせいだ。
とりあえずのアデリーが怒ってはいるけれど、俺の安全がかろうじて確保できている事から、所要を手早く済ませてすぐにニアワールドから日本に逃げる。
そしてなによりアデリーの要望を伝える為に……そして自分の怒りをぶつけられる相手がどこにいるか情報を持っているかもしれないサリーさんに電話をかける……が、出ない。
っんもう!
一人プンスコしていると結香子がお茶を持ってきてくれたので少し落ち着き、結香子も結香子で情報を集めているらしく情報を擦り合わせて状況整理をする事にした。
まず今回の事件は政治家『宝生富一』が長命のカードでさらに若返る事を欲して起こされた。
事態の始まりは、結香子の誘拐。
これは中村君に車で送ってもらい俺が救出する形で解決した。
そして、今、中村君のことを思いだし『本部に戻ってきていいよ』と今更の連絡を入れる。
ゴメン中村君。すっかり忘れてた。
警察とかが動き出して、見つからないように避難しつつ待機してくれていたらしい。
本当にいい子。ボーナスかなんか上げた方がいいよね。うん。そしたらきっと誤魔化されてくれるよね。忘れてた事。
さて、続き。
結香子救出の際、支部に火事を起こし若頭を誘拐して結香子に調教をさせている。
……若頭の存在も今ようやく思い出した。
結香子がとてもとても良い笑顔をしている……ので、深く聞かない事にして、再度忘れてみる。
――若頭からの情報で、先手を打とうと組をほぼ壊滅に追いやった。
だが、それは結局宝生の手の平の上でしかなく、逆に新世界の風本部が襲撃を受けるような形になった。が、しかしこれはサリーさんによって阻止され、結香子曰く超スキルカードハイになっているサリーさんは、さらに襲撃組織の壊滅に向けて単独で攻勢に出ているらしい。
結香子の持ってきた情報では、宝生は特定の国に対して便宜を図る様な政策を取る事が多く、特定の国に特別肩入れしており、国益よりも『他国』と『金』を優先していると噂されている人物であり、襲撃者は宝生の肩入れする国、海外の身内の手の者だろうと。
サリーさんはそれを壊滅しようと行動していて、俺は本部で後始末をしつつ傍観……
しまらんな……
圧倒的にサリーさんの方がかっこいい気がする。
ここは俺も積極的に動いた方がいいんだろうか?
そう思っていると携帯が鳴った。
サリーさんだ。
「もしもし! サリーさん! 今どこっ!?」
「さぁて…どこだろうね?
ヤツラにとってここは地獄だろうけどね。フッ」
なんだこれ……微妙にうぜぇ。
「えっと、サリーさん……もしかしなくても、超ハイになってるよね?」
「超ハイ? ハハッ。アタシはいつだって冷静さ。
今だって自分を狙っているヤツがどこにいるか分かるくらい…………ねっ!」
『ねっ!』の言葉に合わせて何かを投げたような音が聞こえた。
よし。なんか今現在もサリーさんが危ない事をしているのは間違いない。
「え~っと。サリーさん。
そっちのケリは付いた感じ?」
「あぁ、今ついたね。」
「よしっ。 じゃあ、とりあえず戻ってきてっ!
戻ってきてアデリーの誤解を解いてっ! お願いしますっ! 助けて!」
「ふむ? ……まぁ、いいか。
こっちももう片付ける物は残ってなさそうだし。フフっ。すぐに戻るよ……最後に綺麗にしておこうかね。 王雷竜撃s――」
サリーさんが中二病全開の技名らしきものを呟いてるのを最後にノイズが走り、電話が切れた。
なんだろう……
どっと疲れた。
目を閉じ目元を押さえ、一つ深く息をつき状況整理を続ける。
サリーさんの電話から、海外マフィアと思わしき組織の日本の拠点はおおよそ壊滅したんじゃないかと思える。
宝生の子飼いのヤクザと海外マフィアの脅威を排除できたとした場合、どうやって本丸の宝生に辿り着けばいいのだろうか?
もし宝生がこの事態に身の危険を覚えたとしたら、政治を放り出して繋がりのある海外に逃げていきそうにも思う。ただでさえ手を出しにくいのに、さらに手を出しにくくなる可能性もある。
それでも、この鬱憤晴らさでおくべきか。
なんせ全部アイツのせいだ。
そんなことを考え結香子と擦り合わせをしていると、あっという間にサリーさんが帰ってきた。
サリーさんの姿に怪我などは一切見当たらず、洋服だけが少しホコリが付いて汚れているような状態。
サリーさんは帰ってくるなり俺を抱きしめた。
柔らかい所は柔らかいのに『鋼鉄に抱きしめられたのか?』というくらいに動けない。
「ちょっ! サリーさ――」
「アンタは頑張ったよ……よくやった。」
そう言い。
俺の頭を静かに2度撫でた。
なぜか何も言えなくなり、力が抜ける。
ふと、サリーさんがなぜこんな無茶をしているのかを考える。
きっと俺が出て行った時に『俺が人を殺す』と思ったんだろう。
そして、俺だけに『人殺し』の業を背負わせるのを良しとしなかった。
サリーさんはそういう人だ……
気が付くとサリーさんを抱きしめ返していた。
「……よしよし。」
と、もう一度だけ頭を撫で。
「で、アデリーがなんだって?」
と、微笑みながら俺を突き放すサリーさん。
俺も笑いながら、アデリーの事を話し面談をしてもらうのだった。
その後アデリーがサリーさんと面談し、サリーさんは何か思い当たる事があったのか一拍考えてから結香子を呼ぶ。
結香子。
アデリーと初のご対面。
俺ただの通信機。
アデリー片眉ピクンで
「その子のニオイよ。」
と、一喝。
アデリーイライラ。
結香子すっとぼけ。
サリーさんニヤニヤ。
俺通信機。
その後サリーさんが結香子を問い詰めて分かったことは、俺、どうやら寝てる間に結香子に悪戯されたらしい。
アデリープンプン。
でも懸念が晴れてスッキリした感じ。
俺通信機。
……だけど、正直、悪戯を覚えてなくて悔しかったです。
その直後……アデリーにニアワールドに引きずりこまれて通信機終了。
悪戯の上書きがされました。
ひゃああああんで高まっていた血気も治まるってもんです。はい。
その後、宝生に関しては人探しの魔道具を使おうにも宝生の持ち物はないし、こっちが把握できる住所はもぬけの殻だし、探し当てる術がなく手詰まりとなった。
このまま放置するにも不安が残る為、どうした物かを悩み通常の活動に戻る事が踏み切れないでいると、筋骨隆々な外国人と兵藤と名乗る日本人の2人組が新世界の風本部にやってきた。
そして開口一番。
「宝生富一をお探しでしたら、ご協力しますよ。」
と、笑顔で告げた。




