112話 砦跡到着
本日3話目
「昨晩は随分とお楽しみでしたね。」
朝を迎え、まだ早い時間だったので様子を見に外に出ると声をかけられた
一見その表情はにこやかに見えるが敵意が見え隠れ……いや、この人全然隠れていないよっ!?
そう。
人外スキーの特殊性癖魔法使いことジャコである。
「うん! 楽しかったし、すんごく気持ちよかったよー。」
そしていつの間についてきていたのか無邪気に火に油を注ぐ下着姿のアリア。
メラっとジャコの敵意がさらに燃えあがる。
あぁ、そっか。この犬っ娘。アホなんだった。
顔を手で覆いたくなる気分をぐっとこらえ「お騒がせしてしまってすみません」と謝罪の言葉を並べジャコの怒りを沈下させようとしたが、謝っても逆に沈下が難しくなるような様子だったので急いでテントへとアリアを抱えて戻る。
「きゃ~ん。なになに? またするの? 朝なのに? 仕方ないな~。相手してあげちゃうぞ~。」
「だまらっしゃい! しません!」
俺に抱えられながら微妙に頬を手で押さえながら、くねくね器用に動くアリア。
いや、そりゃまぁ、うん。
でも昨日はどちらかと言うと俺はアデリーのご相伴に預かったような感じだし……まぁ……しっかりワンワンをワンワンさせて頂いたのですけれども。はい。
おかげで昨日よりアリアの事が可愛いく見えてしまうのは、もう仕方がないことだと思うんだ。
「そっか~、しないのか~。」
しっぽがへにゃんと下がるアリア。
「えっと……なんだ……アリアはこういう関係になって後悔とかしてない?
なんか成り行きでこうなっちゃったような感じも否めないんだけど。」
「へ? アデリーもイチも私が好きなんだし、私も二人とも好きだし全然いいよ? もちろんエイミーとの付き合いも長かったし好きだし!」
ニッコリと微笑むアリア。
急に渋い顔を作り顎に手を当て言葉を続ける。
「ま~……でも流石のアリアちゃんもアラクネと……しかも女同士なんて初めてだったし、びっくりしたけどもね。でも好き同士なら仕方ないんだよー。」
最後にはまたニッコリ微笑み、しっぽがふるんふるんと動いている。
アリアの考え方は刹那的とも思ったが、今回の旅では活躍していないがアリアはそもそも『戦闘職』。戦闘を生業とする生き方をしてきているはずだ。
命の危険が付き纏う事が多いし、楽しめる時にはしっかり楽しもうと、その時を大事にして生きているんだろう。
生き様として考えるとアリアにも見習うべき点が多いと感じる。
……やはり一度関係を持つと、どうしても相手の事を好意的に解釈したくなるらしい。
尚、アンジェナはまだ馬車でぐっすり眠っているようで顔は見えなかった。
美人の秘訣はちゃんとした睡眠なんだろうか? ちょっとホっとしている。
テントに戻りアデリーにジャコにバレバレだったことを報告すると既に知っていた。
何やらエイミーやアリアの嬌声が響くと、見張りの番をしていたジャコの舌打ちする気配を時々感じていたらしい。
俺は夢中になってたのに最中であっても平然と周りに気を配っていたアデリーに感心する。
流石っ! 頼りになるアデリー先生。
そしてなんとなく『リア充でゴメン』と、ジャコに対して申し訳なさと共に大きな優越感を感じつつニヤニヤしながら彼女達を見る。
うふふふ。
美人ばっかりのハーレムでごめんなー。
うふふふふ。
リア充でごめんなー。くふふふ。
……ん?
蜘蛛……馬……
犬……?
あれ?
むしろリア獣?
いや、むしろ蜘蛛は獣に該当しないよ? オカシイな?
…………
でも、みんな可愛いから問題ないっ! 可愛いは正義っ!
こうしてアデリーのハーレムメンバーに、俺、エイミー、アイーシャに次いで、アリアも名前を連ねるようになった。
アンジェナが起きたのか朝食が配られたのでソレを頂き、そしてとうとう砦跡へと向かい始める。
追放者……一体どんな人間なのだろうか。
--*--*--
『岩壁をくりぬいて作った砦跡』と聞いていたが、実際には地球の世界遺産『隊商都市ぺトラ』を少し劣化させたような外観。
立派さと浪漫の溢れる作りに思わず感嘆の声を漏らすほどだった。
が、感嘆の声を漏らしたのは俺だけだったので少し恥ずかしくなりアデリーに「すごくない? これすごくない?」と聞いてみると、ニアワールドの世界各地には結構点在していて、さほど珍しい物でもないらしい。
入口は狭く、モンスター対策が想定された作りになっている事がなんとく分かる。
到着と同時にゴルが慣れた様子で中に入って行きアンジェナはソレを見ているだけなので、きっとギルドからは先住民に渡りをつけるまで冒険者達に依頼してあるのだろう。
しばらく待つと、砦跡の中から明確な敵意が溢れたのを感じ『何を話しているんだ!?』と不安に襲われ、アンジェナに何を話しているのかを確認しようとしたところで、ゴルと一緒に一人の20代になったばかりだろう青年が外に出てきた。
俺の顔を見るや否や、明確な敵意を向ける共に舌打ちをかましてくれたので俺は内心オロオロするばかり。明確な敵意を持った若い男とか超怖いんですけど。
「やー、キミ名前は? 強そうだね~? 獲物は私と同じ短剣かな?」
能天気にアリアが男に話しかけるのを止めようかどうかハラハラしながら、ただアタフタする。
「……アトだ。」
チラッとアリアを確認した後すぐに俺に目線を戻すアト。
アリアは陽気な雰囲気のまま話し続ける。
「そっかーよろしくねアト♪
一つだけ大事な事を先に言っておくね。
私の仕事は、この黒色の髪の人を守る事だから少しでも怪しい動きをしたら攻撃するからね。
入り口にいる魔法使いっぽい女の子にも伝えてね。どんな攻撃でも敵対とみなして全員殺すから。
ちゃんと伝えたから覚えておいてね♪」
ニコニコしながら目だけ笑ってないアリア。
初めて見るアリアの表情に、背筋がうすら寒くなる。 笑顔のハズなのに恐怖だけしか刺激してこない。てゆーか、アリア、今『殺す』って言った。
……なにこれ怖い! 俺こんな娘にジャーキーだぞー。ほれほれーってしてたの!?
あああぁもう! 敵意もいっぱい感じるし、何っ!? この殺伐とした雰囲気!
「わかった?」
ニコニコしながら続けるアリア。
アトはといえば無言でアリアを見ている。
「あれ? お返事は?」
「……」
「ん~? ……もしかしてだけど二人とも死にたがりなのかな?
それとも腕に自信でもあるのかな? なんなら私と試してみる?」
「アト……下がりなさい。」
入口の方から白髪のオールバックの痩せたオッサンが出てきた。
アトと呼ばれた青年はアリアから俺に目を移し、俺を見たままオッサンの後ろへと下がっていく。
俺は怖くてアトの目を見れない。
きっと今の俺は傍から見て、青い顔で口角だけぎこちなく上げているような状態だろうな。
「若い者は血の気が多くてな……すみません。」
「あ、いえ。」
柔和な声をかけてくれた白髪オールバックのオッサンに顔向ける。
小汚い。
第一印象はそれだった。
白髪オールバックのオッサンの右後ろにアト、左後ろにアトと同年代の20代になったばかりだろう女の子が目に入る。
もしかするとさっきアリアが言っていた魔法使いはこの子だろうか?
「我らに敵対の意図はございませんよ。
なにせ我らの生殺与奪はそちらが握っておられるようですしな。」
その言葉に対して『よくわかってますね』と言わんばかりにニッコニコのアリアと不敵な笑みのアデリー。いつも通りのエイミー。ウチの子たち。なんだか怖いです。
……そして柔和な表情のくせに、アト以上の敵意を向けてくるオッサンも怖いですっ!




